[記者発表][平成8年度1月]−[31日14時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の第13回定期検査開始について(8−97)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、2月3日から約7カ月の予定で第13回定期検査を実施する。
 定期検査を実施する主な設備は次のとおりである。

(1) 原子炉本体
(2) 原子炉冷却系統設備
(3) 計測制御系統設備
(4) 燃料設備
(5) 放射線管理設備
(6) 廃棄設備
(7) 原子炉格納施設
(8) 非常用予備発電装置
(9) 蒸気タービンおよび蒸気タービン付属設備


1. 主要工事等
(1) 蒸気発生器取替工事(添付1参照)
 社会的信頼性および保守性の向上を図るため、既設の蒸気発生器全数(4基)を撤去し、新型の蒸気発生器に取り替える。
(2) 低圧タ−ビンロ−タ取替工事(図−1参照)
 第1、2、3低圧タ−ビンロータについて、耐応力腐食割れ性の向上等、信頼性確保の観点から、動翼円板をロータ車軸に焼嵌(やきば)めている『焼嵌め型ロータ』から、円板と車軸が一体化された『全一体型ロ−タ』に取替える。

2.

燃料取替計画
 燃料集合体全数193体のうち、81体を取り替える予定である。
 新たに装荷する燃料集合体81体のうち、72体は新燃料集合体(全て高燃焼度燃料集合体)である。

3.

運転再開予定
原子炉起動・臨界 平成9年7月中旬
発電再開(調整運転開始) 平成9年7月下旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成9年8月中旬



(添付1)

大飯発電所2号機蒸気発生器取替工事の概要

1. 概要
 大飯発電所2号機の蒸気発生器取替工事は、平成7年8月から2号機用の蒸気発生器保管庫設置工事等の準備工事を進めていたが、平成9年2月3日からの第13回定期検査開始をもって蒸気発生器取替(4基全数)の本格工事に入る。
 平成9年3月下旬〜4月上旬に旧蒸気発生器(4基)の搬出を行い、平成9年4月上旬〜中旬に新蒸気発生器の原子炉格納容器内への搬入・据付を行い、平成9年6月下旬の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了する予定である。
 また、蒸気発生器取替工事としての総被ばく線量当量計画値は約2.5人・Sv、放射性廃棄物は、旧蒸気発生器4基、コンクリートブロックが保管容器で約562m3のほか、切断した配管や干渉物等ドラム缶換算で約1,518本が発生すると推定され、2号機用の蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫に保管する。

2.

蒸気発生器取替工事の工程(図1−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成 9年 2月 3日
取替工事の実工事終了(1次冷却材管耐圧・漏えい検査) 平成 9年 6月 下旬 予定
取替工事の終了(蒸気発生器性能検査) 平成 9年 8月 中旬 予定
(1) 主蒸気・主給水管および1次冷却材管の切断(図1−2参照)
 旧蒸気発生器を搬出するために、蒸気発生器に接続している主蒸気・主給水管および1次冷却材管を切断する。
 1次冷却材管の切断箇所は、高温側1箇所、低温側2箇所とする計画である。
(2) 蒸気発生器室仮開口の設置(図1−3参照)
 蒸気発生器を搬出・搬入するために、鉄筋コンクリート造の蒸気発生器室(ドッグハウス)の天井および壁の一部を合計12のブロックに切断・撤去し、仮開口部を設置する。
(3) 旧蒸気発生器の搬出(図1−4図1−5参照)
 原子炉格納容器内のクレーンに仮設する補助トロリーにより旧蒸気発生器を吊り上げて横倒しにし、原子炉格納容器内に仮設した仮設床上を移動させて、機器搬入口を通り原子炉補助建屋に搬出する。
 原子炉補助建屋内では、旧蒸気発生器をターンテーブルにより方向転換させ、リフターにより運搬車両上に積載し、ワイヤーにより確実に固縛した後、原子炉補助建屋シャッター部を通り、発電所構内に設置した2号機用の蒸気発生器保管庫へ運搬し保管する。
(4) 新蒸気発生器の搬入(図1−4図1−5参照)
 新蒸気発生器は旧蒸気発生器搬出の逆の手順で機器搬入口を通り原子炉格納容器内へ搬入する。原子炉格納容器内搬入後は補助トロリーにより立起こしを行い、所定の位置に据付ける。
(5) 1次冷却材管、主蒸気管および主給水管の復旧(図1−2参照)
 1次冷却材管、主蒸気管および主給水管を溶接にて復旧する。溶接完了後、非破壊検査、耐圧・漏えい検査を行い健全性を確認する。
(6) 蒸気発生器室の復旧(図1−3参照)
 新蒸気発生器搬入完了後、蒸気発生器室仮開口部に鉄筋を組立て、コンクリートを打設し復旧する。
(7) 検査
 新蒸気発生器および各機器の据付・復旧完了後、1次冷却材管の耐圧・漏えい検査、主蒸気・主給水管の耐圧・漏えい検査、蒸気発生器据付検査、蒸気発生器室の構造・外観検査等を行う。

3.

新蒸気発生器の技術的改善点(図1−6参照)
 取替後の新蒸気発生器は、過去の損傷対策を反映した蒸気発生器を採用する。主な改善点は次のとおりである。

項目 改善点 理由
伝熱管材料の改善 インコネルMA600からインコネルTT690に変更 耐腐食性の向上
振止め金具の改善 従来の2本から3本に変更
材料をインコネルからステンレス鋼に変更
振動抑制の向上
耐摩耗性の向上
管支持板の形状改善 丸穴型から四つ葉型に変更 不純物の濃縮抑制
管支持板の材料改善 炭素鋼からステンレス鋼に変更 耐腐食性の向上
新拡管法の採用 機械式拡管から液圧拡管および機械式拡管に変更 残留応力発生の抑制
2次側熱流動の改善 流量分配板の設置等 不純物堆積の抑制

4.

旧蒸気発生器の保管 (図1−4参照)
 旧蒸気発生器は、発電所構内に設置した鉄筋コンクリート造の2号機用の蒸気発生器保管庫に保管する。

5.

廃棄物の発生量(表1−1参照)
 蒸気発生器の取替工事に伴い発生する放射性廃棄物の量は、旧蒸気発生器4基、蒸気発生器室仮開口部設置に伴うコンクリートブロックが保管容器で約562m3および切断した配管や干渉物等、ドラム缶に換算して約1,518本と推定される。
 これらの廃棄物は減容に努め、2号機用の蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫内に保管する。

6.

蒸気発生器取替工事に係る被ばく線量当量 (表1−1参照)
 蒸気発生器取替工事における総被ばく線量計画値は、約2.5人・Svと推定される。
 取替工事実施にあたっては、除染、遮へい、自動化等により、被ばく線量当量の低減に努めることとする。
 また、三菱重工業(株)神戸造船所および大飯発電所内にトレーニング設備を設置し、作業安全、被ばく低減および作業品質の向上の観点から、作業員に対して訓練を行う。



(参考)

蒸気発生器取替工事計画経緯
関西電力(株)は、蒸気発生器取替方針を決定し、県および立地町に報告 H5.1.21
関西電力(株)は、県および大飯町に蒸気発生器取替計画を申し入れ(事前了解願い) H5.3.1
県および大飯町は、蒸気発生器取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H5.4.19
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H5.4.19
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H6.3.9
関西電力(株)は、県および大飯町に事前了解変更願い(コンクリ−ト廃棄物の処分計画にかかる変更) H6.4.15
県および大飯町は、蒸気発生器取替計画について安全協定に基づく事前了解 H6.6.3
蒸気発生器保管庫(2号機用)設置工事開始 H7.11.11
蒸気発生器保管庫(2号機用)設置工事終了 H8.11.25
蒸気発生器取替本工事開始 H9.2.3



表1−1 蒸気発生器取替計画値(廃棄物発生量と被ばく線量)
項目 計画
(H9.1.31現在)
取替工事(実工事)期間 H9.2.3〜H9.6下旬
放射性廃棄物発生量
(ドラム缶換算)
廃棄物庫保管 約641本
蒸気発生器保管庫
(2号機用)保管
SG4基+約877本
約562m3(コンクリ−ト保管容器)
合計 SG4基+約1,518本
約562m3(コンクリ−ト保管容器)
総被ばく線量当量 約2.5人・Sv
個人最大
線量当量
期間 25mSv(管理値)
2.5mSv(管理値)
元の位置へ▲
元の位置へ▲