[記者発表][平成8年度5月]−[21日14時記者発表] 原子力安全対策課
高浜発電所1号機制御棒駆動軸の不具合の原因と対策について(8−14)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、平成8年1月6日から第16回定期検査を実施しているが、5月9日23時頃、制御棒駆動軸と制御棒との接続作業中、制御棒駆動軸48本中6本目を接続し、その状況確認のため制御棒駆動軸を吊り上げようとしたところ、吊り上げ荷重が通常の約190kgより大きかったため、作業を中断した。
 この事象による環境への放射能の影響はなかった。(平成8年5月10日記者発表済)

 点検調査した結果、制御棒駆動軸先端部の制御棒クラスタ頭部との接続部(接手)の片側が外側に変形しており、駆動軸保護筒表面にもこすれ跡が認められた。また、制御棒クラスタ頭部の制御棒駆動軸との接続部においても、当たり跡やこすれ跡が認められた。なお、燃料集合体には異常は認められなかった。
 当該制御棒駆動軸の工場における製作記録を確認したところ、駆動軸先端部の接手に本来必要な焼き入れ熱処理が施されていないことが判明した。

[推定原因]

1. 制御棒駆動軸先端接手の変形の原因

 制御棒駆動軸が組み込まれた上部炉心構造物を原子炉容器内に吊り込んだとき、駆動軸と制御棒クラスタの中心位置のズレが多かったため、当該制御棒駆動軸先端部の接手が制御棒クラスタ頭部にまたがったが、接手の強度不足(製作時の熱処理未実施によるもの)により、当該部が塑性変形したものと推定された。


2.

制御棒駆動軸の吊り上げ荷重が大きかった原因

 変形した制御棒駆動軸先端の接手が、制御棒クラスタ頭部をまたぐように接続されたため、制御棒駆動軸の中心位置がズレ、制御棒案内管と接触・干渉したためと判明した。


3.

適切な熱処理が施されなかった原因

 製作メーカーは、接手を製作するため素材(焼きなまし材)を購入し、製作過程で焼き入れ熱処理を行うこととしていたが、製作図面に焼き入れ熱処理を指示する記載を忘れたためと判明した。
 なお、制御棒駆動軸は原子炉容器上ふた取替工事に合わせ、今回取り替えることとなっていた。


[対策]
1.

制御棒駆動軸先端部の接手については、全制御棒48本について、適切に焼き入れ熱処理を実施したものと取り替える。(なお、当該制御棒駆動軸および材料試験に用いた駆動軸計2本については駆動軸全体を取り替える。)


2.

品質管理強化のため、製作メーカーにおいては、製作図の作成時に製作図と素材の購入仕様書を照合することをチェックシートに反映するとともに、関西電力においては、主要組み立て品については熱処理実施状況をミルシート(材料成績書)などで確認することとする。
なお、安全上重要度の高い部品等については、従来から材料確認検査等(国または電力会社、製作メーカーで実施)が行われている。


制御棒駆動軸と制御棒の接続部点検状況図