[記者発表][平成11年度1月]−[24日16時15分記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の原子炉起動と調整運転開始について(第10回定期検査)(11−143)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力116.0万kW)は、定格出力運転中の平成11年7月12日に、化学体積制御系再生熱交換器連絡配管からの一次冷却水漏えいにより、原子炉を手動停止した。
 その後の調査の結果、漏えい原因は、再生熱交換器の内部構造に起因して、当該連絡配管等に高サイクル熱疲労割れが発生したためと判明したことから、再発防止策として、当該再生熱交換器を取替えることとし、11月27日より第10回定期検査を開始した。
 再生熱交換器取替工事を含む再発防止対策工事が終了し、本日、再生熱交換器の性能および温度変動確認の結果、問題のないことが確認されたことから、明日1月25日午前に原子炉を起動し、同日夕刻に臨界となる予定である。
 その後は諸試験を実施し、1月下旬(1月28〜29日頃)に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、2月下旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。

タービンバランシング作業(調整運転開始前にタービンの回転数を上昇させて振動を測定し、振動が大きい場合には、タービンの車軸におもりを取り付け、振動が小さくなるように調整する作業)の実施の有無により、調整運転の開始が前後する。

1.

一次冷却水漏えい事故を踏まえた対策工事(図−1参照)
(1) 化学体積制御系再生熱交換器取替工事
 再生熱交換器内で、内筒の内側を流れる「主流(低温)」と内筒の外側を流れる「バイパス流(高温)」の温度差に起因して、胴内部の流況が周期的に変化(フローパターン変動)し、大きな温度変動が与えられ、高サイクル熱疲労による損傷が生じたため、内筒を有しない構造の熱交換器(連絡配管を含む)に取替えた。
(2) 検査の充実
a. 高サイクル熱疲労割れの発生防止
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例を十分踏まえ、類似対象箇所を抽出し、健全性確認のため、今後計画的に点検を実施することとした。
 今回、以下の部位(15箇所)について超音波探傷検査を行い、異常のないことを確認した。
熱成層の発生を考慮した箇所の溶接部[充てん系統、余熱除去系統、余剰抽出系統(ループドレン系統)、安全注入系統]
第3種管で、高温低温水合流部の母材及び溶接部[抽出系統低圧抽出配管接続部、余熱除去系熱交換器バイパスライン接続部、余熱除去ポンプ入口ミニマムフローライン接続部]
b. 格納容器内第3種管の検査の充実
 今回の事故を踏まえ、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている範囲の点検を強化し、第1種管並みの頻度(25%/10年)で超音波探傷検査を実施することとした。対象となる化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管から再生熱交換器までの範囲の溶接部120箇所のうち、30箇所について超音波探傷検査を行い、異常のないことを確認した。
(3) 運転管理面の改善
 格納容器内で発生する1次冷却水漏えい事故時において、漏えい量をより一層低減するため、漏えい箇所の早期特定のための監視方法の充実を図るとともに、漏えい箇所の隔離や原子炉の停止・冷却に関する運転手順の整備を図った。
<漏えい箇所の早期特定、漏えい量抑制のための改善工事>
漏えい箇所の早期特定のため、監視カメラを9台増設した。
化学体積制御系に係る流量・温度等の運転パラメータの記録機能の拡充を行った。

2.

主要工事等
(1) 湿分分離加熱器・スチームコンバータ等伝熱管取替工事(図−2参照)
 蒸気発生器の信頼性向上の観点から、湿分分離加熱器(A・B)第2段、スチームコンバータ、スチームコンバータドレンクーラーの伝熱管を銅系材料のものからステンレス系材料のものに取替え、蒸気発生器への不純物持ちこみの低減化を図った。

3.

加圧器逃しタンクからの漏えい(図−3参照)
 一次冷却系の水張り準備作業として、1月15日に、一次冷却水ポンプパージ水ヘッドタンクへ補給水を供給する作業を実施していたところ、加圧器逃しタンクの圧力開放板が開放し、タンク水が格納容器内に漏えいした(漏えい量は約1m3)。なお、周辺環境への放射能の影響はなかった。
 圧力開放板が開放した原因は、一次系統の真空引き後、加圧器逃しタンク補給水止め弁を開状態から閉にすべきところ、使用した手順書に改訂時の差し替え不備があったことと、系統状態の復旧確認が不十分であったことにより、当該止め弁が開の状態で、一次冷却水ポンプパージ水ヘッドタンクへの補給水供給を開始したため、加圧器逃しタンクに補給水が供給され続け、タンク内圧が上昇したためと判明した。
 開放した圧力開放板については、予備品と取替え、復旧した。また、差し替えミスのあった手順書については修正するとともに、操作の際の系統状態の確認について徹底を図った。<1月20日発表済み>

4.

燃料集合体の検査結果
燃料集合体全数193体のうち、48体(これらは全て新燃料集合体で高燃焼度燃料集合体)を取り替えた。
燃料集合体の外観検査(64体)を実施した結果、異常は認められなかった。

5.

蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果
 蒸気発生器伝熱管全数(計13,524本)について、渦流探傷検査を実施した結果、異常は認められなかった。

6.

次回定期検査の予定
 平成13年 春頃