[記者発表][平成12年度7月]−[26日11時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所1号機の第16回定期検査開始について(12−46)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成12年7月31日から約4カ月の予定で第16回定期検査を実施する。
 定期検査を実施する主な設備は次のとおりである。

(1) 原子炉本体
(2) 原子炉冷却系統設備
(3) 計測制御系統設備
(4) 燃料設備
(5) 放射線管理設備
(6) 廃棄設備
(7) 原子炉格納施設
(8) 非常用予備発電装置
(9) 蒸気タ−ビンおよび蒸気タ−ビン付属設備

1. 燃料集合体の検査
 定格出力運転中の平成12年5月19日に行った定期的な1次冷却材中放射能濃度測定の結果、よう素131の濃度が通常値(0.6〜0.8Bq/cm3)と比べわずかに上昇(7.8Bq/cm3)しているのが認められたため、1次冷却材中の放射能濃度の監視を強化して運転を継続していた。(よう素131濃度は、12〜22Bq/cm3で安定)[平成12年6月2日 月例報告で公表済]
 このため、今定期検査では、燃料集合体全数に対し、燃料集合体シッピング検査を行ない、燃料漏えいを確認する。また、漏えいが確認された燃料集合体については、外観検査を実施する予定である。

2.

燃料取替計画
 燃料集合体全数193体のうち、97体を取り替える予定である。
 新たに装荷する燃料集合体97体のうち、80体は新燃料集合体(全て高燃焼度燃料集合体)である。

3.

主要工事等
(1) 原子炉容器上部ふた取替工事(添付1図−1図−2参照)
 海外における上部ふた管台部での損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、既設の原子炉容器上部ふたを、管台部の材質等を変更した新しい原子炉容器上部ふたに取替える。
 なお、平成11年1月29日に発生した大飯2号機での制御棒落下事象を反映し、新上部ふたには、腐食防止のため、工場にてあらかじめ保護被膜を形成させたラッチアセンブリを使用する。
(2) 原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事(図−3参照)
 海外における原子炉冷却系統設備の損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統他の配管の一部について、材質等を変更した新しい配管に取替える。
(3) 原子炉キャビティシール改造工事 (図−4参照)
 定検作業の効率化のため、キャビティシールを現状の脱着平板型から、蛇腹型のものに変更し、恒設化する。
(4) 原子炉補機冷却水系統他改造工事
 原子炉補機冷却水系統(放射性機器冷却水系統、非放射性機器冷却水系統)および補機冷却水を冷却する海水系統において、大飯2号機と共用している箇所を分離することにより、運転操作性およびさらなる設備信頼性の向上を図るため、平成14年3月までの大飯1、2号機の定期検査(計3回)の中で計画的に工事を実施する予定である。
 今定期検査では、分離工事に備え海水系統ストレーナの取替工事を行なう。

4.

敦賀発電所2号機事故を踏まえた点検 (図−5参照)
(1) 再生熱交換器の点検
 大飯発電所1号機の再生熱交換器は、内筒を有しない構造であるが、連絡管溶接部、連絡管エルボ母材部の超音波探傷検査(36箇所)を実施し、健全性を確認する。
(2) 検査の充実
高サイクル熱疲労割れの点検
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例を踏まえ、高温・低温水の合流による温度変動が生じる類似対象箇所(55箇所)を抽出し、今定期検査以降、計画的に健全性の点検を実施する。
格納容器内第3種管の検査の充実
 設備の健全性に係る検査充実の観点から、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている再生熱交換器から化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管までの範囲(8箇所)について、超音波探傷検査を実施する。

5.

運転再開予定
原子炉起動・臨界 平成12年10月下旬
発電再開(調整運転開始) 平成12年10月下旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成12年11月下旬



(添付1)

大飯発電所1号機原子炉容器上部ふた取替工事の概要

1. 概要
 大飯発電所1号機は、平成12年7月31日から開始する第16回定期検査において、原子炉容器上部ふた取替工事を実施する。
 平成12年8月下旬から9月上旬にかけて旧上部ふたの搬出、9月上旬に新上部ふたの原子炉格納容器内への搬入を行い、原子炉容器への据付けを行う予定である。

2.

原子炉容器上部ふた取替工事の工程(図−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成12年7月31日
取替工事の終了(原子炉容器組立完了) 平成12年10月中旬予定

3.

原子炉容器上部ふたの技術的改善点(図−2参照)
 取替用上部ふたは主要寸法等、基本的に同一仕様であるが、現在使用していない出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置は設けず、また管台の材料を改良品にしたものとする。
 主な改善点は以下のとおりである。
項目 改善点 理由
管台の材料 インコネル600からインコネル690に変更 耐腐食性向上
キャノピーシール 廃止 信頼性向上
予備管台 形状変更 信頼性向上
管台溶接部 溶接開先形状変更 溶接残留応力低減
出力分布調整用制御棒
クラスタ駆動装置
不要な管台の撤去 信頼性向上

4.

旧原子炉上部ふたの保管
 旧原子炉容器上部ふたは、保管容器内に収納した状態で、蒸気発生器保管庫に保管する。

5.

廃棄物の発生量
 原子炉容器上部ふたの取替工事に伴い発生する放射性廃棄物の量は、旧原子炉容器上部ふたおよび制御棒駆動軸等、ドラム缶に換算して約700本と推定される。
 これらの廃棄物は、減容に努め、既設の廃棄物保管庫および蒸気発生器保管庫内に保管する。

(参考)

原子炉容器上部ふた取替工事計画経緯
関西電力(株)は、県および大飯町に原子炉容器上部ふた取替計画を申し入れ(事前了解願い) H8.5.27
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H8.7.29
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H8.7.29
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H9.3.18
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画について、安全協定に基づく事前了解 H9.4.11
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