[記者発表][平成10年度1月]−[21日13時30分記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所1号機の第18回定期検査開始について(10−81)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。


 高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、第18回定期検査を、平成11年1月22日から約3ヶ月の予定で開始することとした。
 なお同機では、1月7日に1次冷却材ポンプの第3軸封部(シール部)の機能がわずかに低下する事象が発生し、その状況が継続していることから、今回の定期検査で当該軸封部の点検等を行うこととした。
 定期検査を実施する主な設備は次のとおりである。

(1) 原子炉本体
(2) 原子炉冷却系統設備
(3) 計測制御系統設備
(4) 燃料設備
(5) 放射線管理設備
(6) 廃棄設備
(7) 原子炉格納施設
(8) 非常用予備発電装置
(9) 蒸気タービンおよび蒸気タービン付属設備

1. 主要工事等
(1) 1次冷却材ポンプ(RCP)供用期間中検査(図−1参照)
 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、3台あるポンプのうち、Cポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検する。
(2) 1次冷却材ポンプ軸シール点検(添付1参照)
 BおよびCの1次冷却材ポンプ第3軸シールに機能低下がみられることから、当該部を含め、1次冷却材ポンプ全台(3台)の軸封部を分解・点検する。
(3) 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事(図−2参照)
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため、工学的安全注入系の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能なように、余熱除去系と格納容器スプレイ系を接続する配管を設置する。
*1; アクシデントマネジメント対策
 設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。
*2; 工学的安全注入系の再循環注入モード
 1次冷却材喪失事故時、工学的安全注入系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水ピット水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。

2.

燃料取替計画
 燃料集合体全数157体のうち56体を取り替える予定である。
 新たに装荷する燃料集合体56体は、全て新燃料集合体(高燃焼度燃料集合体)である。

3.

運転再開予定
原子炉起動・臨界  平成11年3月中旬
発電再開(調整運転開始) 平成11年3月中旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成11年4月中旬

 

(添付1)

平成10年度安全協定に基づく軽微な異常事象報告(平成11年1月)


 高浜1号機の1次冷却材ポンプ(RCP)第3軸シール部の機能低下について
発生日時 平成 11年 1月 7日 11時 24分
(RCPスタンドパイプ水位低警報発信)
故障箇所 1次冷却材系統
放射能による周辺環境への影響: なし
国の取扱い 法律・通達に基づく報告対象外
事象概要
 高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、定格出力運転中のところ、平成11年1月7日11時22分に「冷却材ドレンタンク圧力高」の警報が、また11時24分に「B-RCPスタンドパイプ水位低」の警報が発信した。

 直ちに原因を調査した結果、気体廃棄物処理系統にあるA-ガス圧縮機(取替工事中)の気水分離器に設置されている水位計測器が故障し、「水位低」の誤信号を発信したため、自動的に水補給用弁が開となり当該気水分離器に水(純水)の補給が行なわれた。この補給された水は、気水分離器につながっている冷却材ドレンタンクに流れ込んだため、同タンク内の圧力が上昇し、警報が発信したものと判明した。 
 また、「RCPスタンドパイプ水位低」の警報が発信した原因は、冷却材ドレンタンクの圧力上昇に伴ない、同タンクとつながっているスタンドパイプ内の圧力も上昇したことから、スタンドパイプ内の水が、RCP第3軸シール部を通って、同タンクに流れ込んだためと判明した。
 対策として、7日13時17分に補給弁を閉止し冷却材ドレンタンクの圧力を正常に復旧させるとともに、当該水位計測器の取り替えを行ない、1月8日夕刻には気体廃棄物処理系統も正常に復旧した。

 B-RCPの「スタンドパイプ水位低」警報については、手順に従い手動にてスタンドパイプに水を補給し、警報は解除されたが、冷却材ドレンタンクの圧力が正常に復旧した以降も同警報が発信し、また、C-RCPでも同様の警報が発信した。このため同タンクの圧力を調整する操作等を行ったが、その後も断続的に発信していることから、第3軸シール部のシール面にわずかに機能低下が生じているものと推定された。
 同警報は第3軸シール部の機能低下を示すものであるが、1次冷却材ポンプ軸封の主機能である第1、第2軸シール部に異常はないことから、ポンプの健全性に影響を与えるものではない。
 本事象による環境への影響はない。


<参考>

冷却材ドレンタンク 運転中は1次冷却材ポンプ軸シール水の一部等が回収されるタンク。
ガス圧縮機 管理区域内の各機器(冷却材ドレンタンク等)から発生する放射性ガスを液体廃棄物処理系のガス減衰タンクへ送りこむ装置。
気水分離器  ガス圧縮機から送りこまれるガスの水分を分離するための装置。
気体はガス減衰タンクへ、液体は液体廃棄物処理系へ送りこまれる。
RCPスタンドパイプ 1次冷却材ポンプ第3軸封部にかかる圧力を一定にするために設置されている小口径の縦型配管。通常時は第3軸シール部の水は殆ど動かないため、スタンドパイプの水位は一定に保たれている。
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1次冷却材ポンプ「スタンドパイプ水位低」警報発信概要図