[記者発表][平成10年度3月]−[15日11時記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所1号機の原子炉起動と調整運転開始について(第18回定期検査)(10−95)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、平成11年1月22日から、第18回定期検査を実施していたが、3月16日に原子炉を起動し、翌17日に臨界となる予定である。
 今後は諸試験を実施し、3月中旬(3月18日頃)に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、4月中旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。

1. 主要工事等
(1) 1次冷却材ポンプ(RCP)供用期間中検査(図−1参照) 
 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、3台あるポンプのうち、Cポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検した。
(2) 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事(図−2参照)
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため工学的安全注入系の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能なように、余熱除去系と格納容器スプレイ系を接続する配管を設置した。
*1; アクシデントマネジメント対策
 設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。
*2; 工学的安全注入系の再循環注入モード
 1次冷却材喪失事故時、工学的安全注入系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水ピット水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。

2.

蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査結果
 蒸気発生器伝熱管全数(10,146本)について、渦電流探傷検査を実施した結果、異常は認められなかった。

3.

燃料集合体の検査結果
 燃料集合体の外観検査を実施した結果、異常は認められなかった。
 燃料集合体全数157体のうち、53体(うち52体が新燃料集合体で、新燃料は全て高燃焼度燃料集合体)を取り替えた。

4.

1次冷却材ポンプ第3軸シール部の機能低下に伴う点検調査(図−3図−4参照)
 本年1月7日より、BおよびCの1次冷却材ポンプ第3軸シールに僅かに機能低下がみられたことから、当該部を含め1次冷却材ポンプ全台(3台)の軸封部を定期検査時に分解・点検することとした。[1月21日発表済み]
 分解点検した結果、BおよびCの第3軸シールのシールリング上部にあるシール材の摺動部で、鉄錆等の付着物が認められた。
 原因は、気体廃棄物処理系統にあるA−ガス圧縮機気水分離器の水位計測器が故障したことにより、気水分離器に水が補給され、その水が冷却材ドレンタンクに流れ込んだ。これにより、同タンク内の圧力および同タンクにつながる1次冷却材ポンプのスタンドパイプ内の圧力も上昇したため、第3軸シールのシール面にわずかな隙間が生じ、スタンドパイプ内の水が第3軸シールに流れ込みリーク量が増加した。
 この時、スタンドパイプ内にある鉄錆等の不純物が、第3軸シール上部にあるシール材とシールリングとの摺動部に付着したため、シールリングの上下方向の追従動作が不良となり、第3軸シールの機能低下に至ったものと推定された。
 対策として、1次冷却材ポンプ全台について、スタンドパイプ内面の清掃を行うとともに、第3軸シールを取り替えを実施した。

5.

次回定期検査の予定
 平成12年 春頃