[記者発表][平成8年度1月]−[20日16時記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所2号機の原子炉手動停止の原因と対策について(8−90)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力116.0万kW)は、定格出力で運転中のところ、12月24日、原子炉格納容器内の化学体積制御系配管からの漏えいを発見したため、同日原子炉を手動停止した。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はない。
 原因調査のため漏えいが認められた配管の外観点検を行った結果、曲げ配管部の腹側外表面に微小な割れが認められた。また、漏えい部の下流側にある配管支持部(Uボルト)で配管外面の擦り傷とUボルトの変形が発見された。[平成8年12月24日、26日発表済]

[漏洩部調査結果]

 当該曲げ配管部を切断し調査した結果、外表面では3箇所最大長さ約4mm、内表面では約75mmの割れが生じており、配管内面から外面に向かって割れたものと推定された。また、割れ破面の詳細調査で、割れは粒界割れであり、外面側の一部に、僅かに疲労破面の特徴も認められた。また、破面部に配管には含まれていない低融点金属の亜鉛が微量に検出された。


[亜鉛付着]
 オーステナイト系ステンレス鋼は、亜鉛が付着した状態で、高温で引張り応力が加わると、脆化割れ(粒界割れ)が生じることが知られている。このことから、亜鉛付着の原因を調査した結果、工場で当該曲げ配管を製造・加工する過程において、直管を加熱炉で加熱した後、型枠プレスにより曲げ加工するが、その際、加熱炉から配管を取り出す工具に加熱炉の塗装に含まれている亜鉛が誤って付着し、それにより、管内表面に直線上に付着したものと推定された。

[原因]
 当該配管部から冷却水が漏えいした原因は、工場で当該曲げ配管を製造する過程において、ステンレス鋼の直管を高温状態で曲げ加工する際、亜鉛が内表面に付着した状態で実施したため、亜鉛が付着した内表面から低融点金属による粒界割れが発生し、その後の運転により亀裂が徐々に進展し、貫通に至ったものと推定された。

[対策]
 当該曲げ配管部および調査のため切り出した曲げ配管部1箇所については、曲げ加工時に、配管内表面に低融点金属が付着しないよう製造管理の徹底を図るとともに、内面鏡による検査で割れがないことを確認したものに取り替える。
 また、同じ工場で製造・加工した類似曲げ配管部59箇所について、念のため超音波探傷検査により、健全性を確認することとした。

[その他]
 現場調査で発見されたUボルトの変形により当該配管部は僅かに拘束されるが、その影響は小さく、今回の割れの原因とはならないことが判明した。
 なお、Uボルトの変形及び配管の擦り傷が発生した原因は、試運転時に被ばく低減対策として遮へい材の取り付け工事を行った際、配管とUボルトの隙間に異物が混入し、その後、起動停止に伴う配管熱変位により異物が噛み込んだためと推定された。
 このため、当該Uボルトは新品に取り替えるとともに、当該系統で遮へい材を取り付けた範囲のUボルトについて、拘束がないことを確認する。また、今後、起動停止に伴い熱変位する配管について改造工事を行う際、異物管理を徹底することとした。


[用語]
粒界割れ 金属結晶の粒界に沿った割れ。
低融点金属割れ

亜鉛等の低融点金属が、高温条件下で引張り応力が作用して、結晶粒界に浸透・化合物を生成することにより、結晶粒界の結合エネルギーを低下させることにより、割れが生じる事象。

亜鉛 融点は約420℃


系統概要図
損傷エルボスケッチ図