[記者発表][平成11年度8月]−[2日10時30分記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の1次冷却水の漏えいについて(原因調査状況について)(11−72)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力116.0万kW)は、定格出力運転中の7月12日、格納容器内で1次冷却水の漏えいが発生したと判断し、6時24分から出力降下を開始、6時48分に原子炉を手動停止した。
 なお、本事象に伴う周辺環境への放射能の影響はない。
 格納容器内の立入調査で、化学体積制御系再生熱交換器1台(全3台)の抽出側連絡配管部で漏えいが確認されたため、同日20時16分に抽出系統の隔離操作を行い、漏えいを停止した。<平成11年7月12日、13日、16日、19日、22日 記者発表済>

 当該漏えい部配管曲がり部と下流側にある配管曲がり部計2箇所について切断し、試験施設にて詳細な調査を実施しているほか、発電所にて再生熱交換器の他の連絡配管等について点検調査を実施しているが、これまでの調査結果の内容は別紙のとおりである。

 今後は、試験施設にて、配管曲がり部の残留応力測定や破面観察等の詳細原因調査を引き続き実施するとともに、割れが確認されている再生熱交換器管台部についても、本日、試験施設に搬出して、詳細調査を実施する予定である。
 また、発電所においては、再生熱交換器の支持脚と架台の拘束状態の調査や伝熱管漏えい試験、熱交換器胴体部内部観察などの調査を実施するほか、もう一方の再生熱交換器抽出側連絡配管について切断し、内面観察等の詳細調査を実施する予定である。


(別紙)

当該エルボの試験施設での調査(中間状況)について

1. 当該エルボの外観観察・浸透探傷試験・超音波探傷試験の結果
(1) 「軸方向」に割れが認められた。
貫通部47mmを伴う、長さ151mmの割れ(内面)
長さ100mm、72mmの2本の割れ
上部管台との溶接部を横切る長さ26mmの割れ
(2) 「周方向」に割れが認められた。
上部管台との溶接部の管台側に長さ90mmの割れ
溶接部のエルボ側に長さ55mmの割れ
エルボと下流側連絡配管の溶接部の配管側に長さ55mm、45mm、12mmの割れ
 なお、貫通割れの左右に超音波探傷試験では指示が2箇所検出された。前回報告では、この2箇所を含む合計3箇所の指示を報告したが、このうち1箇所は、その後の超音波探傷試験と外観観察の結果、他の割れの近接した部分であることが判明した。

2.

割れ部の詳細観察結果(軸方向割れ4箇所中3箇所、周方向割れ5箇所中2箇所)
(1) 各々の破面には内面を起点としたビーチマークが観察された。これは疲労割れの可能性が高いことを示している。
(2) 軸方向の割れについては、複数の起点から破面が成長し、つながった痕跡が認められる。
(3) 粒界応力腐食割れに特有の粒界割れ破面等は認められなかった。
(4) 全面腐食や局部腐食の痕跡は認められなかった。

3.

比較エルボの健全性調査結果
 比較エルボを6分割し、内面の浸透探傷試験を実施した結果、指示は認められなかった。

4.

現地調査結果
(1) 当該部上流側管台について、当該管台の内面外観観察の結果、溶接部を横切った軸方向割れは、管台内部から管台サーマルスリーブ下端まで至っていることが認められた。(割れの長さは約30mm)
このため、超音波探傷試験にて切断部に指示がないことを確認した後、8月1日に当該管台を切断し、今後、民間調査機関へ搬送して詳細調査をする予定である。
(2) 切断した連絡管について、外面からの浸透探傷試験及び超音波探傷試験を実施した結果、指示は認められなかった。また、連絡管を2分割後、内面の浸透探傷試験を実施した結果、指示は認められなかった。
(3) 当該エルボ下流側管台について、内面の浸透探傷試験を実施した結果、指示は認められなかった。
(4) 他エルボ7箇所(比較調査用として切断し、7月20日に民間試験施設へ搬送したエルボを含む)について、外面からの超音波探傷試験を実施した結果、指示は認められなかった。
(5) 支持脚と架台との拘束状態を目視にて確認した結果、上段、中段の熱交換器の支持架台には熱伸びに伴うこすれ痕と見られる痕跡が認められたが、下段の支持架台については、錆等により確認できなかった。今後、当該支持架台のボルト締め付け力等を引続き調査する予定である。

5.

今後の予定
(1) 引き続き試験施設において、当該エルボの破面観察や断面観察を中心に詳細調査を実施するとともに、歪み測定や材料分析等を実施する。また、今回切断した管台についても、本日、試験施設に搬送して、割れの詳細調査を実施する。
(2) 再生熱交換器について、下段の支持脚と架台の拘束状態を引き続き調査を行うとともに、伝熱管の漏えい試験、当該エルボ上流管台からの胴体内部調査等を実施する。また、上段と中段の連絡管(抽出ライン)を切断して詳細調査を実施する。
(3) 「損傷原因調査計画の全体概要」(添付資料)に基づき、各種調査を実施するとともに、解析評価を実施する。また、解析評価結果の確認等のために実機連絡配管等を模擬した試験(モックアップ試験)についても検討する。
以 上

【用語説明】
ビーチマーク 疲労破面において観察される模様で、砂浜に残る波跡に似ているためビーチマークと呼ばれる。
SEM観察 走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、拡大観察すること。
シャーリップ 割れが外面に貫通する際に見られる、ひきちぎられたような帯状の部分をいう。
組織状模様 疲労破面上に現われるもので、金属組織に似た模様をいう。
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