[記者発表][平成11年度10月]−[27日10時資料配布] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の1次冷却水の漏えいについて(11−108)

1. 本年7月12日に発生した敦賀2号機の一次冷却水漏えい事故について、県は、発生翌日に日本原子力発電株式会社に対し、徹底的な原因究明と抜本的対策の実施、安全性・信頼性の向上を図るための最大限の取組みを申し入れたところであるが、本日、申し入れに対する回答として、日本原子力発電株式会社より、原因究明の結果や再発防止対策等の検討結果について、別紙のとおり報告を受けた。

1.

報告では、再生熱交換器を最新設計のものに取替えることや定期検査の充実を含めた再発防止対策を講ずることとし、第10回定期検査を11月下旬から実施するとしている。

1.

県としては、去る10月25日にとりまとめられた国の最終報告や、本日の報告内容について、今後、県議会や県原子力環境安全管理協議会において説明を受けることとしており、県議会での議論や地元敦賀市の意見等も十分踏まえ、慎重に対応してまいりたいと考えている。



(別紙)

平成11年10月27日
福井県知事
栗田 幸雄 殿
日本原子力発電株式会社
取締役社長 鷲見 禎彦

敦賀発電所2号機の一次冷却水漏えい事故について(回答)


 拝復 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 当社事業運営につきましては、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 この度の、敦賀発電所2号機一次冷却水漏えい事故の発生につきましては、福井県の皆様をはじめ多数の方にご迷惑をおかけし、また原子力発電に対する信頼を損なうこととなりましたことは誠に申し訳なく、改めて深くお詫び申し上げます。
 当社といたしましては今回の事故を厳粛に受け止めるとともに、平成11年7月13日付け貴信原第303号でお申し入れのあった主旨を十分に踏まえ、全社を挙げて徹底した原因究明を行うとともに、再発防止対策及び信頼性向上に向けた取組みについて積極的に検討して参りました。
 これらの原因調査結果や再発防止対策等につきましては、去る10月25日に通商産業省から原子力安全委員会にご報告され、同委員会のご了承を受けているところでございますが、当社といたしましては、今回ご報告した対策について、11月下旬から開始する定期検査で確実に実施していきたいと考えております。
 今後とも、原子力発電の安全確保に万全を期すとともに、的確な通報連絡及び情報公開の推進等に最大限努力し、県民の皆様の信頼回復に尚一層努める所存でございますので、引き続きご指導賜わりますようお願い申し上げます。

敬具



(別紙)

敦賀発電所2号機一次冷却水漏えいに係る原因調査、再発防止対策等について

1. 漏えい原因の究明
 今回の事故は再生熱交換器連絡配管に割れが発生し、一次冷却水漏えいが生じたものであるが、原因究明に係る調査については、再生熱交換器中段から下段への抽出側連絡配管上流側エルボおよび再生熱交換器中段胴本体の損傷要因を明らかにするため、発電所及び民間調査機関において損傷状況調査として、破面等の詳細観察等を実施するとともに、設計、製造から運転に至るまで、幅広い観点から調査を実施した。これらの調査結果から原因は再生熱交換器の内部構造に起因した高サイクル熱疲労と推定されたため、再生熱交換器内の流動状況把握等のための模擬試験や応力解析等を実施した。尚、調査については通産省等関係機関のご指導を得つつ、原子力安全委員会において審議をいただいた。
 調査の結果、当該連絡配管上流側エルボおよび再生熱交換器中段胴本体の損傷原因は、内筒内を流れる主流(低温水)と内筒の外側を流れるバイパス流(高温水)が合流する部位である胴本体及び連絡配管に周期的に温度が変化する現象が発生し、高サイクル熱疲労割れが発生したものと考えられる。

2.

対策
 原因究明結果を踏まえ、以下の対策を実施する。
(1) 再生熱交換器の取替
 今回の第10回定期検査において、再生熱交換器については内筒を有しない構造のものに一式取替える。新再生熱交換器の設計・製作にあたっては品質管理面での充実として構造・強度や性能上重要な寸法等の確認を行う。また、試運転に際しては再生熱交換器各部の温度変動測定や運転パラメータの確認を行い、性能評価、設計考慮事項の検証等異常のないことの確認を行う。尚、取替えに際しては、電気事業法に基づく手続きを行い、国の審査を受ける。

(2)

定期検査の充実
a. 高サイクル熱疲労に対する点検の充実
 今回発生した高サイクル熱疲労は、内筒を有する再生熱交換器内での高温水と低温水の混合による温度変動が原因であった。このため、高サイクル熱疲労について国内外の損傷事例を調査した結果、今回のような温度差の混合による変動が原因のものと、温度差の成層化とその変動によるものがあることが判明している。
 これらの知見を十分踏まえ、発電所内の主要機器について、高サイクル熱疲労損傷の可能性を調査した結果、現時点で同様な損傷が発生するおそれはないと考えているが、国内外の損傷事例の類似箇所も含め、今後とも超音波探傷検査を計画的に実施するなど、健全性の確認に努めることとする。
 なお、今回の定期検査では、海外での余熱除去系の高温水と低温水の混合によると推定される損傷事例に鑑み、上記のものも含め同様の類似箇所について、超音波探傷検査を実施する。
b. 定期検査における検査の充実
 法律に基づく技術基準において、1次冷却水が流れる原子炉圧力バウンダリは第1種機器とされ、今回漏えいした箇所は、プラント運転中1次冷却水と同じ圧力・温度の系統であるが、設備的には原子炉圧力バウンダリとは隔離できることから第3種機器に分類されている。一方、供用期間中検査においては、これら機器の区分と配管等の口径により検査内容や頻度が定められている。これに基づき、今回の再生熱交換器胴は体積検査(超音波探傷検査)を実施していたが、漏えいした連絡配管は口径が小さいことから漏えい検査だけであった。
 今回の事故では、これらの第3種機器の比較的広い範囲で熱疲労損傷が発生していたが、これらの損傷が供用期間中検査で検知できなかったことを十分反省し、以下の点検強化を図る。
プラント運転中に1次冷却系統と同じ圧力・温度の流体が流れる格納容器内の化学体積制御系(抽出・充てん系)の1次冷却系統から再生熱交換器までの範囲の第3種管について、今後の定期検査において1種管並の頻度で溶接部の体積検査(超音波探傷検査)を計画的に実施し、配管の健全性を確認する。
これら第3種管の供用期間中検査の改善策を踏まえ、民間規程として定めている「軽水型原子力発電用機器の供用期間中検査」の内容等の見直しに係る検討を今後実施していく。
(3) 運転管理面での改善
 格納容器内での一次冷却水漏えい発生時の漏えい箇所の早期特定、漏えい量の抑制のための改善を以下のとおり実施する。
漏えい箇所の早期特定のため、監視カメラの増設、化学体積制御系に係る流量・温度等の運転パラメータの記録機能の拡充を行う。
漏えい量をより一層抑制するため、隔離が可能な系統については隔離のための手順書を整備する。
隔離が出来ない系統も含め、一次冷却水漏えい時における原子炉停止判断の明確化・冷却時間の短縮を図るため、非常時運転手順書の整備を実施する。
(4) 放射線被ばくの低減
 今回のような事故時に限らず定期検査時や通常運転時の除染作業における作業性の向上と被ばく線量の低減を図るため、自動除染装置や化学除染装置の技術開発に取り組む。

(5)

検査手法の高度化
 超音波探傷検査等の非破壊検査技術の高度化の観点から、自動化適用範囲の拡大、異種金属溶接部等の欠陥検出精度の向上等に向けた技術改善策について、従来からの取組みを着実に進め、早期に実機適用出来るよう積極的に取り組む。

3.

通報連絡と情報公開
(1) 通報連絡の充実
 事故発生時の第1報の迅速な通報連絡はもとより、第2報以降の通報連絡についても関係機関に的確に情報提供出来るよう事故時の通報連絡体制を見直し、連絡デスク内各担当の役割分担を明確化するとともに日常の通報連絡訓練等を通じて充実を図っていく。
(2) 情報公開の推進と信頼回復への取組み
 情報公開については、原因・調査状況、対策等について適宜通産省等関係機関に報告するとともに情報公開に努めてきた。今後とも理解を得やすい公表に努めていく。
 また、今回の事故による地元のイメージ回復のため、きらめきみなと博等への協力を通じて、全社をあげて地域のイメージ回復に努力してきた。更に、理解活動として事故発生の状況や調査状況を地元地区説明会の実施等を通じ地元の皆様への広報活動を行ってきた。
 今後とも引続き、訪問対話活動等を計画的に実施するなど地域の信頼回復に向け不断の努力を続ける。
以上

再発防止対策の概要
化学体積制御系からの漏えいに係る対策実施工程

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