[記者発表][平成11年度2月]−[25日16時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の原子炉手動停止と復水器海水漏えいについて(原子炉手動停止および海水漏えいの原因調査結果)(11−152)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、定格出力で運転中のところ、2月14日朝、検塩計の指示値が上昇し警報設定値(0.3μS/cm)を超えたことから、復水器内での海水漏えいと判断し、14日14時00分より出力降下を開始、16時00分に電気出力60%として、復水器伝熱管等の点検・補修作業を開始した。この事象による環境への放射能の影響はない。[平成12年2月14日記者発表済]

 復水器伝熱管等の点検・補修作業を実施中のところ、2月19日10時35分頃から復水器の真空度が低下しているのを運転員が確認し、監視強化を行っていたが、低下傾向が続いたため、10時46分から出力降下を開始した。中央制御室内の監視画面(CRT)を監視していた運転員は、10時49分、復水器の真空度が約580mmHgまで低下したと判断し、当直課長も確認し、タービン保護のためタービンを手動で緊急停止させ、これにより原子炉も自動停止した。この事象による環境への放射能の影響はない。
 今回の運転操作では、「復水器真空 低(650mmHg)」の警報は発信しておらず、監視画面を見た際、復水器の真空度と発電機出力との指示を見間違えたものと推定された。[2月19日記者発表済]

1. 原子炉手動停止の原因と対策について(図−1図−2参照)
1−1 調査結果
 今回の原子炉手動停止に至るまでの運転操作について調査した結果、以下の事実が判明した。
2月19日10時35分頃から、わずかな真空度低下が確認されたため、運転員はCRTで復水器の真空度を監視していた。
このCRT画面には、復水器真空度と発電機出力が並列に表示されていた。
10時35分の復水器真空度は730.6mmHg、発電機出力は704.2MWeであった。
10時46分には復水器真空度が約727mmHgまで徐々に低下してきたことから、CRTを監視していた運転員は、構内通信設備にて補機員に復水器の点検を指示した。その後CRT画面を見た際、発電機出力(700MWe)のデジタル表示値を復水器真空度(実際は約727mmHg)と見誤り、当直課長も同様の誤認し、発電機負荷降下操作を指示した。
運転員の誤認はその後も続き、10時49分、復水器の真空度が発電機出力値(580MWe→mmHg)まで低下したものと誤認し、当直課長も真空の維持が困難と誤って判断し、タービンの緊急手動停止操作を行った。
1−2 原因
 今回の運転では、発電機出力を60%(約706MWe)として復水器の点検作業を行っており、その状態で復水器の真空度がわずかに低下する事象が発生した。運転員は関連パラメータの確認を行ったが、点検作業による復水器への空気の漏れ込みの可能性も想定した。このことが背景となって、その後の運転監視において、運転員がCRT監視画面上で隣り合わせになっていた復水器真空度と発電機出力の表示値を見誤った後は、当直課長もこれを追認し、出力降下の過程においても、その誤認が修正されなかったため、タービンの緊急手動停止操作を行ったことが判明した。
1−3 対策
 今回の原因は、当直課長を含む運転員の監視画面指示値の誤認であり、それが修正されなかったことから、全運転直員に対して、運転監視、直内連携の重要性などの基本動作について再教育を行うこととした。
 また、今回のヒューマンエラーを教訓として、直全体の行動について分析を行い、教育メニュー等の充実を図り、運転訓練センターでの訓練等に反映する。
(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−
1−4 復水器の真空度が低下した原因(図−3参照)
 復水器の真空度がわずかに低下した原因について、復水器点検作業の実績や真空維持のための真空ポンプ等の性能や機器の分解点検を実施した。
 その結果、B−復水器真空ポンプのエゼクタノズルに設置されている凍結防止用ヒータのコイル断線が認められ、これにより真空度がわずかに低下したものと推定された。当該ヒータを新品と取替える等の対策を実施することとした。

2.

復水器の点検結果について(図−1図−4参照)
2−1 調査結果
 復水器内に海水が漏えいしていると考えられた復水器1Bおよび3B水室の伝熱管全数(既施栓管を除く)について、漏えい検査を実施したところ、1B水室の伝熱管2本に漏えいが確認された。漏えい管については、渦流探傷検査(ECT)でも貫通を示す内面減肉指示が認められ、管内面をファイバースコープにより観察した結果、管内の表面部に減肉と思われる箇所がみられた。
 当該管2本を除く1B、3B水室の伝熱管全数のECTの結果、伝熱管244本(1B水室:229本、3B水室:15本)に施栓基準に達する減肉信号指示が認められた。
2−2 推定原因
 今回漏えいが認められた伝熱管(1B水室2本)は、前回定期検査時に取替えた保護被膜形成管であり、1B水室伝熱管のECT検査で施栓基準に達した伝熱管231本のうち、171本が保護被膜形成管であった。これらの伝熱管のECT検査では、伝熱管全長の複数箇所で減肉指示が認められていることから、取り替え後これまでの運転において、伝熱管内面にある保護被膜が複数箇所ではく離し、伝熱管内の海水の流れに乱れが生じて伝熱管を減肉(貫通)したものと推定される。
 それ以外の通常の伝熱管では、微少な海生生物が伝熱管内面に付着する等により、わずかに減肉したものと推定される。
 保護皮膜形成管で減肉が発生した原因については、次回定期検査(本年3月中旬予定)で保護皮膜形成管他(通常の伝熱管も含む)を抜き取り、詳細に調査することとした。
保護被膜形成管: 伝熱管(通常使用している伝熱管と同一材料)の内面に、海水の腐食を予防するため、あらかじめ薄い鉄皮膜を形成させた銅合金管
2−3 対策

 対策として、漏えい管2本と、ECT検査で施栓基準に達した伝熱管244本について施栓するとともに、予防保全として前回定期検査で取り替えた保護皮膜形成管(今回のECT検査では施栓基準には達していない)191本も施栓することとした。
 なお、施栓工事を行ない、漏えいのないことを確認した後、2月27日夜から原子炉を起動し、3月1日未明に定格出力に復帰する予定である。

(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
評価対象外 評価対象外

表.復水器伝熱管の施栓状況
機 器 名 伝熱管設備数 施栓基準超過数 今回の施栓数 累積施栓数
1B−復水器 14,362本 231本
(保護被膜形成管171本を含む)
269本
(保護被膜形成管全数209本を含む)
308本
3B−復水器 14,362本 15本 15本 125本

機 器 名 伝熱管設備数 施栓基準超過数 今回の施栓数 累積施栓数
1A−復水器 14,362本 今回、ECTは実施していない 153本
(保護被膜形成管全数)
190本
(注) 施栓基準; 渦流探傷検査の指示値が70%以上の伝熱管および次サイクルの運転を考慮したときに次サイクル終了時点で渦流探傷検査の指示値が70%以上と推定される伝熱管については施栓することとなっている。