[記者発表][平成11年度5月]−[25日16時記者発表] 原子力安全対策課
美浜発電所2号機の原子炉手動停止の原因と対策について(余剰抽出水系統配管の漏えい)(11−21)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力50.0万kW)は、復水器内の海水漏えいに伴う点検・補修のため電気出力約65%で運転中の4月30日、格納容器内にあるサンプ水位の上昇率の増加が確認された。このため、監視強化と各部の点検を行った結果、Bループの1次冷却材ポンプ入口配管の余剰抽出水系統取出配管部付近でわずかな水漏れが確認されたことから、点検調査のため、同日18時45分に発電を停止した。この事象による環境への放射能の影響はない。
 停止後、当該部の外観点検を実施した結果、余剰抽出水系統取出配管の曲げ管部の背側に直線状の割れ(外表面長さ約7mm)が確認された。[平成11年4月30日、5月7日 記者発表済]

1. 原因調査結果
(1) 当該損傷部を切り出し、試験施設にて詳細な外観観察を実施した結果、管背側中央部付近に内面長さ約24mm、外面長さ約7mmの貫通割れが確認されたほか、管内面に長さ約15mmの割れと微小な割れが確認された。さらに割れの破面観察を実施した結果、割れはいずれも内面からの疲労割れによるものと判明した。
(2) 当該配管内面において、損傷部近傍を境に上流側(1次冷却材配管側)と下流側で酸化物等の付着物の厚さの違いによるものと推定される色の違いが確認された。下流側が弁により仕切られ、通常運転中には流れのない1次冷却材配管の取り出し配管では、取り出し部には高温水が侵入するが、下流側では低温の水が存在するため、高温部と低温部の境界面が発生するが、当該配管においては、温度の境界面が当該損傷部近傍に発生していたものと考えられた。
(3) 工場にて配管曲げ部に温度の境界面を発生させる実験を実施した結果、温度の境界面は周期的に上下に変動することが確認された。
(4) 当該配管系の設計においては、温度の境界面が水平管部で発生するものと評価していたが、工場にて実機の配管形状を模擬した流動確認試験を実施した結果、蒸気発生器出口の曲がり配管による流れの変動等の影響を受けて、当該取り出し配管への1次冷却水の侵入が当初の想定位置より浅くなることが確認された。
(5) 当該配管曲げ部については、製作時の曲げ加工によって管の背側内面に比較的高い応力が残留することが確認された。

2.

推定原因
 高温部と低温部の境界層が配管曲げ部に位置したことから、温度の境界面が周期的に上下に変動することで、配管内面の温度の境界部で熱応力が繰り返し作用するとともに、当該箇所が製作時の曲げ加工による残留応力の比較的高い箇所であったことから、熱疲労による割れが内面に発生し、その後、熱応力の繰り返しにより割れが徐々に進展して貫通、漏えいしたものと推定された。
 また、温度の境界面が設計時の評価より1次冷却材配管(主配管)に近い位置に発生した原因は、主配管が蒸気発生器出口から1次冷却材ポンプへの曲がり形状をもったものであったことから、主配管内で流れの変動等が生じており、その影響により余剰抽出水系統配管への高温の侵入深さが浅くなったものと推定された。

3.

対策

 当該配管については、温度の境界面の変動が配管曲げ部に影響しないように、1次冷却材配管から曲げ部までの長さを変更するとともに、残留応力の低い曲げ管に取り替える。なお、念のためプラント起動時に当該曲げ部付近の温度測定を行い、温度の境界面の位置を確認する。
 また、今後の配管設計に当たっては、主配管からの取り出し配管系で温度の境界面の変動の影響が想定される場合には、今回の事象に鑑み、配管曲げ部の位置を十分配慮するとともに、曲げ管部については残留応力の低いものを使用していくこととした。
 対策実施後、6月中旬に原子炉を起動し、発電を再開する予定である。

(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


系統概要図
割れの状況図(管内面側)
1次冷却水による温度の境界面の発生位置