[記者発表][平成10年度11月]−[16日16時資料配付] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の定期検査状況について(キャノピーシール部からの漏えいの原因調査結果)(10−65)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成10年8月29日から第14回定期検査を実施しているが、定期検査開始後、原子炉格納容器内の現場点検を実施したところ、原子炉容器上部ふたに取り付けられている炉内温度計装用管台1本(全5本)の下部キャノピーシール溶接部周囲にホウ酸の付着が発見された。
 このため、当該部について外観観察および浸透探傷検査を実施した結果、キャノピーシール溶接部に沿って長さ約2mmの欠陥指示(傷)が確認された。
 なお、このことによる周辺環境への放射能の影響はない。

[調査結果]
 当該キャノピーシール部を切り出し、試験施設にて詳細な外観観察を実施した結果、第4回定期検査(昭和59年)時に損傷が発見され補修溶接を実施した箇所の近傍(溶接の熱影響部)で、外面長さ約1.5mm、内面長さ約3.5mmの貫通割れが確認された。また、損傷部の破面観察の結果、割れの特徴は粒界割れであった。
 なお、前回の定期検査時に、キャノピーシール部全数(192ヶ所)について渦流探傷検査(ECT)を行い、当該キャノピーシール部については有意な指示がないと判断していたが、再評価した結果、今回割れが発生した箇所では、補修溶接によるノイズ信号が大きかったため、欠陥信号が明瞭に判別できなかったものと判明した。

[推定原因]
 割れの原因は、建設当初のキャノピーシール溶接の熱影響と第4回定期検査時の補修溶接による熱影響が重なり合ったことにより、キャノピーシール内面から応力腐食割れが発生したものと推定された。

[対策]
 大飯2号機では、今回の定期検査で、原子炉容器上部ふたの取替え工事を実施しており、新しい上部ふたは、制御棒駆動装置等の保護筒や管台部の材料を耐応力腐食割れに優れたものに変更するとともにキャノピーシールのない構造に変更する等の改善を図っている。[平成10年9月3日、10月2日記者発表済]

[追加調査結果]
 損傷部について詳細破面観察や鋭敏化度測定等の調査を引き続き実施した結果、今回の損傷部位では、キャノピーシール溶接(建設時)と補修溶接(昭和59年漏えい時)による熱影響が重畳したため、金属組織の鋭敏化度が高く、耐食性が低下していることが確認された。
 以上の調査から、今回の漏えいは、補修溶接の影響によって材料の耐食性が低下した部位で運転に伴い徐々に応力腐食割れが進展し、貫通したものと考えられた。
(注) 鋭敏化 溶接による熱影響で、材料の結晶粒界近傍でCr(クロム)欠乏層ができ、耐腐食性が低下すること。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


大飯発電所2号機 損傷箇所図
原子炉容器上部ふたの技術的改善点