[記者発表][平成12年度9月]−[18日14時記者発表] 原子力安全対策課
美浜発電所3号機の定期検査状況について(A−蒸気発生器伝熱管の異物による損傷の原因と対策)(12−57)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 美浜発電所3号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、平成12年7月28日から第18回定期検査を実施しているが、A−蒸気発生器伝熱管の健全性確認のため、伝熱管全数について渦流探傷検査(ECT)を行っていたところ、隣接する伝熱管3本の高温側管板直上部において、外面からの減肉を示す信号指示が認められた。
 このため、8月24日に、当該蒸気発生器二次側の管板上面を小型TVカメラにより点検した結果、信号指示が認められた伝熱管3本の間に板状の異物(約4〜5cm四方)が確認された。

[蒸気発生器伝熱管の点検結果]
A−蒸気発生器伝熱管全数(3,382本)の渦流探傷検査(ECT)の結果、減肉信号指示が認められた3本以外に有意な信号指示は認められなかった。
念のため、BおよびC−蒸気発生器全数(計6,764本)についても渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、有意な信号指示は認められなかった。
異物取り出し後、減肉信号指示が認められた伝熱管3本について、小型TVカメラにより外面観察を実施した結果、異物との接触による摩耗減肉と推定される傷が認められた。

[異物の調査結果]
(1) 異物の詳細調査
 異物について、蒸気発生器内から回収した後、研究施設にて、外観観察、断面組織観察、化学成分分析等の詳細な調査を実施した。
外観観察の結果、表面は黒色のスケールで覆われており、伝熱管や管板部と接触していたと推定される箇所に、金属光沢が認められた。異物は縦約54mm、横約42mm、厚さ約0.3〜2.0mmで、皿状に湾曲した形状であった。
断面組織観察の結果、金属組織と酸化物が混合した組織であること、および多数の空洞が存在することが確認された。
金属組織部分の化学成分分析の結果、鉄が主成分であり、その他には、マンガンやケイ素などに加え、炭素鋼の成分より多くの銅が認められた。[平成12年8月25日、9月1日 一部記者発表済]
(2) 異物の再現試験
 今回発見された異物は、その形状や組成等の特徴から、一旦溶融した金属片が再び固まったものであると考えられ、金属の溶断作業や溶接作業による生成物と推定された。このため、それらの作業で生成される金属片を再現し、形状、組織等を調査した。
 その結果、炭素鋼をアークエアガウジング工法により溶断した場合、溶融金属が圧縮空気により吹き飛ばされる特徴があり、溶断部近くに鉄板が置かれると、鉄板上で溶融金属が固まり、今回の異物に類似した形状、組織、化学成分の金属片が生成されることが確認できた。
注: アークエアガウジング工法
鋼板と電極との間でアーク放電させ、溶融金属を圧縮空気で吹き飛ばして金属を切断(溶断)する方法。この電極には銅をコーティングしたものを使用している。
(3) 異物の発生・混入の調査
 異物が発生・混入した可能性がある蒸気発生器取替工事(平成9年2月終了)以降の二次側給水系統の工事作業を調査した。
 その結果、前回(第17回)定期検査で主給水制御弁取替工事を行っており、その際アークエアガウジング工法による配管の溶断作業を実施していた。この溶断作業において、溶融金属の飛散防止用鉄板が使用されていた。
 この作業以外では、アークエアガウジング工法を採用していないことを確認した。
 このため、主給水制御弁取替工事の作業状況を調査した結果、
今回の主給水制御弁取替工事は、同弁の信頼性向上として実施したもの。
弁の取替工事に伴い、配管切断作業を実施したが、作業場所に余裕がないことからアークエアガウジング工法を採用した。また、切断部周囲の系統機器を保護するため、耐火クロスとともに飛散防止用鉄板を使用した。
アークエアガウジング切断により発生した生成物(溶融金属等)は、耐火クロスに包み、一時保管し、新しい主給水制御弁や配管の取り付け作業前に作業現場から当該部近傍の仮設足場上を通って搬出した。
新弁や配管の取り付け(溶接)作業前には、配管内に異物のないことを最終確認した後溶接作業を行っている。今回の作業では、配管内の最終異物確認(異物のないこと)後、溶接作業(3箇所)を順次実施しており、その間、新弁や配管の開口部(今後溶接する箇所)は養生がされていなかった。
 以上のことから、今回発見された異物は、前回定期検査時の主給水制御弁の取替工事において、溶断作業に伴い発生した金属片が仮設足場上に落下するなどし、新主給水制御弁や配管の取付け作業中に誤って仮設足場の下方にあった配管内に混入したものと推定された。

[その他の点検結果]
全ての蒸気発生器(3基)の管板上面について、小型TVカメラにより全面を点検した結果、異物等は確認されなかった。
また、高圧給水加熱器から蒸気発生器内までの主給水系統設備のうち、異物の滞留する可能性のある箇所についても、小型TVカメラによる点検をした結果、異物等は確認されなかった。

[推定原因]
(1) 蒸気発生器伝熱管の損傷原因
 A−蒸気発生器伝熱管3本で確認された外面減肉の原因は、今回確認された異物が当該伝熱管に接触し、水の流れで振動したことにより摩耗が生じたものと推定された。
(2) 異物が混入した原因
 前回(第17回)定期検査時に主給水制御弁取替工事において配管の溶断作業(アークエアガウジング工法)に伴い生成された金属片が、その後の作業過程において異物管理が不十分であったために主給水配管内に混入し、給水系統の運転において蒸気発生器内に流入したものと推定された。

[対策]
(1) 減肉信号指示が認められた伝熱管3本については施栓し、使用しないこととした。
(2) 作業時における配管内等への異物混入の防止を徹底するため、以下の事項について作業要領書に明記するとともに、社内や協力会社に対し、異物管理の重要性などとあわせ、周知徹底を図ることとした。
異物管理責任者は、不必要に養生されていない開口部ができないよう適切に管理するとともに、異物の最終確認を行った後は、開口部が完全に閉止するまで連続的に監視する。
機器の開放作業においては、開口部と通路等の区画養生を確実に行う。
最終の異物確認に際しては、作業対象機器の異物確認だけでなく、開口部周辺の不要資材、廃材等の撤去など、清掃が確実にされていることを十分に確認する。


(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−



A蒸気発生器伝熱管のECT信号指示管状況図
異物混入に係る調査対象箇所図
異物生成〜混入状況の推定