[記者発表][平成12年度4月]−[24日16時記者発表] 原子力安全対策課
美浜発電所2号機の原子炉手動停止について(化学体積制御系抽出水配管からの漏えいに係る原因と対策)(12−11)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力50.0万kW)は、定格出力運転中のところ、4月7日9時55分頃、運転員の巡回点検において、格納容器内の化学体積制御系抽出水配管からわずかな漏えいが発見された。
 点検調査のため、同日12時より負荷降下を開始し、19時発電を停止し、19時32分に原子炉を停止した。
 発電所での外観目視点検の結果、化学体積制御系抽出水配管にあるエルボ(L字型配管)の溶接部上端付近に、周方向の割れ(外表面長さ約20mm)が確認された。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はなかった。[平成12年4月7日、10日記者発表]

1. 調査結果
(1) 試験施設調査
 当該部を切り出し、試験施設にて詳細調査を行った。
 浸透探傷検査の結果、エルボ背側配管外表面の溶接部上端に沿って21mmの指示が認められたが、エルボ内の配管内表面に指示は認められなかった。
 割れの断面観察の結果、割れはエルボソケットの隅肉溶接部の内面端部から配管部を経由して溶接部上端外表面に向かって貫通しており、破面にはビーチマーク模様が認められた。
 これらのことから、割れは内面からの疲労割れによるものと判明した。
(2) 現地調査
 当該エルボの上流にあるA系オリフィス(穴径5.5mm、長さ305mm)の点検を行った結果、オリフィス出口部において、約35mmの範囲にわたり出口端部に向かって広がる円錐状の減肉(端部の直径で約20mm)が認められ、減肉部の表面は肌荒れしていた。
 これらのことから、オリフィス出口部で流れに乱れが生じている可能性のあることがわかった。
(3) 運転履歴調査
 抽出水系統の運転履歴(温度、圧力、流量)の調査を行った結果、運転中においては温度、圧力、流量等はほぼ一定であるが、定期検査時等のプラント起動、停止の際には、一次冷却材浄化のため抽出水流量を増加させた運転を行っており(抽出切替)、その際、一時的にオリフィス下流側の圧力を通常運転時の約23kg/cm2から約10kg/cm2 に降下させていることがわかった。
(4) 流動試験
 抽出水配管系を模擬した装置を用いて流動試験を行った結果、オリフィス出口部が健全な状態で、オリフィス下流側の圧力を約10kg/cm2に下げると、出口部で多量の気泡が発生(キャビテーション)し、その発生・消滅に伴い、配管内で圧力変動が起こることがわかった。
 また、オリフィス出口部が今回認められた程度に円錐状に広がった状態では、オリフィス下流側の圧力が通常の約23kg/cm2であっても、出口部で多量の気泡が発生し、配管内で圧力変動が起こることが確認された。
(5) 割れの発生進展評価
 流動試験で得られた圧力変動をもとに、エルボ溶接部の内面端部に発生する応力を評価した結果、その応力は疲労限度を超えており、当該部で割れが発生し進展すると評価された。

2.

推定原因
(1) オリフィス出口部に減肉が認められた原因
 抽出切替に伴い、オリフィス下流側の圧力を降下させた際、オリフィス出口部でキャビテーションが発生したことにより、オリフィス出口部内面で減肉が発生し、その後キャビテーションによる減肉が進行したものと推定された。
(2) エルボ溶接部に割れが発生した原因
 オリフィス出口部での減肉が進行したことにより、通常運転中においてもオリフィス出口から下流側配管内にかけてキャビテーションが発生し、それに伴い配管内で発生する圧力変動が大きくなった。これにより配管系が振動し、エルボ溶接部の内面端部での発生応力が疲労限度を超えたため割れが発生し、その後徐々に進展し貫通したものと推定された。

3.

対策
(1) 減肉の認められたA系統のオリフィスと当該エルボを含む抽出水配管を新品に取り替える。
(2) 抽出切替時に、オリフィス出口圧力をキャビテーション発生圧力以上に確保するよう運転操作を見直す。
 なお、対策実施後、4月28日頃に運転を再開する予定である。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−


原子炉格納容器内概要図
漏れ状況図
エルボ面破面観察状況
オリフィスの減肉および割れ発生メカニズム