[記者発表][平成12年度5月]−[8日11時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の原子炉起動および調整運転開始について(第15回定期検査)(12−18)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成12年3月10日から第15回定期検査を開始していたが、5月9日に原子炉を起動し、同日、臨界に達する予定である。
 今後は諸試験を実施し、5月11日頃に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、6月上旬には通商産業省の最終検査を受けて営業を再開する予定である。

1. 主要工事等
(1) 1次冷却材ポンプ供用期間中検査(図−1参照)
 1次冷却材ポンプの供用期間中検査として、4台あるポンプのうち、BおよびCポンプについて、主フランジボルト、締め付け部等耐圧部の健全性を確認するとともに、分解検査としてインペラ等の内部部品について点検し、異常のないことを確認した。
(2) 原子炉容器照射試験片取出工事
 中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を定期的に把握するため、原子炉容器内部に設置している照射試験片を計画的に取り出した。
(3) 原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事(図−2参照)
 海外における原子炉冷却系統設備の損傷事例に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統他の配管の一部について、材質等を変更した新しい配管に取り替えた。

2.

復水器伝熱管調査
 今年2月14日に発生した復水器伝熱管漏えいでは、前回(第14回)定期検査時で取替えた保護被膜形成管362本のうち、2本が漏えいし、また、171本で複数箇所の減肉指示が認められたことから、今定期検査において漏えい管および減肉指示管等(計12本)を抜管し、詳細調査を実施した。[平成12年2月14日、25日記者発表済]
保護皮膜形成管 伝熱管(通常使用している伝熱管と同一材料)の内面に、海水の腐食を予防するため、あらかじめ薄い鉄皮膜を形成させた銅合金管
(1) 抜管調査および運転履歴調査
漏えい管の管内面を観察した結果、漏えい部は、海生物の付着によって発生した減肉貫通(潰食)の形状を示しており、これまでにも見られているものであった。
漏えい部の周辺は、製作時に伝熱管内表面に形成させた保護皮膜が非常に薄くなっており、保護皮膜形成管の健全管においても、この保護皮膜が薄くなっている箇所が一部で観察された。
建設時から使用している健全な伝熱管の内面は、比較的厚い皮膜が形成されていた。
通常、定期検査時に復水器伝熱管内へ通水を開始する際は、伝熱管内面に保護皮膜を形成させるため、海水に硫酸第一鉄を注入しているが、前回定期検査の起動時においては、注入しない期間があった。また、硫酸第一鉄の注入を開始した直後に、余熱除去系配管からの漏えいのため発電を停止したため、その後、復水器への通水量を少なくし、硫酸第一鉄の注入濃度も低くしていた。このため、復水器伝熱管内への通水を開始した初期の段階(初期皮膜形成期間)での硫酸第一鉄の注入量は通常の起動時に比べて非常に少なかった。
(2) 推定原因
 保護皮膜形成管で減肉が多数発生した原因は、原子炉起動時に初期皮膜形成のための硫酸第一鉄の無注入期間があったため、十分な追加皮膜の形成ができなかったこと、また、起動直後のトラブル停止に伴い低濃度注入期間があり、かつ、伝熱管内の流速が遅い期間が長く、伝熱管内面に海生物が付着しやすい状況であった。この状態で運転を再開したことから、付着した海生物により、伝熱管内面の保護皮膜がはく離したため、減肉(貫通)したものと推定された。
(3) 対策
 前回定期検査時に取替えた保護皮膜管全数(362本)については、2月14日の漏えい時に、すでに施栓を実施している。
 また、復水器伝熱管の今後の予防保全策として、伝熱管内への通水開始初期の段階において伝熱管内面に保護皮膜が十分形成されるよう、硫酸第一鉄を直ちに注入するなどの運用面での改善を図ることとした。
 なお、皮膜形成のメカニズム等の知見を得るため、今後、実機模擬装置による試験などを実施することとしている。

3.

燃料取替計画
燃料集合体全数193体のうち、49体(うち40体は新燃料集合体)を取り替えた。
燃料集合体の外観検査(24体)を実施した結果、異常は認められなかった。

4.

蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果
 AおよびC−蒸気発生器伝熱管全数(計6,764本)について、渦流探傷検査を実施した結果、異常は認められなかった。

5.

次回定期検査の予定
 平成13年春頃

6.

敦賀発電所2号機トラブル反映としての点検(図−3参照)
<検査の充実>
高サイクル熱疲労割れの点検
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例を踏まえ、高温・低温水の合流による温度変動が生じる類似対象箇所(56箇所)を抽出し、一部について超音波探傷検査を実施し、健全性を確認した。
格納容器内第3種管の検査の充実
 設備の健全性に係る検査充実の観点から、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている再生熱交換器から化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管までの範囲(8箇所)について、超音波探傷検査を実施し、健全性を確認した。