[記者発表][平成12年度4月]−[24日11時記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所3号機の原子炉起動と調整運転開始について(第12回定期検査)(12−10)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所3号機(加圧水型軽水炉;定格出力87.0万kW)は、平成12年2月16日から、第12回定期検査を実施していたが、4月25日に原子炉を起動し、翌26日に臨界となる予定である。
 今後は諸試験を実施し、4月28日頃に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、5月下旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。

1. 主要工事等
(1) 原子炉容器照射試験片取出工事
 中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を定期的に把握するため、原子炉容器内部に設置している照射試験片を計画的に取り出した。
(2) 原子炉容器供用期間中検査等
 原子炉容器の供用期間中検査として、原子炉容器内の溶接部等について、超音波探傷検査を行ない、健全性を確認した。
 また、制御棒駆動装置キャノピーシール全数(169箇所)について、渦流探傷検査を実施し、健全性を確認した。
(3) 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事(図−1参照)
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため、工学的安全注入系の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能なように、余熱除去ポンプ出口配管と格納容器スプレイポンプ出口配管を接続した。
*1; アクシデントマネジメント対策
 設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。
*2; 工学的安全注入系の再循環注入モード
 1次冷却材喪失事故時、工学的安全注入系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水タンク水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。
(4) 発電機負荷開閉装置設置工事(図−2参照)
 所内電源の信頼性向上対策として、発電機と主変圧器の間に、発電機負荷開閉装置を設置した。

2.

蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果および抜管調査結果(図−3参照)
 蒸気発生器伝熱管全数(10,118本)について、渦流探傷検査を実施した結果、A−蒸気発生器で1本およびB−蒸気発生器で3本の計4本の伝熱管について、高温側管板内拡管部上部に、有意な欠陥信号が認められた。
 このため、信号が認められたB−蒸気発生器伝熱管1本について抜管調査を実施するとともに、伝熱管4本は、管板部で閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととした。[3月16日 記者発表済]
 抜管調査の結果は以下の通り。
伝熱管内表面について浸透探傷検査を実施した結果、伝熱管拡管部の上端近傍3箇所(機械式拡管の重なり部)で、軸方向最大長さ約4mmの損傷指示が認められた。
破面の詳細観察の結果、割れの最大深さは約0.76mm(管の厚み約1.27mm)であり、管内表面を起点とした1次側からの粒界割れであった。
管板内の伝熱管外表面を観察した結果、伝熱管の上部では、2次側水の浸入跡が認められたが、下部では浸入跡は認められなかった。
伝熱管の材料分析や金属組織調査等を行った結果、異常は認められなかった。
 以上の調査から、今回の損傷の原因は、製作時に伝熱管を管板部で拡管(液圧拡管後に機械式拡管)した際、機械式拡管がわずかに不十分であったことから、拡管の重なり部で伝熱管内面に引張りの残留応力が発生し、これと運転時の内圧とが相まって、内面から応力腐食割れが生じたものと推定された。

3.

燃料検査結果
燃料集合体全数157体のうち、49体を取り替えた。取替燃料のうち48体は、新燃料集合体である。
燃料集合体の外観検査(36体)を実施した結果、異常は認められなかった。

4.

敦賀発電所2号機事故を踏まえた点検(図−4参照)
 高浜発電所3号機の再生熱交換器は、内筒を有する構造であるが、流動模擬試験に基づく応力評価や実機の胴変位測定により敦賀2号機と同様の損傷は発生しないことが確認されている。
 また、今定期検査において、以下の点検を実施し、健全性を確認した。
(1) 再生熱交換器の点検
 中間胴本体抽出水出口付近母材部(第1、2支持リング間1箇所)、連絡管溶接部、及び連絡管エルボ母材部(36箇所)について、超音波探傷検査を実施した。
(2) 検査の充実
高サイクル熱疲労割れの点検
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例を踏まえ、高温・低温水の合流による温度変動が生じる類似対象箇所(39箇所)を抽出し、健全性を確認した。また、熱成層による高サイクル熱疲労の事象を反映して、類似箇所(2箇所)の点検を実施した。
格納容器内第3種管の検査の充実
 設備の健全性に係る検査充実の観点から、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている再生熱交換器から化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管までの範囲(10箇所)について、超音波探傷検査を実施した。

5.

次回定期検査の予定
 平成13年夏頃