[記者発表][平成12年度6月]−[1日14時記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所1号機のシュラウドサポート部損傷の原因と対策について(12−28)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉;定格出力35.7万kW)は、平成11年8月20日から第26回定期検査を開始し、シュラウド取替工事を行っていたところ、12月9日、下部シュラウドサポートの溶接部等にひび割れが認められた。
 このため、取替工事のため切断した上部シュラウドサポートも含め、詳細調査を実施した結果、下部シュラウドサポートと原子炉圧力容器側との取付溶接部の下側や、下部と上部のシュラウドサポート周溶接部の内面側などに300箇所のひび割れを確認した。

[原因調査結果]
各ひび割れ部について、金属サンプル等を採取し、破面観察、金属組織観察、材料分析等の調査を実施した結果、ひび割れは、それぞれの溶接部(インコネル材、一部ステンレス材)で発生しており、破面は溶接金属組織の結晶(柱状晶組織)粒界に沿った特徴が認められた。
下部シュラウドサポート(インコネル材)と原子炉圧力容器側との取付溶接部下側のひび割れ全て(228箇所)について研削した結果、割れはインコネルの取付溶接金属内で進展していた。横方向(原子炉圧力容器側)への進展は、インコネル肉盛溶接部と低合金鋼肉盛溶接部の境界部で消滅しており、原子炉圧力容器(低合金鋼)には達していなかった。上方向へは上側溶接金属内に進展し、研削の結果、上側溶接部表面まで開口したものが一部あった。
製造履歴調査および応力解析評価の結果、製造時の溶接により、溶接部に発生した残留応力が、その後の曲げ加工や工場での耐圧試験により、溶接部の残留応力は緩和されたが、割れが発生した箇所では緩和されなかったものと推定された。
運転履歴調査の結果、原子炉水の溶存酸素濃度は、平成9年以降は水素注入により10ppb以下に抑制されているが、水素注入を開始するまでの期間においては、200ppb程度であった。

[推定原因]
 原因調査の結果から、シュラウドサポート溶接部等のひび割れの原因は、下部シュラウドサポート(インコネル材)の溶接部で、製造時の溶接により発生した残留応力が比較的高い状態で残り、この応力と運転中の内圧が重なり合い、溶存酸素を含んだ高温水の環境下におかれたことによって発生した粒界型の応力腐食割れと推定された。[平成11年12月10日、12月22日、平成12年2月8日、4月20日発表済み]

[対策]
 下部シュラウドサポートの対策工事について、種々の工法を検討した結果、以下の対策工事を実施することとした。
(1) 下部シュラウドサポートの取替え
 下部シュラウドサポートについては、耐応力腐食割れにより優れた材料(インコネル材)に取り替える。取り替えにあたって、原子炉圧力容器側との溶接部については、現在の下部シュラウドサポート溶接部とサポートの一部を新下部シュラウドサポートとの取付部として継続使用する。
 なお、継続使用する取付部については、以下の対策工事を実施する。
今後の健全性調査での信頼性を考慮し、取付溶接部の下側を全周、切削・整形加工する。
取付溶接部上側まで開口した部位は補修溶接を行う。
溶接部の構造強度を確保するため上側溶接部全周は補強溶接を行う。
 今回の対策工事にあたっては、応力腐食割れの発生を予防するため新下部シュラウドサポートおよび溶接材料は、耐応力腐食割れに優れた材料を使用し、継続使用する取付部の下側については、金属表面の残留応力を圧縮応力に改善するショットピーニングを施工する。また、水素注入による原子炉冷却水の水質改善(溶存酸素濃度の低減)を継続して実施する。
(2) 今後の健全性確認
 以上の対策により、シュラウドサポートの健全性は確保されると判断されるが、今後、念のため計画的に外観点検を行い、健全性を確認する。このため、次回定期検査を目途に、シュラウドサポート内側にアクセス可能な小型の遠隔水中カメラの開発導入を図る。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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添付−1 シュラウドサポートの構造
添付−2 シュラウドサポートひび割れ発生状況
添付−3 シュラウドサポートの構造比較
添付−4 下部シュラウドサポート取替手順
添付−5 下部シュラウドサポート取替工程
添付−6 シュラウドサポート内側の検査について