[記者発表][平成12年度4月]−[26日15時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の制御棒位置指示不良に伴う原子炉手動停止について(原因と対策)(12−15)

 このことについて、核燃料サイクル開発機構から下記のとおり連絡を受けた。

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)は、平成12年3月11日から発電を停止し、平成11年度計画停止作業を行い、作業が終了したため、4月2日18時に原子炉を起動し、制御棒(全49本)の引き抜き操作による臨界操作を開始した。この操作中に、引き抜き操作が完了していた制御棒1本(3H)の位置指示(100%引き抜き位置)が、約65%に低下しているのが確認された。
 このため、臨界操作を一時中断し、当該制御棒の位置指示計等を確認したところ、位置指示は約65%であるが、位置検出リミットスイッチの上限ランプが点灯していることから、実際の制御棒位置は正常の位置(100%引抜き位置)であることが確認されたことから、臨界操作を再開し、4月2日23時5分、原子炉は臨界に到達した。
 4月3日、当該制御棒の位置指示を表示する制御系(位置変換器等)について調査した結果、位置指示不良の原因は、制御棒駆動装置内にある位置検出用差動トランスの不具合と推定されたため、詳細な原因調査のため、同日17時37分、原子炉を停止した。[平成12年4月3日 発表済]

1. 差動トランス調査結果
当該制御棒の位置検出用差動トランス単体の外観点検および常温での出力特性試験を実施したところ、異常は認められなかった。しかし、高温下(約90℃)での連続通電試験を行った結果、出力電圧の変動や低下が認められ、再度実施した出力特性試験では、今回の事象と同様に出力電圧の低下が確認された。
過去にも、今回の差動トランスと同一仕様のもので同様の不具合が発生しており、その時の分解調査では、差動トランス内にある基板(IC回路)の電源端子部で接触不良が生じたことが原因で出力電圧が低下したものと推定された。
当該差動トランスと同一仕様の予備品3体について、高温下での連続通電試験等を行なったが、仕様どおりの出力特性を示し、健全性が確認された。
現在使用している制御棒駆動装置内の差動トランス48本(不具合が認められた1体を除く)の健全性を確認するため、差動トランスの入力電圧を変化させ出力電圧の測定を行った結果、いずれも基準値内の特性を示し、異常は認められなかった。

2.

推定原因
 以上の調査結果より、今回の制御棒位置指示不良の原因は、差動トランス内の回路の一部に端子の接続が不十分な箇所があり、その後プラント運転時の温度等の影響を受けたことにより接触不良が生じ、出力電圧が低下したためと推定された。

3.

対策
 今回、不具合が認められた差動トランスについては、端子の少ない新しいタイプの回路(1チップIC化したもの)を内蔵した差動トランスに取替えた。
 現在使用している制御棒駆動装置内の差動トランス49体のうち、5体が新しいタイプのものになっているが、残りの44体についても、次回定期検査時に、新しいタイプのものに取替えることとした。
 なお、次回定期検査開始までの監視強化として、全制御棒位置指示を連続的に監視できる計算機や記録計を追加設置することとした。

 今後は、全ての制御棒について駆動特性試験を行い、健全であることを確認した後、4月27日夕刻に原子炉を起動し、翌28日午後に発電を再開する予定である。


制御棒位置指示信号系統概略図
制御棒駆動装置構造図