[記者発表][平成10年度8月]−[27日11時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の第14回定期検査の開始について(10−44)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成10年8月29日から約5ヶ月の予定で第14回定期検査を実施する。
 定期検査を実施する主な設備は次のとおりである。

(1) 原子炉本体
(2) 原子炉冷却系統設備
(3) 計測制御系統設備
(4) 燃料設備
(5) 放射線管理設備
(6) 廃棄設備
(7) 原子炉格納施設
(8) 非常用予備発電装置
(9) 蒸気タービンおよび蒸気タービン付属設備


1. 主要工事等
(1) 原子炉容器上部ふた取替工事(添付1参照) 
 海外における上部ふた管台部での損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、既設の原子炉容器上部ふたを、管台部の材質等を変更した新しい原子炉容器上部ふたに取り替える。
(2) 1次冷却材ポンプ供用期間中検査(図−3参照)
 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、4台あるポンプのうち、Dポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検する。
(3) 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事(図−4参照)
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため工学的安全注入系の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能なように、余熱除去系と格納容器スプレイ系を接続する配管を設置する。
*1; アクシデントマネジメント対策
 設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。
*2; 工学的安全注入系の再循環注入モード
 1次冷却材喪失事故時、工学的安全注入系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水ピット水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。
(4) 発電機負荷開閉装置設置工事 (図−5参照)
 所内電源の信頼性向上対策として、発電機と主変圧器の間に、発電機負荷開閉装置を設置する。
(5) 充てん/高圧注入ポンプおよび充てんポンプ取替工事(図−6参照)
 充てん/高圧注入ポンプ(2台)および充てんポンプ(1台)の全3台を保守性に優れたポンプに取り替え、充てん/高圧注入ポンプについては、主軸の剛性を高めたものとする。なお、ポンプを搬出・搬入するために、ポンプ室生体遮へい壁に仮開口部を設置し、作業後復旧する。
(6) アイスコンデンサ氷取替工事 (図−7−1図−7−2参照)
 アイスコンデンサ(*3)内の氷の補充作業の効率化および昇華抑制を図るため、氷をフレーク状からアイスブロック化し昇華抑制のフィルムを装着する。
*3; アイスコンデンサ
 1次冷却材喪失事故時に格納容器内に放出される蒸気をアイスコンデンサ内に保有している氷により凝縮し、格納容器内圧上昇を抑制する機能を有する設備。(国内では大飯発電所1、2号機でのみ採用)

2.

燃料取替計画
 燃料集合体全数193体のうち、81体を取り替える予定である。
 新たに装荷する燃料集合体81体のうち、80体は新燃料集合体(全て高燃焼度燃料集合体)である。

3.

運転再開予定
原子炉起動・臨界  平成10年12月下旬
発電再開(調整運転開始) 平成10年12月下旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成11年1月下旬



(添付1)

大飯発電所2号機原子炉容器上部ふた取替工事の概要

1. 概要
 大飯発電所2号機は、平成10年8月29日から開始する第14回定期検査において、原子炉容器上部ふた取替工事を実施する。
 平成10年10月中旬に旧上部ふたの搬出、10月下旬に新上部ふたの原子炉格納容器内への搬入を行い、11月下旬に原子炉容器への据付けを行う予定である。

2.

原子炉容器上部ふた取替工事の工程(図−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成10年8月29日
取替工事の終了(原子炉容器組立完了) 平成10年12月上旬予定
 今回の取替工事では、原子炉容器から取り外した原子炉容器上部ふたは、鋼板製の専用保管容器に収納した後、機器搬入口を通して屋外へ搬出、B−蒸気発生器保管庫(旧2号機用)まで運搬し保管する。
 新原子炉容器上部ふたは、機器搬入口を利用して、原子炉格納容器内へ搬入し、原子炉に燃料が装荷された後、原子炉容器に据え付ける。

3.

原子炉容器上部ふたの技術的改善点(図−2参照)
 取替用上部ふたは主要寸法等、基本的に同一仕様であるが、現在使用していない出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置は設けず、また管台の材料を改良品にしたものとする。
 主な改善点は以下のとおりである。
項目 改善点 理由
管台の材料 インコネル600からインコネル690に変更 耐腐食性向上
キャノピーシール 廃止 信頼性向上
予備管台 形状変更、一部撤去 信頼性向上
管台溶接部 溶接開先形状変更 溶接残留応力低減

4.

旧原子炉上部ふたの保管
 旧原子炉容器上部ふたは、保管容器内に収納した状態で、B−蒸気発生器保管庫(旧2号機用)に保管する。

5.

廃棄物の発生量
 原子炉容器上部ふたの取替工事に伴い発生する放射性廃棄物の量は、旧原子炉容器上部ふたおよび制御棒駆動軸等、ドラム缶に換算して約750本と推定される。
 これらの廃棄物は、減容に努め、既設の廃棄物保管庫およびA、B−蒸気発生器保管庫内に保管する。



(参考)

原子炉容器上部ふた取替工事計画経緯
関西電力(株)は、県および大飯町に原子炉容器上部ふた取替計画を申し入れ(事前了解願い) H8.5.27
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H8.7.29
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H8.7.29
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H9.3.18
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画について、安全協定に基づく事前了解 H9.4.11
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