1. |
タービン弁駆動用油圧系統からの油漏れの原因と対策[図−1,図−2参照] |
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大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉:定格出力117.5万kW)は、平成12年7月31日から第16回定期検査中で、11月25日より調整運転を開始し、定格出力で調整運転中の12月2日10時9分頃、運転員が蒸気タービンの弁を制御する作動油(EHガバナ油)が配管フランジ部から漏えいしているのを発見。直ちに、フランジ部の増し締めを行うとともに、漏えい箇所の補修を実施するため、同日12時30分から出力を降下、19時30分発電を停止した。今回の事象による周辺環境への放射能の影響はない。[平成12年12月2日 資料配布済] |
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(1) |
調査結果 |
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漏えいが認められたフランジ部を点検したところ、Oリングの一部が所定の溝(Oリング溝)からはみ出し、フランジ面に挟まれた状態であった。フランジ面およびOリング溝に異物や、キズ等の異常はなかった。Oリングは、一箇所で破断しており、むしれや一部に深い亀裂が確認された。
当該配管は、定期検査ごとにフランジ部を開放し、フランジ面の手入れ、Oリングの取替え等を行っている。 |
(2) |
推定原因 |
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今回の定期検査時における当該箇所の取り付けの際に、Oリングが所定の溝からはみ出した状態でフランジを締め付けた。Oリングには配管内から高い油圧(平均約140kg/cm2)が脈動的にかかるため、フランジ面に挟まれた状態にあったOリングが次第に引き延ばされ、フランジ面にわずかな隙間等が生じ漏えいに至ったものと推定される。
フランジ部の組立てにあたっては、締め付け時にフランジ面に隙間がないことの確認を行っているが、当該のフランジ部は、作業床面近くにあり周囲に干渉物があったため、隙間管理が確実に機能しなかったものと推定された。 |
(3) |
対策 |
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・ |
当該フランジのOリングは、新しいものに取り替える。 |
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現在のフランジ位置は周囲に構造物が多いことから、フランジ位置を約10cm上げ作業環境の改善を図る。 |
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当該油圧系統の類似フランジ部分すべてについて、フランジ面に隙間がないことの確認を行った。 |
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今後フランジの組み立ての際に、仮組み状態でOリングが正規の位置にあることや、フランジ面に挟まれていないことを治具を用い確認するとともに、締め付け後のフランジ面の隙間測定では、厚みの違う二種類の隙間ゲージを用い隙間管理を確実に実施できるようにする。 |
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対策実施後、大飯1号機は12月12日原子炉を起動し、同日、調整運転を再開する予定としている。また、12月下旬には通商産業省の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。 |
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(通産省によるINESの暫定評価尺度) |
基準1 |
基準2 |
基準3 |
評価レベル |
− |
− |
0− |
0− |
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2. |
化学体積制御タンク試料採取系統からの漏れについての原因と対策(大飯発電所2号機のプラント排気筒モニタの一時的な指示上昇について)[図−3,図−4参照] |
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大飯発電所1、2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、定格出力で運転中の11月30日9時18分頃、1号機および2号機それぞれの化学体積制御タンク内気相部の定期ガス分析を行うため、同タンクと試料採取室(補助建屋内)を結ぶ連絡弁を開操作したところ、試料採取室内のエリアモニタの指示値が上昇し、9時23分頃から、同室の換気系の排出先である2号機プラント排気筒のガスモニタの指示値が上昇した。
このため、9時28分に当該弁を閉止し、9時39分頃から2号機プラント排気筒のガスモニタ指示値は通常値に復旧した。
2号機プラント排気筒の指示値は、今回の事象で通常値(約700cpm)から最大約1500cpmまで上昇*し、この指示値の変化から推測すると約1.2×109Bqの放射能が排気筒から放出されたものと評価されているが、発電所周辺の野外モニタの指示値に変化はなく、周辺環境への影響はない。 |
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警報設定値 |
: |
注意警報(3000cpm)、高警報(20000cpm) |
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大飯発電所年間放出管理目標値 |
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3.7×1015Bq |
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平成11年度放出実績 |
: |
1.2×1011Bq(年実績) |
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その後、1号機および2号機化学体積制御タンクガスの試料採取系統について、弁・配管等の外観目視点検や漏えい検査を実施した結果、1号機側試料採取系統に設置してあるドレンポット下部のねじ込み部から漏えいを確認した。なお、2号機側については漏えい検査の結果、異常は認められなかった。[11月30日、記者発表済] |
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(1) |
調査結果 |
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漏えいが認められた1号機側試料採取系統のドレンポット(水分を溜めるアルミダイキャスト製の容器)下部の下流側ドレン配管(ステンレス製)とのねじ込み部を点検した結果、以下のことが確認された。 |
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・ |
ドレンポットと下部のドレン配管とは、若干曲がった状態であった。 |
・ |
ドレンポットとドレン配管のねじ込み部を放射線透過検査したところ、ドレン配管(オネジ側)が2山程度しかねじ込まれていないことが確認された。 |
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ドレンポット側(メネジ部)ねじ込み部は全周に欠損が認められ、ドレン配管側(オネジ)先端部には約半周にわたりメネジが食い込んだ跡が認められた。
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同一のドレンポットを使用している2号機側のドレンポット下部ねじ込み部を調査した結果、外観目視や漏えい検査では異常は認められなかったが、1号機側と同様に、ドレン配管(オネジ)が2山程度しかねじ込まれていないことが確認された。分解点検後、ドレンポットにドレン配管(オネジ)をねじ込んだところ、2山程度しかねじ込めなかった。 |
(2) |
推定原因 |
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以上の調査結果から原因は次のように推定された。 |
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・ |
ドレンポット製作時に下部ねじ込み部(メネジ)のねじ加工が不十分であったため、ドレン配管(オネジ)ねじ込みが2山程度しかねじ込まれなかった。 |
・ |
1号機の今定期検査時に、当該ドレンポット下部にあるドレン弁の分解点検を行ったが、その組立復旧の際にドレン配管に力が加わり、ドレンポット下部のねじ込み部(メネジ)が破損し、当該部のシール機能が喪失した。 |
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その後、体積制御タンクガスの定期サンプリングのため連絡弁を開放したところ、当該部のドレンポットねじ込み部から放射性のガスが室内に漏えいしたものと推定された。 |
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(3) |
対策 |
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当該ドレンポットおよび2号機のドレンポットについては、正規のねじ加工したステンレス製のドレンポットに取替え復旧する。なお、類似のドレンポットについて調査したところ、十分なねじ加工が施されていることを確認している。
今後、放射性物質を含むガス系統で機器を分解し復旧する際には、その機器から近傍の固定点までの範囲にあるねじ込み部の漏えい確認を行うこととした。 |
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(通産省によるINESの暫定評価尺度) |
基準1 |
基準2 |
基準3 |
評価レベル |
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