[記者発表][平成10年度7月]−[2日15時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の原子炉自動停止の原因と対策について(10−33)

 このことについて、動力炉・核燃料開発事業団から下記のとおり連絡を受けた。
 なお、県としては、今回の原子炉自動停止の原因が、弁操作スイッチの保守管理が不十分であったことに加え、その対応措置として実施した操作において基本的な確認行為が不十分であったためと判明したことから、本日、新型転換炉ふげん発電所長に対し、ヒューマンエラーの再発防止と機器類の適切な保守管理や予防保全の徹底、事故時対応の改善等について、申し入れを行った。(別紙参照)

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉原型炉;定格出力16.5万kW)は、計画停止のため6月5日11時43分に発電を停止した後、原子炉停止操作中(原子炉出力約0%)の同日13時47分「ダンプタンク水位低低」の信号により、重水の「スローダンプ」信号が発信し、原子炉(カランドリアタンク)の重水が重水ダンプタンクに排水され、13時48分「重水水位低低」の信号により原子炉が自動停止した。なお、今回の停止による周辺環境への放射能の影響はない。
 当時の運転対応操作等を調査した結果、以下の状況が判明した。

(1) 原子炉停止操作として、原子炉の重水水位を調整しているヘリウムガスの圧力低下を補うため、ヘリウム補給弁の手動開閉操作を行っていたところ、弁操作スイッチの動きが固くなる事象が発生した。
(2) このため、当該弁の閉動作を確保するため、当該弁制御回路の電源ヒューズ(重水系計装盤内)を取り外すことで対応することとした。
(3) 13時47分頃、弁操作スイッチが不調となり、閉動作できなかったことから、制御用回路の電源ヒューズ取り外しを行うこととしたが、その際、誤ってダンプ時循環弁の電源ヒューズを取り外したため、この弁が開動作し、原子炉の重水水位の調整ができなくなり、ダンプタンクへの重水の戻り量が低下し始めた。
(4) これにより、「ダンプタンク水位低低」の信号が発信し、重水の「スローダンプ」信号が動作したため、カランドリアタンクの「重水水位低低」信号により原子炉が自動停止したものと推定された。[平成10年6月5日、8日一部記者発表済]


[推定原因]
(1) 原子炉停止操作時に行うヘリウム補給弁の開閉操作において、当該弁操作スイッチの不調が発生した。
(2) 操作スイッチの動作不良の原因は、工場調査の結果、スイッチの開閉位置を定める歯車(スターホイール)の歯面に運転初期からの経年使用に伴う摩耗が発生し、閉側への回転を阻害していたためと判明した。
(3) ヘリウム補給弁の制御回路電源ヒューズを取り外す際、別の弁の電源ヒューズを引き抜いた原因は、運転員は引き抜くべき電源ヒューズの個別番号を記載したメモを持参し計装盤に向かったが、計装盤内で当該弁の弁番号が記載された銘板(当該弁制御回路の電源スイッチを示す銘板)があったことから、その下のヒューズを目的のヒューズと誤認したためと推定された。

[対策]
(1) 当該ヘリウム補給弁操作スイッチについては、新型品と取り替えるとともに、同一仕様の操作スイッチ25個についても、念のため全て取り替えた。
(2) 計装盤を含め、運転上重要な制御盤について、盤内の銘板と個別機器類との識別を明確にするため、カラーテープでの枠取り(グループ化)や銘板の張り替え等を実施した。
また、制御盤に指差呼称等の基本動作の励行を促す注意札を掲示した。
(3) 運転員の基本動作を徹底するため、「基本管理マニュアル」を制定し、周知徹底を図るとともに、今後、これを活用した教育を定期的に実施することとした。
なお、この基本管理マニュアルには、応急対応操作時においても、操作内容を明記した指示書を発行することなどを規定した。
(4) なお、事故時の情報収集・伝達について、迅速かつ確実に機能するよう今後とも改善に努めることとした。


科学技術庁による
国際原子力事象評価尺度(INES)の評価
0(暫定評価)


重水・ヘリウム系概要図(通常運転時)
中央盤関係配置図
重水系計装盤()内詳細図


(別紙)

原第275号
平成10年7月2日
動力炉・核燃料開発事業団
新型転換炉ふげん発電所
所長 速水 義孝 殿
福井県県民生活部長
牧野 百男

新型転換炉ふげん発電所の信頼性確保について

 新型転換炉ふげん発電所において、去る6月5日に発生した原子炉自動停止は、起動停止時に操作する弁スイッチの動作不良を起因とし、その対応措置として実施した弁制御回路電源ヒューズ引き抜きによる隔離操作時の確認行為が不十分であったことが原因として判明した。
 「ふげん」に対しては、平成2年10月、雑用空気設備点検作業時に発生した作業ミスに鑑み、ヒューマンエラー発生防止対策の確立について、県として強く申し入れており、さらに平成8年3月、県内での同様な事象の再発を踏まえ、原子力施設設置者相互によるトラブル再発防止のための水平展開やヒューマンエラー防止対策について活動の強化に努めるよう要請してきたにもかかわらず、今回のようなトラブルが発生したことは誠に遺憾である。
 原子力発電所に対する県民の信頼を得るためには、まず安全で安定な運転実績を積み重ねていくことが重要であると考えている。
 特に、「ふげん」においては、今後の運転期間が定められてはいるが、その期間にあっても事故の再発防止に万全を期すため、機器の予防保全に積極的に取り組むとともに、職員の意識や基本動作の徹底によるヒューマンエラー発生防止に継続的に取り組むことを第一として、下記の事項について、今後必要な対策を講じるよう強く要請する。


1. 平常時はもとより、応急対応時の作業等においても、作業指示書の活用や指差呼称の徹底など、職員の基本動作の徹底を図るよう教育訓練の充実・強化に努めること。

2.

起動停止操作時に使用する機器類等を含め、機器の重要度や使用頻度等を踏まえた適切な保守管理や予防保全に努めること。

3.

事故時の対応として、所内での情報収集の徹底や共有化、さらには対外機関等への伝達体制について、これまでの事故経験での反省等を十分踏まえ、迅速かつ確実に機能するよう今後も改善に努めること。
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