[記者発表][平成12年度11月]−[22日11時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所1号機の原子炉起動および調整運転の開始について(12−76)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成12年7月31日から第16回定期検査を実施していたが、11月23日に原子炉を起動し、同日に臨界に達する予定である。
 今後は諸試験を実施し、11月下旬(11月25日頃)に定期検査の最終段階である調整運転を開始し、12月中旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。


1. 主要工事等
(1) 原子炉容器上部ふた取替工事(添付1図−1図−2参照)
 海外における上部ふた管台部での損傷事例等に鑑み、予防保全の観点から、上部ふたの管台部の材質等を変更した新しい原子炉容器上部ふたに取替えた。
 なお、平成11年1月に発生した大飯2号機での制御棒落下事象に鑑み、新上部ふたの制御棒駆動装置内部構成品は、工場にてあらかじめ保護被膜を形成させたものを採用している。
(2) 原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事(図−3参照)
 海外における原子炉冷却系統設備の損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、原子炉冷却系統他の配管の一部について、材質等を変更した新しい配管に取替えた。
(3) 原子炉キャビティシール改造工事(図−4参照)
 定検作業の効率化のため、キャビティシールを現状の脱着平板型から、蛇腹型のものに変更し、恒設化した。
(4) 原子炉補機冷却水系統他改造工事
 原子炉補機冷却水系統(放射性機器冷却水系統、非放射性機器冷却水系統)および補機冷却水を冷却する海水系統において、運転操作性および設備信頼性の向上を図るため、大飯2号機と共用している箇所を分離する。
 今定期検査では、その第1期工事として、分離工事に備え海水系統ストレーナの取替工事を行った。
 今後は、平成14年3月までの大飯1、2号機の定期検査の中で計画的に工事を実施する予定である。

2.

蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果
 AおよびC蒸気発生器伝熱管全数(6,764本)について、渦流探傷検査を 実施した結果、異常は認められなかった。

3.

燃料集合体の検査結果
(1) 燃料集合体漏えい検査
 定格出力運転中の平成12年5月19日、1次冷却材中の放射能濃度定期測定の結果、よう素131の濃度が通常値(0.6〜0.8Bq/cm3)と比べわずかに上昇(7.8Bq/cm3)しているのが認められた。今定期検査で燃料集合体全数(193体)について、漏えい検査を実施したところ、1体の燃料集合体に漏えいが認められた。
 この燃料集合体について、超音波検査により漏えい燃料棒1本が確認されたが、当該燃料棒の外観検査で有意な傷等は認められなかった。
 今回の漏えいは、当該燃料棒に微小孔(ピンホール)が発生したためと推定され、今後、当該燃料集合体は再使用しないこととした。[平成12年6月2日、7月26日、9月5日発表済]
(2) 燃料集合体外観検査および燃料集合体取り替え
 燃料集合体(25体)について、外観検査を実施した結果、異常は認められなかった。
 燃料集合体全数193体のうち、104体(うち80体は新燃料集合体で新燃料は全て高燃焼度燃料)を取り替えた。

4.

燃料取出作業の一時中断(図−5参照)
 定期検査中の8月13日、燃料取り出し作業において燃料取替クレーンの燃料つかみ装置の一部が正常の位置からズレて、燃料集合体と接触し、燃料つかみ装置が動作できない状態となった。
 このため、ガイド穴から外れている燃料つかみ装置のガイドピンを引き上げる等の作業を行い8月23日、正常な状態に復旧した。
 原因は、燃料つかみ装置のガイドピンが燃料集合体上部ノズル位置からわずかにズレた状態でつかみ装置を下降させたため接触したものと推定された。
 対策として、装置の先端部を監視できるよう水中カメラを設置し、位置の確認を確実に行うよう改善を図り、クレーンの健全性を確認した上で作業を再開した。[平成12年8月23日 発表済]

5.

敦賀発電所2号機事故を踏まえた点検(図−6参照)
(1) 再生熱交換器の点検
 大飯発電所1号機の再生熱交換器は、内筒を有しない構造であるが、連絡管溶接部、連絡管エルボ母材部の超音波探傷検査(36箇所)を実施し、健全性を確認した。
(2) 検査の充実
高サイクル熱疲労割れの点検
 過去の高サイクル熱疲労による国内外の損傷事例を踏まえ、高温・低温水の合流による温度変動が生じる類似対象箇所(55箇所)を抽出し、超音波探傷検査を行い、健全性を確認した。
格納容器内第3種管の検査の充実
 設備の健全性に係る検査充実の観点から、第3種管のうち、格納容器内でプラント運転中に第1種管と同等の温度、圧力の1次冷却水が流れている再生熱交換器から化学体積制御系抽出系統および充てん系統の主冷却材管までの範囲(8箇所)について、超音波探傷検査を実施し、健全であることを確認した。

6.

次回の定期検査の予定
 平成13年秋頃



(添付1)

大飯発電所1号機原子炉容器上部ふた取替工事の概要


1. 概要
 大飯発電所1号機は、平成12年7月31日から開始された第16回定期検査において、原子炉容器上部ふた取替工事を実施した。
 平成12年9月22日に旧上部ふたの搬出、9月23日に新上部ふたの原子炉格納容器内への搬入を行い、原子炉容器への据付けを行った。

2.

原子炉容器上部ふた取替工事の工程(図−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成12年7月31日
取替工事の終了(原子炉容器組立完了) 平成12年11月11日

3.

原子炉容器上部ふたの技術的改善点(図−2参照)
 取替用上部ふたは主要寸法等、基本的に同一仕様であるが、現在使用していない出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置は設けず、また管台の材料を改良品に変更した。
 主な改善点は以下のとおりである。

項目 改善点 理由
管台の材料 インコネル600からインコネル690に変更 耐腐食性向上
キャノピーシール 廃止 信頼性向上
予備管台 形状変更 信頼性向上
管台溶接部 溶接開先形状変更 溶接残留応力低減
出力分布調整用制御棒
クラスタ駆動装置
不要な管台の撤去 信頼性向上

4.

旧原子炉上部ふたの保管
 旧原子炉容器上部ふたは、保管容器内に収納した状態で、蒸気発生器保管庫に保管している。

5.

廃棄物の発生量
 原子炉容器上部ふたの取替工事に伴い発生した放射性廃棄物の量は、旧原子炉容器上部ふたおよび制御棒駆動軸等、ドラム缶に換算して約680本であり、それらは、既設の廃棄物保管庫および蒸気発生器保管庫内に保管している。



(参考)

原子炉容器上部ふた取替工事計画経緯
関西電力(株)は、県および大飯町に原子炉容器上部ふた取替計画を申し入れ(事前了解願い) H8.5.27
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H8.7.29
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H8.7.29
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H9.3.18
県および大飯町は、原子炉容器上部ふた取替計画について、安全協定に基づく事前了解 H9.4.11
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