[記者発表][平成12年度3月]−[9日17時記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所2号機の第6A高圧給水加熱器ドレン流量増加の原因と対策について(12−109)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、本年 1月13日から第19回定期検査を実施中で、3月2日から調整運転を開始し、電気出力上昇中のところ、3月4日20時35分頃、蒸気発生器に2次冷却水を供給している給水系(2系統)のうち、A系統にある第6A高圧給水加熱器のドレン(凝縮水)流量の上昇が認められた。
このため、出力上昇操作を停止し、2次系の各種パラメータを監視し、高圧給水加熱器の伝熱管漏えいの可能性があると判断されたため、出力降下を開始し、22時17分に電気出力75%とし点検・調査を行うこととした。
 なお、今回の事象による環境への放射能の影響はない。[平成13年3月5日 資料配付済]

1. 調査結果
(1) 事象発生時の関連パラメータの確認
 出力上昇操作停止時(約91%出力時)における第6A高圧給水加熱器の関連パラメータを確認したところ、
ドレン流量は、通常(約340t/h)より多い値(450t/h以上)を示していた。
ドレン温度は、通常(約170℃)より高い値(約209℃)を示していた。
ドレン水位は、通常水位レベルに比べ約20〜30o高い位置を示していた。
ドレン水位制御弁は全開状態であった。

 なお、これらのパラメータは、電気出力を75%に戻した時点では、その電気出力における通常値に戻っていた。
(2) 伝熱管の漏えい試験の結果
 第6A高圧給水加熱器の胴側を空気により加圧し、伝熱管の漏えいを点検したところ、伝熱管には漏えいがないことが確認された。
(3) 関連機器の調査・点検結果
 第6A高圧給水加熱器のドレン流量を制御する水位計や水位制御弁等を点検した結果、異常は認められなかった。
(4) ドレン水への加熱蒸気混入の可能性調査結果
 第6A高圧給水加熱器の伝熱管やドレン流量制御機器等に異常が認められなかったことや、ドレン温度が通常より高く、高圧給水加熱器の加熱蒸気と同程度の温度であったことから、ドレン水への加熱蒸気混入の可能性について調査を行った。
数値解析の結果では、
今回の定期検査で取り替えを行った当該高圧給水加熱器の内部構造は、取替前の高圧給水加熱器に比べ、加熱蒸気流入口直下の受衝板(*1)や伝熱管管群形状を変更しており、管群と胴の間の隙間が大きいなどの特徴に起因して、伝熱管と胴の間を下降してドレン水面に達する加熱蒸気の速度が大きいまま水面に達して水面を押し下げる。
また、電気出力の上昇に伴い、加熱蒸気の速度は大きくなり、水面を押し下げる力も強くなる。約85%出力以上になると、ドレン水面はドレン冷却室(*2)のドレン吸込み口を下回る位置まで低下することがわかった。

(*1) 受衝板 給水加熱器内において、加熱蒸気流入面に位置し、蒸気流入による伝熱管への衝撃を緩和するもの。
(*2) ドレン冷却室 ドレン水を冷却させるため加熱器内に設けられた部屋
2. 推定原因
 第6A高圧給水加熱器は、今回の定期検査で伝熱管管群および受衝板の形状を変更したことにより、管群と胴の間を流れる加熱蒸気の速度が大きくなったことにより、出力上昇に伴いドレン水面が押し下げられ、ドレン冷却室に加熱蒸気が巻き込まれたものと推定された。
 また、ドレン量が増大した理由は、ドレン水に加熱蒸気が混入したことにより流量計での差圧が上昇したため(*3)、見かけ上流量計の指示が上昇したものと推定された。
(*3) 流量計の計測方法 配管内で部分的に狭められた流路の前後で差圧を測定し、演算処理により流量を求める。
3. 対策
 ドレン水への加熱蒸気の混入を防ぐため、第6A高圧給水加熱器のドレン水位の設定水位を現在より80o高く設定する。
 また、これにともない水位計も80o上方に移設する。
 今後は、上記対策を実施した後、出力上昇を開始する予定である。
(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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系統概要図・6A高圧給水加熱器概要図・高圧給水加熱器構造図(断面図)
ドレン流量増加の推定メカニズム・対策実施状況図