[記者発表][平成12年度11月]−29日15時30分記者発表] 原子力安全対策課
美浜発電所3号機の調整運転再開について(C−主給水管検査用栓からの蒸気漏れの原因と対策および2次系クリーンアップ配管の損傷原因と対策)(12−79)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。


1. C−主給水管検査用栓からの蒸気漏れの原因と対策について[図−1図−2参照]
 美浜発電所3号機(加圧水型軽水炉:定格出力82.6万kW)は、平成12年7月28日から第18回定期検査中で、10月25日より調整運転を開始し、定格出力運転中の11月15日3時頃、2次系主給水管(C系統)の保温材よりわずかに蒸気が漏えい(数cc/分)していることを巡回点検中の運転員が発見した。
 このため、保温材を取り外し調査を行ったところ、建設時に使用する配管溶接部の放射線検査用栓の漏れ止め溶接部から漏えいしていることを確認し、原因調査のため、同日12時より出力降下を開始し、19時30分に発電を停止した。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はない。[平成12年11月15日 記者発表済]
放射線検査用栓 配管溶接部の放射線透過試験で用いる放射線源を配管内に挿入するため配管に検査穴を設けてあるが、試験後に穴をふさぐ栓をしている。建設時に栓をした後は使用していない。
(1) 調査結果
a. 現地調査結果
 当該栓の漏れ止め溶接部について検査した結果、溶接部外面に約5mmの直線状の欠陥指示が認められた。
b. 詳細調査結果
 欠陥指示部を切り出し、破面観察、断面ミクロ観察等の詳細調査を実施した。
溶接形状に問題はなかったが、割れは溶接部の底部(内部)を起点として外表面までほぼ直線状に進展しており、割れの長さは内面約18mm、外表面約5mmであった。
破面の特徴から、初期の割れは枝分かれが少なく扇状の模様で直線的な割れ(低温割れ)が破面全体に認められ、外表面の近くでは最終的に貫通したと推定される延性破面の特徴が認められた。
今回認められた初期の割れは、低合金鋼や炭素鋼の溶接部で溶接直後に発生する低温割れの特徴を呈していた。
配管、栓および溶接部の材料組成は正常であった。
延性破面 変形を伴った破壊(延性破壊)時に認められる破面。
低温割れ 溶接不良(溶接棒の乾燥不良等)により、溶接直後の冷却時(200℃以下)に溶接結晶組織内に水素が集まり、溶接時の収縮応力と相まって直線的な割れが生じる現象。材料組成の炭素量が多いと割れやすい。
(2) 推定原因
 調査結果から、建設当時当該栓を溶接した際、溶接棒の管理が不十分であったことから、栓溶接直後に溶接底部を起点として外表面近くまで低温割れが発生し、その後のプラント起動・停止により貫通に至り、蒸気漏れが発生したものと推定された。
(3) 対策
今回発生した放射線検査用栓溶接部での低温割れを踏まえ、当該箇所と同種の材料で同じ溶接施工法を用いた栓の溶接部(172ヶ所)について、磁粉探傷検査を実施し欠陥指示がないことを確認した。
当該漏れ箇所については、低温割れが発生しにくい溶接法(TIG溶接)を用いて閉止短管を溶接し復旧することとしている。
 対策を実施後、12月4日頃原子炉を起動し、臨界に達する予定である。また、同日、調整運転を再開し、12月中旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転再開する予定である。
磁粉探傷検査(MT) 電磁石等により配管に使用される材料等(強磁性体)を磁化し、磁粉の付着を利用して、材料表面や内部の欠陥を検出する方法。
(通産省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−

2.

2次系クリーンアップ配管の損傷の原因と対策[図−3参照]
 調整運転開始後の10月26日23時50分頃、給水系統につながっている2次系クリーンアップ配管(調整運転中は給水系統とは弁で隔離されている)のT字配管接合部近くで、管軸方向に長さ約40cm、開口幅約7cmで割れが発生し、配管内にあった2次冷却水が漏れ出た。調査の結果、割れは全面にわたって延性破面の特徴が認められた。[11月2日、月例プレスで公表済]
2次系クリーンアップ配管 調整運転開始前に2次側給水系統の配管内を洗浄するために使用する配管。調整運転開始後は使用しない。
(1) 推定原因
 2次系クリーンアップ配管は、調整運転中は給水系統と弁で隔離されており、復水器側にも仕切弁があり、配管内は2次系水で満水状態におかれている。
 調整運転開始後の電気出力上昇に伴って2次系給水温度は上昇(当時190℃程度)するが、この給水温度が配管・弁を介して隔離されている当該配管内の水に伝わり、熱伝導によりクリーンアップ配管内の水の温度が上昇(平均100℃程度)した。それにより水の体積が膨張し(約4%増加)、その結果、閉じ込められている当該配管内の圧力が異常に上昇し(約510kg/cm2)、応力の集中するT字配管接合部で破損が生じたものと推定された。
(2) 対策
当該破損部を含め2次系クリーンアップ配管の仕切弁により隔離される範囲の配管について取り替えを実施した。
給水系統の温度上昇に伴う当該配管内の異常昇圧を防止するため、当該配管の弁については、調整運転開始前に主給水側の弁を閉止するが、復水器側の弁は定格出力到達後の給水系温度が安定した段階で閉止するよう運転操作手順書に明記した。
負荷上昇に伴う系統の温度上昇による熱伝導を考慮し、弁により満水状態で隔離されている配管内の水の体積膨張による内圧上昇を評価し、設計圧力を上まわる可能性があると判定された箇所については、配管内に気相部を設けることや、配管内の水温が安定するまで待って弁を閉止するなどの対策を講じることとした。