[記者発表][平成8年度3月]−[3日16時記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所1号機の原子炉手動停止の原因と対策について(制御棒駆動水圧系配管からの漏えい)(8−107)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉;定格出力35.7万kW)は、定格出力にて第24回定期検査の調整運転中の平成9年2月20日14時50分頃、制御棒駆動水圧系配管(直径約6cm;炭素鋼)の壁貫通つけ根部からの微少な漏えいを発見したため、同日16時30分に出力降下を開始、20時30分に発電を停止し、翌21日2時00分に原子炉を手動停止した。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はない。[平成9年2月20日記者発表済]

[調査結果]
 配管漏えい部について詳細な調査を実施した結果、配管の外表面には溶接部に沿って配管母材に長さ約35mmの割れが認められ、割れは外表面から内表面近傍にまで到達していることが確認された。内表面には孔食が認められ、割れの先端部とつながっていた。
 また、配管の硬度測定を実施した結果、割れ近傍の硬度が比較的高いことが確認された。[2月24日一部記者発表済]

[原因]
 当該配管と壁貫通部の埋込みスリーブのエンドプレートを溶接した際、下流側を先に全周溶接した後、上流側(漏えい部側)を3/4周(約0〜270°方向)について溶接した。このため、溶接端部(約270°方向)に高い応力が作用し、さらに当該部の溶接後の冷却に伴う材料の硬化が重なったことにより施工段階で割れ(止端割れ)が発生したものと推定された。
 また、漏えいに至った原因は、配管内面に生じた孔食が徐々に進展し、割れの先端部とつながり、貫通に至ったためと推定された。

[対策]
 漏えい部調査のため切断した配管については、新品と取り替える。なお、埋込みスリーブと配管との溶接については下流側のみ全周溶接し、上流側は溶接しないこととした。 

 対策を実施し健全性を確認した後、3月5日夕刻に原子炉を起動し、3月6日夕刻に発電を再開する予定である。また、3月下旬には通商産業省による定期検査の最終検査を受けて営業運転を再開する予定である。

(通商産業省によるINESによる暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−
INES 国際原子力評価尺度



(参考)

[止端割れ]
 溶接割れの一種で、炭素鋼を溶接した場合、溶接による熱影響部の硬化、溶接時の引っ張り応力等が相互に作用しあって溶接の先端部から発生する割れ。

[孔食]

 炭素鋼に通常見られる孔状のくぼみができるような腐食形態をいう。



制御棒駆動系配管漏えい部概要図
断面・破面観察結果