[記者発表][平成11年度7月]−[14日16時記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所4号機の調整運転開始の遅れについて(炉内中性子束監視装置でのホウ酸析出の原因と対策)(11−63)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉;定格出力87.0万kW)は、平成11年4月22日から第11回定期検査を実施しており、7月3日16時55分に原子炉を起動、臨界としたが、5日15時40分頃、格納容器内の監視カメラによる調整運転開始前点検で、炉内中性子束監視装置シールテーブルの高圧シール継手部の1箇所で、一次冷却水の漏えいと推定される僅かなホウ酸の析出が確認された。このため、詳細点検を行うこととし、5日17時00分より原子炉停止操作を行い、17時13分に原子炉を手動停止した。
 なお、本事象に伴う環境への放射能の影響はない。[平成11年7月5日記者発表済]

1. 原因調査結果
ホウ酸が析出した高圧シール継手部の組立状況を調査した結果、継手部の締め付け力および各部の寸法等に異常のないことを確認した。
当該継手部を分解し、シール部の構成部品(フロントフェルール等)のシール面を拡大して詳細観察したところ、フロントフェルール側のシール当たり面に微小な線状の傷(長さ約7mm)が認められた。
当該継手部は、定期検査毎に分解、点検、組立を行っており、その際の作業内容等を調査した結果、フロントフェルールのシール面については、使用する工具の接触や異物が付着する可能性のあることが判明した。
工場での再現試験の結果、フロントフェルールのシール面に工具を接触させた場合、ほぼ同様な傷が発生し、僅かに漏えいすることを確認した。

2.

原因
 ホウ酸析出の原因は、今定期検査において、高圧シール継手部の分解組立作業時に、工具の一部がフロントフェルールのシール面に接触し、シール当たり面を横切る微小な傷が発生したため、一次冷却水がシール面から僅かに漏えい(ホウ酸析出量から20cc程度と推定)したものと推定された。

3.

対策
当該高圧シール継手部を新品に取り替える。
高圧シール継手部の組立作業においては、シール面の養生や、樹脂製工具等を使用するとともに、シール面の点検方法や異物管理について改善を図る。

 なお、対策実施後、耐圧漏えい試験を行い、7月16日に原子炉を起動し、17日に臨界に達する予定である。その後は諸試験を実施し、7月中頃(7月17日頃)に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、8月中旬頃には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。
(注) 中性子束監視装置 原子炉内に中性子束検出器を挿入し、原子炉の出力分布(中性子束レベル)を測定する装置。
高圧シール継手部 高圧の一次冷却水を配管内に封じ込めるために、継手部内のシール面(金属面)をネジで押さえ付ける構造。(スウェージロック式)


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


炉内中性子束監視装置説明図
漏えいのメカニズム