[記者発表][平成11年度6月]−[2日11時資料配付] 原子力安全対策課
大飯発電所1号機の原子炉起動と調整運転開始について(第15回定期検査)(11−30)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成11年2月19日から、第15回定期検査を実施していたが、6月3日に原子炉を起動し、翌4日に臨界となる予定である。
 今後は諸試験を実施し、6月上旬(6月5〜7日頃)に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、7月上旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。

タービンバランシング作業(調整運転開始前にタービンの回転数を上昇させて振動を測定し、振動が大きい場合には、タービンの車軸におもりを取り付け、振動が小さくなるように調整する作業)の実施の有無により、調整運転の開始が前後する。



1.

主要工事等
(1) 1次冷却材ポンプ供用期間中検査(図−1参照)
 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、4台あるポンプのうち、Cポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検を行い、異常のないことを確認した。
(2) 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事(図−2参照)
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため工学的安全注入系の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能なように、余熱除去系と格納容器スプレイ系を接続する配管を設置した。
*1 アクシデントマネジメント対策
 設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。
*2 工学的安全注入系の再循環注入モード
 1次冷却材喪失事故時、工学的安全注入系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水タンク水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。
(3) 低圧タービンロータ取替工事 (図−3参照)
 第1、2、3低圧タ−ビンロータについて、耐応力腐食割れ性の向上等、信頼性確保の観点から、動翼円板とロータ車軸を『焼嵌め(やきばめ)型ロータ』から、円板と車軸が一体化された『全一体型ロ−タ』に取り替えた。
(4) 発電機負荷開閉装置設置工事 (図−4参照)
 所内電源の信頼性向上対策として、発電機と主変圧器の間に、発電機負荷開閉装置を設置した。
(5) 充てん/高圧注入ポンプおよび充てんポンプ取替工事(図−5参照)
 充てん/高圧注入ポンプ(2台)および充てんポンプ(1台)の計3台を保守性に優れたポンプに取り替え、充てん/高圧注入ポンプについては、主軸の剛性を高めたものとした。なお、ポンプを搬出・搬入するために、ポンプ室生体遮へい壁に仮開口部を設置し、作業後復旧した。
(6) アイスコンデンサ氷取替工事 (図−6参照)
 アイスコンデンサ(*3)内の氷の補充作業の効率化および昇華抑制を図るため、氷をフレーク状からアイスブロック化し昇華抑制のフィルムを装着した。
*3 アイスコンデンサ
 1次冷却材喪失事故時に格納容器内に放出される蒸気をアイスコンデンサ内に保有している氷により凝縮し、格納容器内圧上昇を抑制する機能を有する設備。(国内では大飯発電所1、2号機でのみ採用)
(7) 原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事(図−7参照)
 海外における原子炉冷却系統設備配管部での損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統設備の小口径配管の一部について、材質等を変更した新しい配管に取替えた。

2.

蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果
 蒸気発生器伝熱管全数(13,528本)について、渦流探傷検査を実施した結果、異常は認められなかった。

3.

燃料集合体の検査結果等
(1) 燃料集合体支持格子の損傷 (図−8参照)
 燃料集合体の外観点検を実施した結果、平成11年3月15日1体と29日1体の計2体、燃料集合体の支持格子の一部に変形が認められた。
 原因は、燃料集合体の装荷・取出作業時にA型燃料集合体の支持格子上部と隣接するB型燃料集合体の支持格子下部が、クレーン操作時の僅かな揺れ等によりかみ合い、クレーンの自動停止が一時的に解除される設定において作業が継続されたことにより、過大な荷重が加わり変形が生じたものと推定された。
 対策として、クレーン起動時の荷重変化を小さくするよう制御回路の変更を行うとともに、作業手順書の改善を図った。
 なお、支持格子に変形が認められた燃料集合体2体については、今回は使用せず、今後再使用の可否について詳細に検討することとした。[平成11年3月15日、4月1日、4月23日 記者発表済]
(2) 燃料集合体の検査結果
 燃料集合体の外観検査および外観点検の結果、上記の2体以外には異常は認められなかった。
 また、燃料集合体全数193体のうち、80体(うち72体が新燃料集合体で、新燃料は全て高燃焼度燃料集合体)を取り替えた。

4.

制御棒駆動装置ハウジング等キャノピーシール部の渦流探傷検査結果(図−9参照)
 制御棒駆動装置ハウジング等のキャノピーシール部全数(上部53ヶ所、中間部61ヶ所、下部78ヶ所、合計192ヶ所)について、渦流探傷検査を実施した結果、下部1ヶ所に信号指示が認められ、原因は、内面からの応力腐食割れと推定された。
 対策として、信号指示の認められた下部1ヶ所について、信号指示部位を切削し補修溶接した上で、キャノピーシール全周の肉盛溶接を実施した。[平成11年4月1日 記者発表済]

5.

次回定期検査の予定
 平成12年 夏頃