[記者発表][平成11年度1月]−[18日14時資料配付] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の一次冷却水漏えい事故について(11−140)

1.

昨年7月12日に発生した敦賀2号機の一次冷却水漏えい事故について、11月27日より開始した第10回定期検査において、再生熱交換器の取替えを含む再発防止対策等が実施されてきたところであるが、本日、再発防止対策が終了したので、今週末に再生熱交換器の性能確認等を行った後、原子炉起動に入りたい旨の報告を受けた(別紙1別紙2参照)。

1.

この報告内容等については、1月20日に予定している県原子力環境安全管理協議会で国や事業者から説明を受けることとしたいと考えている。

1.

県としては、再発防止対策が着実に実施されているかどうかを、その都度確認してきたところであるが、今後は、原子炉起動前の温態機能試験時に実施する予定の再生熱交換器の性能および温度変動測定の結果について、敦賀市とともに現場にて確認してまいりたいと考えている。



(別紙1)

平成12年1月18日
福井県知事
栗田 幸雄 殿
日本原子力発電株式会社
取締役社長 鷲見 禎彦

敦賀発電所2号機一次冷却水漏えい事故に係る再発防止対策の実施について

 拝復 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 当社事業運営につきましては、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 平成11年7月12日に発生した敦賀発電所2号機の一次冷却水漏えい事故につきましては、原子力発電所に対する信頼を損なうこととなりましたことは誠に申し訳なく、改めて深くお詫び申し上げます。
 当社といたしましては今回の事故を厳粛に受け止めるとともに、申し入れのあったご主旨を十分踏まえ、全社を挙げて徹底した原因究明を行うとともに、再発防止対策及び信頼性向上に向けた取り組みを行って参りました。
 これらの原因究明の結果並びに再発防止対策につきましては、同年10月27日に福井県ご当局に報告し、同年11月27日から開始した第10回定期検査におきまして、再生熱交換器の取替えや第3種管に対する検査の強化等の再発防止対策を実施してまいりましたが、この度、対策工事等が終了しましたので報告申し上げます。
 今後は原子炉起動前の温態機能試験時におきまして、念のため再生熱交換器の性能や温度変動等の確認を行い、問題のないことを確認した後、原子炉を起動し、運転を再開したいと考えております。
 原子炉起動に際しては万全の体制で臨むとともに、運転に際しては安全確保に努め、県民の皆様の信頼確保に尚一層努力する所存でございますので、引き続きご指導賜わりますようお願い申し上げます。

敬具
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(別紙2)

敦賀発電所2号機一次冷却水漏えい事故に係る再発防止対策の実施について

1. 再発防止対策
 今回の事故の原因究明の結果、当該連絡配管上流側エルボおよび再生熱交換器中段胴本体の損傷原因は、内筒内を流れる主流(低温水)と内筒の外側を流れるバイパス流(高温水)が合流する部位である胴本体および連絡配管に周期的温度が変化する現象が発生し、高サイクル熱疲労割れが発生したものと考えられた。この原因究明結果を踏まえ以下の再発防止対策を実施した。
(1) 再生熱交換器の取替
 平成11年11月27日より開始した第10回定期検査において、再生熱交換器について、内筒を有しない構造のものに一式取替えた。新再生熱交換器の設計にあたっては構造・強度等の評価の他に、内筒構造を有しないため高サイクル熱疲労割れ発生の懸念はないが念のため熱交換器内部を流れる水による高サイクル熱疲労に対して健全性を確認した。製作にあたっては徹底した品質管理を行い、検査に際しては構造強度評価上確認すべき寸法等に加え、新たに性能上確認すべき寸法について実施した。また、12月14日から新再生熱交換器の搬入・据付・配管接続を行い、国の耐圧・漏えい検査等の使用前検査を受け、据付工事を終了した。
 今後予定している原子炉起動前の温態機能試験時において、念のため再生熱交換器の胴・連絡配管の温度変動状態の確認および再生熱交換器の性能等の確認を行い、また、運転状態において国の性能に係る使用前検査を受けることとしている。
(2) 定期検査の充実
a. 高サイクル熱疲労に対する点検の充実
   国内外における高サイクル熱疲労による損傷事例としては、今回のような温度差の混合による変動が原因のものと、温度差の成層化とその変動が原因のものがある。
 これらの損傷事例を踏まえ、発電所の主要系統について高サイクル熱疲労損傷の可能性を調査した結果、現時点では同様な損傷の発生するおそれはないと考えているが、類似箇所を抽出し、今後計画的に超音波探傷検査を行うこととした。
 今定期検査においては、以下の系統の15箇所について超音波探傷検査を行い健全性を確認した。
<熱成層>   <高温低温水合流部>
安全注入系 4箇所 余熱除去系 4箇所
余熱除去系 2箇所 化学体積制御系 1箇所
化学体積制御系 1箇所      
冷却材ドレン系 3箇所      
b. 定期検査における検査の充実
 今回の漏えい箇所は、プラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の一次冷却水が流れている系統であったが、設備的には原子炉圧力バウンダリ−とは隔離できることから第3種管に分類され、使用期間中検査としては漏えい検査を実施し、体積検査は実施していなかった。
 このことを踏まえ、原子炉格納容器内にあって、プラント運転中に第1種管と同じ圧力・温度の一次冷却水が流れる化学体積制御系(抽出・充てん系)の一次冷却系統から再生熱交換器までの突き合わせ溶接部について、従来の供用期間中検査に加え、超音波探傷検査を第1種管並の頻度(10年で25%)で実施することとし、今定期検査では該当する120箇所の内30箇所について超音波探傷検査を実施し、健全性を確認した。
(3) 運転管理面の改善
 原子炉格納容器内で一次冷却水の漏えいが発生した場合、漏えい量を抑制するため以下の通り監視機能の充実及び運転手順書の整備を行った。
a. 化学体積制御系設備に監視カメラを増設(9台)し、漏えい箇所を早期に特定するための監視機能を充実させるとともに、同系統の圧力、流量および温度についてこれまでの指示計に加え記録計を設置し記録機能を充実した。
b. 漏えい量を一層抑制するため、隔離が可能な系統について隔離のための手順書を整備した。
c. 一次冷却水漏えい時における原子炉停止判断の明確化を図るとともに、減圧・冷却操作時間を短縮する手順書を整備した。
(4) 放射線被ばくの低減・検査手法の高度化
 除染作業等における作業性の向上と被ばく線量の低減を図るため、自動除染装置や化学除染装置の技術開発に取り組む。また、超音波探傷検査等の非破壊検査技術の高度化(自動化適用範囲の拡大、異種金属溶接部の欠陥検出精度の向上等)について、従来からの取組を着実に進め、早期に実機に適用できるよう積極的に取り組む。

2.

通報連絡と情報公開
(1) 通報連絡の充実
 事故発生時の連絡デスク内の役割分担の明確化を図り、第2報以降の通報連絡について的確に情報提供ができるよう、事故時の通報連絡体制の充実を図った。今後、通報連絡訓練等を通じ更なる充実を図って行く。
(2) 情報公開と信頼回復
 事故の原因・調査状況や、原因究明結果および再発防止対策等について適宜通産省等関係機関に報告するとともに、プレス発表を通じ情報公開に努めてきた。今後とも理解を得やすい公表に努めていく。
 また、理解活動としては事故発生の状況や調査状況、原因・対策について、当社広報誌への掲載、地元地区説明会の開催、訪問対話活動等を通じ、地元の皆様への広報活動を実施してきた。
 今後とも引き続き、地域の信頼回復に向け不断の努力を続ける。
以上
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格納容器内一次冷却水漏えい事故に係る再発防止対策の概要
化学体積制御系からの漏えいに係る対策実施工程