[記者発表][平成11年度9月]−[17日15時記者発表] 原子力安全対策課
高速増殖原型炉もんじゅの平成10・11年度設備点検の終了について(11−90)

 このことについて、核燃料サイクル開発機構から下記のとおり連絡を受けた。

 高速増殖原型炉もんじゅ(高速増殖原型炉;定格出力28.0万kW)は、平成7年12月8日に発生した、2次主冷却系ナトリウム漏えい事故のため停止しているが、設備・機器の保安確保のため、平成10年9月28日より実施してきた設備点検は、本日9月17日にて計画された点検作業を終了する。

 今回の設備点検では、毎年実施している安全保護系計器等の点検、1次および2次主冷却系主循環ポンプの点検、ディーゼル発電機設備の開放点検等を実施した。
 また、設備保全の観点から、本設備点検期間中においては、排水モニタの増設工事や炉外燃料貯蔵設備予熱制御システムの改善工事等について実施し、終了した。設備点検後も、空調用冷媒設備の代替フロン化工事、制御盤内電装品の交換工事、燃料出入機用給電ケーブルの交換工事等を引き続き実施する。
 さらに、安全総点検やトラブル等により指摘され、今後恒久的対策を実施する工事として、微調整棒駆動機構荷重増加調査工事、ナトリウム・水反応収納設備への閉止板取付工事、および1次アルゴンガス系圧力損失増加対策工事がある。

1. 設備の点検
設備 点検内容
計器の点検 安全保護系や放射線モニタ関係の計器類について、点検校正を行い、異常のないことを確認した。
1次主冷却系設備 1次主循環ポンプ(A)の軸封部のメカニカルシール分解点検等を行い、異常のないことを確認した。
2次主冷却系設備 2次主循環ポンプ(A,B)のメカニカルシール分解点検、ポニーモータ分解点検、補助冷却設備の空気冷却器(B)、空気冷却器用送風機(B)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
1次アルゴンガス系設備 圧縮機(A,B)の分解点検等を行い、異常のないことを確認した。
原子炉補機冷却水系設備 原子炉補機冷却水ポンプ(C3)の分解点検、熱交換器(A,B,C1,C2)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
原子炉補機冷却海水系設備 原子炉補機冷却海水ポンプ(A,C1)の分解点検、海水ストレーナの開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
機器冷却系設備 ポニーモータ冷却ユニット(A)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
制御用圧縮空気設備 空気圧縮機(A,B)の分解点検、空気除湿装置除湿塔(A,B)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
放射性廃棄物処理設備  気体廃棄物処理系廃ガス圧縮機(A,B)の分解点検、液体廃棄物処理系廃液加熱器(A,B)および廃液濃縮器(A,B)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
燃料取扱設備 燃料池水冷却浄化装置循環ポンプ(A,B)の分解点検等を行い、異常のないことを確認した。
工学的安全施設 原子炉格納施設機器搬入口の漏えい率試験、アニュラス循環排気装置ヨウ素用フィルタユニット(A)の開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
換気空調設備 中央制御室浄化フィルタユニットの開放点検等を行い、異常のないことを確認した。
ディーゼル発電機設備 ディーゼル発電機(A,B,C)の分解点検、起動用空気装置空気だめの開放点検等を行い、異常のないことを確認した。

2.

設備保全等の工事
(1) 設備点検期間中に完了した工事
a. 中央計算機の機能強化(図−1参照)
 中央計算機の運転監視支援機能の強化を図るため、データ伝送装置およびデータ収録装置を増設した。これにあわせて、西暦2000年問題対応としてソフトの改造も実施した。
b. 炉外燃料貯蔵設備予熱制御システムの改善工事(図−2参照)
 燃料取扱設備計算機が停止した場合にも、炉外燃料貯蔵設備の予熱ヒータの電源制御が可能なようにバックアップ用の計算機を設置するとともに、外部電源喪失時において小口径配管内でのナトリウム凍結防止を図るため、小口径配管の予熱ヒータについては、非常用電源から給電するように変更した。
c. 排水モニタの増設工事(図−3参照)
 建設所から放出される排水中の放射能濃度を連続的に測定、監視する排水モニタについて、系統配管(海水配管)中で貝が付着・成長して、系統を閉塞し、点検・清掃が必要になった場合にも、連続測定が可能になるよう、排水モニタ1系統を追加設置し、2系統とした。
d. 原子炉補機冷却海水系配管の交換工事(図−4参照)
 原子炉補機冷却海水系配管(3系統)のうち、放水ピット直前の配管については、放水ピットからの海水飛沫により配管外表面の腐食が進行していたことから、外表面に防食性の高い塗料を施した配管に交換した。
e. 取水口部の浚渫(しゅんせつ)(図−5参照)
 もんじゅの取水口前面の砂の堆積量が年々増加し、冷却水の取水機能に影響が生じる可能性があることから、取水口前面の浚渫を実施した。

(2)

設備点検後も引き続き実施する工事
a. 制御盤内電装品の交換(図−6参照)
 ナトリウム漏えい事故に伴い、エアロゾルの付着のあった制御盤については、清掃を実施するとともに点検を行い、健全性を確認しているが、信頼性確保の観点から、制御盤内での基盤およびリレー等の電装品の交換を計画的に実施している。2次系ナトリウムの温度や液位の監視等を行っている制御盤について、平成10年度は7面、平成11年度は8面を交換する。
b. 直流無停電電源設備の供給電源多様化および蓄電池の更新(図−7参照)
 直流無停電電源設備の安全保護系電源3系統について、充電器への供給電源の多様化を図るため、現在、電源供給している非常用母線に加え、常用母線からも電源供給できるよう改造する。
 また、同設備の蓄電池について計画的に取り替えることとし、今年度は一般系電源と計算機用電源、次年度以降に安全保護系電源3系統を取り替える。
c. 交流無停電電源切替盤改造(図−8参照)
 交流無停電電源設備のメンテナンスや故障時には、バックアップとして非常用母線からの電源供給に切り替えるが、この切替操作時にはスイッチの切替動作時間分だけ瞬時停電となることから、一般系1系統の電源切替器を無停電電源切替器に改造する。
d. 空調用冷媒設備の代替フロン化(図−9参照)
 環境対策(オゾン層保護)のため、空調用冷媒設備の冷凍機3台のうち1台について、冷凍機の冷媒として使用しているフロン(R−11)を代替フロン(R−123)に変更した。また、他の2台について、今年度と来年度に分けて順次実施する予定である。
e. 燃料出入機用給電ケーブルの交換(図−10参照)
 平成8・9年度設備点検において、燃料出入機走行台車給電装置のキャプタイヤケーブルの一部で、シース表面に微小な割れが確認されており、今後、ケーブルの絶縁低下が懸念されるため、ケーブル全数を新品と交換する。
f. 第2管理棟裏の土砂崩れに対する恒久的対策(図−11参照)
平成10年9月に集中豪雨のため、第2管理棟の裏山で土砂崩れが発生し、応急措置として土砂崩れが発生した谷の止水堰に防護柵を設置しているが、恒久的対策として、止水堰の嵩上げするとともに、崩壊部の法面保護、斜面の安定対策を兼ねた緑化対策を実施する。
(3) 安全総点検やトラブル等により指摘され今後恒久的対策を実施する工事
a. 微調整棒駆動機構荷重増加調査工事(図−12参照)
 微調整棒駆動機構(3基)については、総合機能試験時より駆動荷重の増加が確認されていることから、原因調査として、駆動機構上部案内管部の分解調査を実施した結果、遮へい体と駆動軸の間隙でナトリウム化合物の付着が確認された。
 駆動荷重増加の原因は、ナトリウム初期充てん時のナトリウム中酸素濃度が高い時期に、原子炉容器ナトリウム液位の上昇操作を行ったため、上部案内管部遮へい体と駆動軸の間隙にナトリウム化合物が付着、その後、駆動機構の挿入・引抜操作によって、ナトリウム化合物の付着量が増加し、駆動軸と遮へい体間で干渉するに至ったためと推定された。
 今後、再発防止対策の検討を行うが、原子炉容器上部の駆動機構上部案内管部の引き抜き後の孔については、当面の措置として、仮設のプラグにより閉止した。
c. ナトリウム・水反応収納設備への閉止板取付 (図−13参照)
 平成10年3月にAループ過熱器用圧力開放板の計画的取替作業のため、開放板を取り外したところ、開放板の下流側にナトリウム付着物が確認されたため、当該開放板の詳細調査を実施した結果、3層構造のうち、中央層のディスクに貫通割れが3箇所認められ、破面観察の結果いずれも粒界割れであった。また、割れ近傍には、開放板製造時に表面研磨に使用するガラスビーズの付着が認められ、割れの原因はガラスビーズに含まれていた湿分とナトリウムの反応により水酸化ナトリウムが生じたことにより、応力腐食割れが発生したものと推定された。
 当該圧力開放板については、現在、水・蒸気系が長期保管状態(窒素充填保管)にあり、破裂機能が要求されていないことから、当面の措置として、AおよびBループの過熱器および蒸発器圧力開放板について、低合金鋼製の閉止板と取り替えた。なお、Cループについては、ナトリウムをドレンした状態を継続すること、CCDカメラによる開放板の外観観察の結果異常が認められていないことから、当面現状を維持することとした。
d. 1次アルゴンガス系圧力損失増加対策工事 (図−14参照)

 性能試験中の平成7年10月以降、1次アルゴンガス系ベーパートラップ出口と圧縮機サージタンクとの間の差圧増加が確認されたことから、同系統を開放して点検調査を実施した結果、差圧増加の原因は、ベーパートラップで除去しきれなかった微少なナトリウム蒸気の粒子が、弁や常温活性炭吸着塔入口配管メッシュ部等の狭隘部に付着し、系統のアルゴンガス流路を閉塞したためと推定された。
 付着していたナトリウム粒子については清掃・回収し、系統を復旧しているが、今後、再発防止対策として、ベーパートラップ出口に焼結金属を使用したフィルタ2基および高性能フィルタ(HEPAフィルタ)を1基設置するとともに、高性能フィルタの再生用のアルゴンガス供給ラインを設置する。


平成10・11年度設備点検工程実績工程
設備保全等工事工程