[記者発表][平成11年度11月]−[30日11時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の原子炉起動について(11−124)

 このことについて、核燃料サイクル開発機構から下記のとおり連絡を受けた。

 なお、今回の圧力管シールプラグのシール機能低下事象発生時において、関係自治体等への通報連絡が遅れたことについて、県は、去る10月29日に、ふげん発電所長に対して口頭で注意したところであるが、このことについて、本日、サイクル機構より別添のとおり改善策の報告があった。
 県としては、サイクル機構に対し、今後とも安全協定の本旨である通報連絡の徹底を図るとともに、引き続き全職員一人ひとりの意識改革に努め、県民の信頼回復に積極的に取り組むよう要請した。

 
1. 圧力管シールプラグのシール機能低下に伴う原子炉手動停止(添付1添付2
 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)は、全出力運転中の平成11年10月27日22時38分、圧力管下部に装着しているシールプラグのシール機能が低下したことを示す「リーク検出器漏洩量極大(設定値1200cc/h)」警報が発信したが、リーク検出器の水位に変化は認められず、その後同警報はリセットされた。
 念のため、各圧力管毎にシールリーク検出器によりシール部からの漏えい量を確認した結果、「グループ9」で漏えい量の増加が検出された。このため当該グループの監視を継続していたところ、10月28日4時19分、「リーク検出器漏洩量大(設定値300cc/h)」の警報が発信し、その後も断続的に警報の発信した。
 その後、シール機能が低下した圧力管(シールプラグ)1体からの漏えいが特定されたことから、当該圧力管シールプラグの点検調査を実施するため、同日18時2分より出力降下を開始し、20時25分に発電を停止した。
 本事象による環境への放射能の影響はない。
[点検調査結果]
(1) 当該圧力管のシールプラグについて外観観察や分解調査を実施した結果、漏えいの跡と推定される付着物や通常観察される面荒れはあるものの、漏えいの原因となるような傷などは認められなかった。
(2) 当該圧力管に、予備のシールプラグを装着し、予備耐圧試験(圧力約70kg/cm2)を行ったところ、シール部からの漏えいが確認されたため、圧力管内面について、詳細な観察を行った結果、シールプラグのシールエレメント(第一次シール部)との当たり面に縦方向に長さ約3mmの微小な傷が確認された。
(3) 圧力管内面やシールプラグの付着物を調査した結果、通常認められる数μm〜700μmの粒径の鉄やジルコニウムの酸化物(クラッド)が確認された。
(4) 最初に発信した「リーク検出器漏洩量極大」警報発信の原因は、水位検出器に貯まっているシール水は所定の水位となると自動的に排出されるが、この排出時の水位変化(絶対値)を検出し警報を発信したものと推定された。
[推定原因]
 以上の調査結果から、前回(第15回)定期検査において、当該圧力管にシールプラグを装着した際、比較的大きなクラッド等の異物が圧力管シール面とシールプラグのシールエレメントの間にかみ込み、圧力管シール面に微小な傷が発生したためシール機能が低下し、シール漏えい量が増加したものと推定された。

[対策]
(1) 当該圧力管内面のシール面を研磨し、予備のシールプラグにて、漏えいのないことを確認した後、当該圧力管に燃料集合体および所定のシールプラグを装着し、漏えい試験にて健全性を確認した。
(2) 「シールリーク検出器」の水位検出器については、今回の事象を踏まえ、水位が増加した場合のみ発信するようプログラムを修正した。[平成11年10月28日、11月5日、18日 記者発表済]
(3) シールリーク量の漏えい量監視強化のため、監視強化基準値(設定値100cc/h)を設定し、基準値を超えた場合にはシールリーク量を連続印字し、監視強化を図ることとした。また、「リーク検出器漏洩量大(設定値300cc/h)」警報が発信した場合には、プラントを停止して原因調査・復旧作業を行うこととし、運転手順書を見直した。
なお、次回計画停止時に監視機能強化のため「漏洩量注意(設定値100cc/h)」警報を追加設置することとした。

2.

急速注水系定期試験時の不具合[国の取扱い:通達に基づく報告対象](添付3添付4
 圧力管シールプラグ機能低下に伴う原子炉手動停止中の11月18日に、非常用冷却系の急速注水系蓄圧器出口弁の定期試験を行ったところ、B−蓄圧器出口弁が開動作しなかった。本事象による環境への放射能の影響はない。
[点検調査結果]
 調査の結果、当該出口弁本体の単体の開閉動作には問題なかったが、弁の開閉制御のための電磁弁は正常に動作しないことが確認された。
 今回開動作しなかった蓄圧器出口弁は、通常、出口弁本体の駆動ピストン内に蓄圧器の窒素圧力がかかって「閉」状態であるが、「開」の電気信号により、電磁弁内の鉄心(プランジャー)が可動し、この窒素が排出されることで出口弁がバネ力により「開」となる機構である。
 当該電磁弁を詳細調査した結果、電気信号により可動する鉄心の表面で廻り止め用として施工したポンチ部に小さな凸が認められるとともに、駆動ピストン内の窒素を排出させる機構部が正規の位置まで動作せず、窒素が排出されてない状態にあったことが確認された。

[推定原因]
 原因は、前回定期検査時に当該電磁弁の分解点検を実施したが、その際、鉄心の廻り止め施工後の管理が不十分で表面に小さな凸が生じ、今回の定期試験時においてこの鉄心の凸が電磁石の内筒と干渉し、正常な位置まで可動しなかったため窒素が排出されず出口弁が開動作しなかったものと推定された。

[対策]
 対策として、当該電磁弁については、分解点検時の点検要領書を改正し、鉄心表面を平滑に仕上げ、内筒との干渉がないことを確認することとした。なお、ふげん発電所内にある同型の電磁弁について、鉄心の表面状態を確認するとともに、弁の作動試験を行い、正常に動作することを確認した。
<急速注水系>
 急速注水系は、一次冷却系の大破断事故の冷却水喪失時に、原子炉に水を急速に注水する系統で、A、B、2系統から構成されている。

 以上の対策が完了したことから、本日18時頃に原子炉を起動し、臨界とした後、明日12月1日13時頃に発電を再開する予定である。