1. |
発電所における調査状況 |
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(1) |
再生熱交換器本体の調査 |
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再生熱交換器(中段)の抽出側出口管台付近の本体胴について超音波探傷試験において、欠陥と判断される信号指示が内面で確認されたため、当該部を切断し、切断した胴および鏡板について内面の浸透探傷試験を実施した結果、胴内面に熱疲労割れに特有の亀甲状の指示が多数確認された。今後、切断した一部を試験施設に搬出し、外観観察等の詳細調査を実施する予定である。 |
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また、切断後、内筒第2支持リングと胴内側の間隙を測定した結果、上下方向、水平方向とも本体胴の内径に対して約3mmの間隙が計測された。 |
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(2) |
再生熱交換器下段の支持脚と架台の拘束状態の調査 |
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再生熱交換器下段の支持脚と架台の拘束状態の調査を行った結果、問題となる拘束はなく、支持脚はほぼ予測どおり移動することが確認された。 |
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2. |
試験施設での調査状況 |
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当該エルボおよび管台から引張り試験片を切出し、試験を実施した結果、耐力等の機械的性質は規格値内に入っており、異常のないことが確認された。 |
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管台サーマルスリーブは、周方向で内面の色合が異なっていたことから、酸化膜厚さを測定した結果、酸化膜厚さに有意な差があることが認められた。このことから、サーマルスリーブの周方向で温度が異なっていた可能性があると考えられる。 |
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3. |
流動模擬試験、解析評価等の概要 |
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これまでの調査の結果、今回の損傷原因は、熱疲労割れであると推定される。このため、損傷部には、定常的に作用する「平均応力」と温度変動で生じる「変動応力」が作用していたことが考えられ、平均応力については、応力解析や実測値から評価し、変動応力については、破面観察の結果や再生熱交換器内部の流動状況を模擬した試験の結果等を踏まえ、解析評価を実施している。 |
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(1) |
上段熱交換器から流れ込んだ抽出水(約250℃)は、内筒内を流れる主流と、内筒支持リングと胴本体との隙間を流れるバイパス流とに別れ、下段側への出口部で合流(約200℃)し、連絡配管内を流れ込む。バイパス流の比率は、実際の運転データ等から約40%(設計目標値約23%)と評価され、合流部の主流とバイパス流との温度差は約80℃(設計目標値約65℃)と評価された。 |
(2) |
現在、再生熱交換器内部の流動模擬試験を実施中であるが、これまでに実施した予備的試験の結果では、バイパス流が存在するため抽出水出口付近に温度変動(高温水と低温水が混合する際の温度ゆらぎ)が認められている。
また、バイパス流の流れにより、再生熱交換器胴に対し内筒支持リングを下に偏心した状態では、胴内部下部に低温領域が生じ、上に偏心した状態では、低温領域が解消されるという現象が確認され、再生熱交換器内部の流動状況についても内筒支持リングの上下位置によって異なることが確認されている。
このことから、内筒支持リングが再生熱交換器胴本体に対し下に偏心すると、低温領域が生じて胴本体が熱変形するが、これにより、内筒支持リングが上に偏心していくことで、低温領域が解消され、胴本体の変形が元に戻り、内筒支持リングが再度下に偏心することが考えられる。すなわち、胴本体の変形により、内筒支持リングが胴本体に対して上下に繰り返し偏心することにより流動状況が変化し、温度分布が変化(スイッチング現象)したと推定されている。 |
(3) |
今後、バイパス流量や内筒支持リングの隙間を変化させて試験を実施し、再生熱交換器内部の流動状況の確認や各部の温度計測を実施する。また、模擬試験でのデータをもとに、さらに詳細な熱流動解析、応力解析、熱変形解析、疲労解析等を実施し、再生熱交換器内部で発生する温度変動(スイッチング現象)やその結果生じる各部の変動応力を評価するとともに、今回のような損傷が発生し得るか、検討、評価する。 |
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4. |
再発防止対策についての検討 |
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現在進めている原因調査結果を踏まえ、以下の項目等について再発防止対策の検討を行う。 |
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設計・施工 |
・・・ |
大きな温度変動が発生しにくい構造への改善等 |
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保守 |
・・・ |
亀裂の早期発見方法(点検・検査の充実等) |
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運転管理 |
・・・ |
漏えい量を最小限化するための運転方法(漏えい箇所絞り込みのための監視方法の充実等) |
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技術開発の推進 |
・・・ |
検査技術の高度化等 |
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5. |
今後の方針 |
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再生熱交換器一式については、今後の原因調査を踏まえ、新しく設計・製作したものに取替えることとし、本年12月から予定している第10回定期検査については、開始時期を早めて実施する計画である。 |