[記者発表][平成11年度8月]−[12日10時30分記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の1次冷却水の漏えいについて(原因調査状況について)(11−79)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力 116.0万kW)は、定格出力運転中の7月12日、格納容器内で1次冷却水の漏えいが発生したと判断し、6時48分に原子炉を手動停止した。その後の格納容器内の立入調査で、化学体積制御系再生熱交換器の抽出側連絡配管部で漏えいが確認されたため、同日20時16分に抽出系統の隔離操作を行い、漏えいを停止した。
 なお、本事象に伴う周辺環境への放射能の影響はない。
 漏えい配管部について、外観点検を行った結果、配管曲がり部で貫通割れが確認された。<平成11年7月12日、13日、16日、19日、22日、8月2日 記者発表済>

[調査状況]
(1) 試験施設における調査の状況
 当該漏えい部配管曲がり部、比較のための下流側配管曲がり部、配管切断後の調査により割れが確認された管台部について、試験施設にて詳細な調査を実施しているが、これまでの調査結果は以下のとおりである。
a. 当該配管曲がり部の調査
当該配管曲がり部については、試験施設での外観観察や浸透探傷試験の結果、貫通割れを含め9箇所の割れが確認された。
超音波探傷試験の結果、9箇所の割れの他に、2箇所で欠陥信号指示が認められ、当該2箇所について断面観察を実施した結果、内面からの微小な割れが確認された。
割れの破面観察の結果、内面に起点が複数あり、ビーチマーク(貝殻状模様)が認められ、さらに詳細破面観察では組織状模様やストライエーション状模様が観察された。なお、起点部に介在物等は認められず、金属組織にも異常は認められなかった。
曲げ管部等について、寸法測定、硬さ測定、材料の化学分析等を実施した結果、材料の異常は認められなかった。また、ひずみ測定の結果、周方向には内面で引張りの残留応力が、外面には圧縮の残留応力が認められた。
以上のことから、割れは内面からの疲労割れによるものと推定された。
今後は、引張り試験片を採取し機械的性質の確認を行うほか、酸化皮膜測定等の詳細調査を引き続き実施する。
b. 下流側の配管曲がり部の調査(比較調査)
浸透探傷試験、超音波探傷試験を実施した結果、欠陥指示は認められなかった。また、硬さ測定、寸法測定等を実施した結果、漏えい配管部と同等であり、特に問題となるものは認められなかった。
c. 管台部の調査
内面の浸透探傷検査の結果、2箇所の割れが確認された。
割れの破面観察の結果、内面を起点としたビーチマークが認められ、さらに詳細破面観察により組織状模様が観察された。このため、割れは内面からの疲労割れによるものと推定された。
サーマルスリーブについて内面を観察した結果、赤みを帯びた黒色と緑色を帯びた黒色の変色が確認されたことから、今後、材料分析等の詳細調査を実施する。
(2) 発電所での再生熱交換器まわり健全性調査状況
再生熱交換器の他の連絡配管(抽出側1本、充てん側2本)の配管曲がり部や管台部について、超音波探傷試験を実施した結果、欠陥指示は認められなかった。
熱交換器上段と中段の抽出側連絡配管を切断し、拘束状態を確認するとともに、切り出した連絡配管の内面の浸透探傷試験、管台部について内面の浸透探傷試験および超音波探傷試験を実施した結果、欠陥指示は認められなかった。
再生熱交換器の充てん側について加圧し、伝熱管の漏えいの有無を確認した結果、異常は認められなかった。
再生熱交換器中段の胴側出口管台よりCCDカメラを挿入し、出口管台付近の胴側内部を観察した結果、特に異常は認められなかった。
再生熱交換器下段の支持脚と架台の拘束状態の調査や熱交換器胴本体の超音波探傷試験による健全性調査を引き続き実施する。
(3) その他
再生熱交換器の製造履歴調査として、熱交換器の製造・組立過程の調査を行うとともに、材料検査証明書、非破壊検査記録、組立記録等の品質管理の記録を調査した結果、特に問題は認められなかった。
割れは内面からの疲労割れによるものと推定されたことから、今後は、発生応力評価や疲労評価等の解析評価を行うとともに、解析評価結果の確認などのために実機模擬試験(モックアップ試験)の実施する。また、運転履歴や保修履歴についても調査を実施する。なお、解析評価等にあたっては、特に、割れを発生させ得るような定常応力および変動応力の作用、熱交換器の構造による影響等について詳細な検討を行う。