[記者発表][平成11年度10月]−[25日14時記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の1次冷却水の漏えいについて(原因と対策について)(11−107)

 このことについて、資源エネルギー庁および日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力116.0万kW)は、定格出力運転中の7月12日、格納容器内で1次冷却水の漏えいが発生したと判断し、6時48分に原子炉を手動停止した。その後の格納容器内の立入調査で、化学体積制御系再生熱交換器の抽出側連絡配管部で漏えいが確認されたため、同日20時16分に抽出系統の隔離操作を行い、漏えいを停止した。
 なお、本事象に伴う周辺環境への放射能の影響はない。

[原因調査の概要]
 漏えいが確認された連絡配管部および再生熱交換器胴本体について、発電所および民間試験施設にて詳細調査を実施した結果、貫通割れを含め、割れが多数確認され、割れの破面観察の結果、ビーチマークや組織状模様、ストライエーション状模様などの疲労割れの特徴が確認された。
 また、損傷原因として、再生熱交換器本体胴内部の構造に起因して、高サイクル熱疲労が発生したと推定されたことから、損傷メカニズムの確証のため、流動模擬試験および解析評価を実施した。
[推定原因]
 原因調査の結果、再生熱交換器本体胴内部の構造およびバイパス流量の影響で、バイパス流のフローパターンが周期的(約500秒)に変動する現象が発生し、それにより主流出口部でのバイパス流との混合が周期的に変動し、これが連絡配管へも影響し、この変動により発生する熱応力と、高温水(バイパス流)と低温水(主流)の混合に伴う温度ゆらぎ(数秒〜20秒周期)による応力が重畳することにより、連絡配管および胴部で高サイクル熱疲労割れが発生したと推定された。<平成11年7月12、13、16、19、22日、8月2、12、13、30日、10月7日記者発表済>
[対策]
国においては、以下の対策をとりまとめ、各電力会社に対して再発防止対策の実施等を指示した。
(1) 技術基準の改正(高サイクル熱疲労による損傷防止の規定を追加)
(2) 検査の見直し
a. 内筒付きの再生熱交換器については、5年毎に超音波探傷検査を実施
b. 高サイクル熱疲労を考慮した検査範囲の拡大
c. 念のため、第3種管に関する検査の充実(格納容器内の第3種管のうち第1種管(1次冷却系主配管など)と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている部分については、第1種管並みに超音波探傷検査を実施)
(3) 漏えい量を少なくするための監視機能の充実や運転手順書の整備
(4) 除染作業の機械化等
(5) 検査手法等の高度化
なお、敦賀2号機においては、以下の対策を実施する。
(1) 再生熱交換器の取替え
 敦賀2号機の再生熱交換器については、内筒を有しない構造の熱交換器に取替える。設計にあたっては、念のため、温度差が生じる可能性のある箇所について温度評価を実施する。製作にあたっては構造・強度上確認すべき寸法に加え、性能上確認すべき寸法を確認する。また、試運転に際しては再生熱交換器の性能評価に加え、熱交換器胴および連絡配管の温度の確認を行う。
(2) 検査の充実
a. 高サイクル熱疲労割れの発生防止
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例としては、高温・低温水の合流による温度変動が原因のものと、熱成層による温度境界面の変動が原因のものがあり、これらの事例を十分踏まえ、類似対象箇所を抽出し、健全性確認のため、今後計画的に点検を実施する。
b. 格納容器内第3種管の検査の充実
 設備の健全性確認という観点から、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている範囲の点検を強化する。具体的な箇所としては、化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管から再生熱交換器までの範囲が該当するため、これらについて従来の供用期間中検査に加え、超音波探傷検査を第1種管並みの頻度で実施する。
(3) 運転管理面の改善
 格納容器内で発生する1次冷却水漏えい事故時において、漏えい量をより一層低減するため、漏えい箇所の早期特定のための監視方法の充実を図るとともに、漏えい箇所の隔離や原子炉の停止・冷却に関する運転手順の整備を図る。また、漏えい量把握のための評価手法の整備を図る。
(4) 被ばくの管理[作業性の改善]
 除染作業による被ばく線量低減のため、除染作業等における作業性の向上策として、自動除染装置や化学除染装置の技術開発に取組む。
(5) 検査手法の高度化
 超音波探傷検査等の、非破壊検査技術の高度化の観点から、自動化適用範囲の拡大、異種金属溶接部等の欠陥検出精度の向上等の改善に向け、従来からの取組みに引き続き、実機適用に関して積極的に取組む。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル