[記者発表][平成10年度12月]−[17日14時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の定期検査状況について(余熱除去系配管部での割れの原因と対策)(10−77)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成10年8月29日から第14回定期検査中であるが、11月30日、巡回点検で、B−余熱除去ポンプ(停止中)の出口配管にあるドレン管台溶接部付近から、僅かな1次冷却水漏れが確認されたため、当該出口配管系統を隔離し、配管内の水抜き作業を行い漏えいを停止させた。
 今回の事象による環境への放射能の影響はない。
 漏えいしたドレン管台部を調査したところ、管台溶接部から余熱除去系配管にかけて割れが確認された。[以上、平成10年12月1日記者発表済]

 損傷部の調査結果と原因および対策については以下のとおりである。

1. 調査結果
(1) 当該損傷部を切断し詳細調査した結果、割れは余熱除去系配管とドレン管台との溶接部を中心として、管台および余熱除去系配管に拡がっており、外表面で約154mm、内面で余熱除去系配管部で約27mmの割れが発生しており、割れの破面には疲労割れの特徴が認められた。また、管台溶接部の外表面に近いところに、長さ約11mmの溶接不良による欠陥があり、その周囲にも疲労破面の特徴が認められた。
(2) 余熱除去系配管を含めたドレン管台部の振動について、実機モデルおよび余熱除去系配管の変形を考慮した詳細な振動解析を行ったところ、当該管台部の固有振動数は余熱除去ポンプ運転に伴う配管内の流体振動数(約120Hz)に非常に近く、共振し易い構造であったことが判明した。
また、A系統の同一ドレン管台部は損傷はなかったが、打振調査の結果流体振動数に近い固有振動数が確認された。
(3) 当該ドレン管台部は、前回定期検査(平成9年2月〜6月)において、余熱除去ポンプ出口配管系統の運転操作の効率化を図るため、ドレン管の内径を約19mmから約48mmにし、管台の構造も変更する改造工事を実施した。その際の設計検討として、管台の振動については、余熱除去系配管を剛体(変形しないもの)とした標準的な解析手法により、ポンプ運転に伴う配管内の流体振動と共振しない(固有振動数約200Hz)と判断していた。

2.

原因
 前回定期検査において、当該ドレン管台の改造工事を行ったが、その時の設計検討では、管台は余熱除去ポンプ運転に伴う配管内の流体振動と共振しないと判断したが、当該管台では流体振動と共振していたことから、管台溶接時に生じた溶接欠陥を起点として、共振により疲労割れが発生し、その後、溶接部、管台および余熱除去系配管側に進展するとともに、配管内面側にも進展し、漏洩に至ったものと推定された。

3.

対策
 当該ドレン管台・弁およびA系統の同一管台・弁について、詳細な振動解析にて余熱除去ポンプ運転に伴う流体振動と共振しないことを確認したものに取り替えることとした。なお、調査のために切り出した余熱除去系配管も新しいものに取り替えることとした。
 また、今後、溶接施工にあたっては、より一層の作業管理や品質管理の徹底に努めるとともに、ドレン管台・弁等の振動解析については、設計管理の基準を整備することとした。

4.

その他
 現在実施している第14回定期検査は、当初の計画では平成10年12月下旬に調整運転開始、平成11年1月下旬に営業運転再開の予定であったが、今回の漏えいに伴い、1ヶ月程度工程が遅延する見込みである。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


系統概要図・漏えい状況図
B−余熱除去ポンプ出口ドレン弁取付部損傷概要図
当該弁管台形状