[記者発表][平成11年度5月]−[31日14時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の定期検査状況について(再循環ポンプB号機の試運転時における不具合の原因と対策)(11−28)

 このことについて、核燃料サイクル開発機構から下記のとおり連絡を受けた。

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉原型炉;定格出力16.5万kW)は、平成11年1月8日から第15回定期検査を行っており、原子炉冷却材再循環ポンプ(全4台)のうち、B・D号機の分解点検終了後の4月3日、5日にポンプの試運転を実施したところ、再循環ポンプB号機のシール水注入系で「B−熱遮蔽差圧高」警報が発信した。
 試運転時のパラメータ等を調査した結果、警報が発信した要因として、ポンプに注入されているシール水の原子炉冷却材側への流れが、試運転時に正常でなかったと推定されたため、当該ポンプを再度分解点検し詳細調査を行うこととした。なお、本事象による環境への放射能の影響はない。[平成11年4月7日記者発表済]

 再循環ポンプB号機の分解点検および工場での再現試験の結果、試運転時における不具合の原因および対策については、以下のとおりである。

1. 調査結果
ポンプ内部の外観点検の結果、主軸に取り付けられているスリーブ(保護筒)と、本体(ポンプケーシング)側にあるフローティングリングおよびラビリンス部とが接触したと推定される摺動傷がそれぞれに認められた。
ポンプ内部で線状の金属片や金属粉が認められたが、成分分析等の結果から、スリーブがラビリンス部との接触により削れたものと推定された。
ポンプ組立時、フローティングリングおよびラビリンス部は熱遮蔽装置に組み込まれた後、ポンプ本体に設置される。このため、熱遮蔽装置へのフローティングリングの取付状態を確認したところ、フローティングリングが僅かに傾いて同装置に取り付けられていたことを確認した。また、内部の寸法測定の結果、同装置と本体との間には組み込む際の若干の隙間余裕があり、この隙間が偏った場合、フローティングリングおよびラビリンス部が主軸と接触する可能性があることが判った。
工場での再現試験の結果、フローティングリングが僅かに傾き、かつ熱遮蔽装置が主軸に対して僅かにずれた状態で本体側に組み込まれた場合、今回と同様に差圧上昇および摺動痕等が再現することを確認した。また、フローティングリングを取り付ける際には、トルク管理にてボルトを締め付けているが、同リング下部にあるガスケットへの押し付け状態の差により、僅かに傾いて取り付けられる可能性があることが判った。

2.

原因推定
 今定期検査における当該ポンプの分解点検後の組立作業において、フローティングリングを組み込む際トルク管理を行っていたが、下部にあるガスケットへの押し付け状態の差等により僅かに傾いた状態で熱遮蔽装置に組み込まれた。また、熱遮蔽装置を本体に組み込む際に、厳密な隙間管理を行っていなかったことから、同装置が主軸に対して僅かにずれた状態で本体に組み込まれた。
 以上の状態でポンプを起動したため、フローティングリングとスリーブの接触による振動の発生および当該部の温度上昇により、シール水の流路抵抗が増加し、熱遮蔽装置差圧高の警報が発信したものと推定された。

3.

対策
1) 摺動傷が認められたフローティングリングおよびスリーブ等を新品と取り替える。
2) 今後のポンプ組立作業にあたっては、作業要領書に以下の点を明確に記載し、サイクル機構職員立会のもと確実に実施することとした。
フローティングリングを熱遮蔽装置に取り付ける際には、従来のトルク管理に加え、隙間ゲージ等を用いて傾きがないことを確認する。
熱遮蔽装置を本体に組み込む際には、専用治具を用いて隙間確認を行う。

4.

その他
 今後、当該ポンプの組立作業等を行った後、7月下旬頃に発電を再開する予定である。

(注) ポンプ熱遮蔽装置 原子炉冷却材の熱からポンプの軸受やシール部を保護するための冷却装置。
シール水注入系 ポンプ内を流れる原子炉冷却材がポンプ軸にそって外部に流れ出るのを防ぐため、専用のシール水を注入する系統。
「B−熱遮蔽差圧高」 B−再循環ポンプに注入されたシール水が、熱遮蔽装置とポンプ軸の間隙を通過する前後の差圧が高いことを示す警報。
フローティングリング ポンプ起動時、シール水の差圧を調整するリング。
ラビリンス部 シール水の注入がなくなった場合でも、原子炉冷却材が上部に流れ出ないよう多段の山溝構造で流路抵抗を持たせているもの。


系統概要図
再循環ポンプ構造図・断面図
再循環ポンプ不具合発生状況