[記者発表][平成12年度4月]−[20日14時記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所1号機のシュラウドサポート部損傷の調査状況について(12−9)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉;定格出力35.7万kW)は、平成11年8月20日から第26回定期検査を開始し、シュラウド取替工事を行っていたところ、12月9日、下部シュラウドサポート部の溶接部等に複数のひび割れが認められた。
 このため、切断保管していた上部シュラウドサポート部も含め、詳細な状況調査を実施した。その結果、ひび割れが認められた部位は、

a. 下部シュラウドサポート部と原子炉圧力容器との取付溶接部(内側)
b. 下部シュラウドサポート部と上部シュラウドサポート部(ステンレス材)との周溶接部
c. 下部シュラウドサポート部母材部(インコネル材平板)の縦溶接部
d. 下部シュラウドサポート部母材部に施工された溶接部や溶接部跡

に発生しており、これらひび割れ部位の表面組織観察(レプリカ観察)結果で、割れは溶接部の金属組織の結晶粒界に沿った特徴が観察された。また、b.の上部シュラウドサポート部外側にも一部ひび割れが認められるが、割れの殆どは、下部シュラウドサポート部の内側の溶接部であった。
 なお、本事象に伴う環境への放射能の影響はない。[平成11年12月10日、12月22日、平成12年2月8日発表済み]

[原因調査結果]
(1) ひび割れの詳細調査
各ひび割れ部の金属サンプル片等を採取し、破面観察、金属組織観察、材料分析等の調査を実施した結果、各部(a.b.c.d.)のひび割れは、それぞれの溶接部(インコネル材、一部ステンレス材)で発生しており、破面は溶接金属組織の結晶(柱状晶組織)粒界に沿った特徴が認められた。
下部シュラウドサポート部と原子炉圧力容器との取付溶接部(内側)のひび割れ(a.)全て(228箇所)について、段階的に研削し深さ測定を行った結果、ひび割れは、インコネル溶接部で原子炉圧力容器側と外側溶接部(上方)側にそれぞれ進展していた。
原子炉圧力容器側への進展は、インコネル肉盛溶接部と低合金鋼肉盛溶接部の境界部までで消滅しており、原子炉圧力容器(低合金鋼部)には達していなかった。
上方向への進展は、大半が内側溶接部を越え、外側溶接部内に達していた。外側溶接部表面は、研削前の検査では欠陥指示が認められなかったが、研削の過程で外側溶接部表面まで開口したものが6箇所あった。
b.d.で認められたひび割れのうち、内側から外側に貫通している4箇所について、破面上の酸化皮膜の厚さを測定した結果、内面側の方が外面側より厚く、割れは主に内面側から発生・進展したものと推定された。
b.c.d.のシュラウドサポート部母材部では、溶接部の割れが枝分かれし、母材(インコネルまたはステンレス材)組織でのひび割れも一部認められた。これらの破面上に付着していた酸化物の状況を調査した結果、母材部より溶接金属部の方が多く、割れは溶接金属部で発生した後、母材部へ進展したものと推定された。
母材および溶接部(インコネル材)の材料組成の分析結果や、ひび割れ近傍の硬さ測定の結果では、特に問題は認められなかった。
(2) 製造履歴調査
製造時の溶接施工や各種検査等の品質管理は全く問題なかった。
原子炉圧力容器は、完成後、工場で使用前検査として、最高使用圧力の1.5倍の圧力により耐圧試験を実施していた。
シュラウドサポートの製作手順を確認した結果、下部シュラウドサポート部母材部に施工された溶接部や溶接部跡(d.)のひび割れは、製作時に試験片採取後、当て板溶接補修した箇所や製作時に使用した変形防止冶具を仮付け溶接した跡で発生したものと推定された。
(3) 運転履歴調査
原子炉水の溶存酸素濃度は、平成9年以降は水素注入により10ppb以下に抑制されているが、水素注入を開始するまでの期間においては、200ppb程度であった。
(4) 応力解析評価結果
下部シュラウドサポートと原子炉圧力容器との溶接部(a.)について、応力解析評価を行った結果、溶接施工により、内側および外側の溶接部に周方向の引張り残留応力が生じる。
耐圧試験時の当該溶接部の変形挙動を解析した結果、外側溶接部が内側溶接部に比べ大きく変形することから、この変形を考慮した応力評価では、溶接施工により発生した残留応力は、外側溶接部の残留応力は緩和されるが、内側溶接部では比較的高い残留応力が残る結果であることが推定された。
運転中の内圧による応力と残留応力を含めて評価すると、内側溶接部が外側溶接部より高く約330MPaと評価された。
シュラウドサポート母材の縦溶接部では、製作時冷間加工している箇所があり、その部分では溶接による残留応力が緩和されていると推定された。
上部および下部シュラウドサポートの周溶接部(b.)について、応力解析を行った結果、定格出力運転中における周方向応力は、溶接による残留応力を含め内側で約410MPaと評価された。

[原因調査結果のまとめ]
 これまでの原因調査の結果から、シュラウドサポートのひび割れの原因は、シュラウドサポートの溶接部で、製造時に発生した残留応力が比較的高い状態で残り、この応力と運転中の内圧が重なり合い、溶存酸素を含んだ高温水の環境下におかれたことによって発生した、粒界型の応力腐食割れと推定される。
 今後は、原因調査結果を踏まえ、再発防止対策について検討する。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


シュラウドサポート構造
シュラウドサポートひび割れ発生状況の概要