[記者発表][平成8年度6月]−[18日10時資料配付] 原子力安全対策課
高浜発電所1号機の蒸気発生器取替えに係る実工事の終了について(8−21)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、平成8年1月6日からの第16回定期検査において、蒸気発生器取替工事を実施していたが、本日実施する1次冷却材管の耐圧・漏えい検査をもって、蒸気発生器取替えに係る実工事を終了する。
 今後は、平成8年8月上旬の蒸気発生器性能検査をもって蒸気発生器工事の全工程を終了する予定である。


<参考>

1. 1次冷却材管の耐圧・漏えい検査

 蒸気発生器の取替時に切断した1次冷却材管が復旧されたことに伴い、溶接部の健全性を確認するため、系統に水圧(定常運転圧力157kg/cm2の1.1倍)をかけて、耐圧および漏えいの検査を実施する。


2.

蒸気発生器性能検査

 定格出力で安定した状態において、蒸気発生器を中心とした原子炉冷却系統設備他の主要パラメーターを測定し、蒸気発生器が所定の性能を発揮していることを確認する。


3.

今後の予定(第16回定期検査)
平成8年 7月上旬

原子炉起動、調整運転開始

8月上旬 定期検査終了(営業運転再開)



(添付資料)

高浜発電所1号機蒸気発生器取替工事の概要

1. 概要

 高浜発電所1号機は、平成7年1月からB蒸気発生器保管庫設置工事等の準備工事を進め、平成8年1月6日からの第16回定期検査開始をもって蒸気発生器取替え(3基全数)の本格工事を開始した。
 平成8年3月5日〜13日に旧蒸気発生器(3基)を搬出、平成8年3月13日〜26日に新蒸気発生器の原子炉格納容器内への搬入・据付を行い、平成8年6月18日の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了する予定である。
 また、蒸気発生器取替工事としての総被ばく線量当量は約1.1人・Sv(平成8年5月31日現在)であり、放射性廃棄物は旧蒸気発生器3基、蒸気発生器室壁の切断コンクリートブロックが保管容器で約60m3および切断した配管や干渉物等ドラム缶換算で約769本(平成8年5月31日現在)が発生しており、それらをA・B蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫に保管している。


2.

蒸気発生器取替工事の工程(表−1図−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成 8年 1月 6日

取替工事の実工事終了(1次冷却材管耐圧・漏えい検査)

平成 8年 6月 18日
取替工事の終了(蒸気発生器性能検査) 平成 8年 8月 上旬 予定
(1)

主蒸気・主給水管および1次冷却材管の切断および復旧(図−2参照)

 旧蒸気発生器を搬出するために、蒸気発生器に接続している主蒸気・主給水管および1次冷却材管を切断した。
 1次冷却材管については蒸気発生器1基あたり高温側1箇所、低温側2箇所を切断した。
 切断した1次冷却材管、主蒸気管および主給水管は溶接にて復旧し、溶接完了後、非破壊検査を実施し健全性を確認した。なお、最終的に耐圧・漏えい検査を行い健全性を確認する。(主蒸気および主給水管の耐圧・漏えい検査は5月29日に実施済)
(2)

仮開口部の設置および復旧

 蒸気発生器を搬出・搬入するため、原子炉格納容器および外部遮へい壁の一部を切断し、約8m×約8mの仮開口部を設置した。
 新蒸気発生器搬入完了後、原子炉格納容器仮開口部は仮置きしていた鋼板を溶接し復旧した。溶接完了後は、非破壊検査、耐圧・漏えい検査等を行い、健全性を確認した。
 また、外部遮へい壁仮開口部は、鉄筋を組立て、コンクリートを打設し復旧した後、構造・外観検査等を実施し健全性を確認した。

(3)

旧蒸気発生器の搬出および新蒸気発生器の搬入・据付(図−3図−4参照)

 原子炉格納容器内クレーンに仮設した補助トロリーにより旧蒸気発生器を吊り上げて横倒しにし、原子炉格納容器内に仮設したレール上を移動させて蒸気発生器搬出・搬入用仮開口部を通り、原子炉格納容器外へ搬出した。
 その後、旧蒸気発生器を屋外の大型クローラクレーンにより運搬車両上に積載し、ワイヤーにより確実に固縛した後、発電所構内に設置したB蒸気発生器保管庫へ運搬・保管した。
 新蒸気発生器は旧蒸気発生器搬出の逆の手順で仮開口部を通り原子炉格納容器内へ搬入し、原子炉格納容器内搬入後は補助トロリーにより立起こしを行い、所定の位置に据付けた。

(4) 検査

 新蒸気発生器および各機器の据付・復旧完了後、主蒸気・主給水管の耐圧・漏えい検査、原子炉格納容器の耐圧・漏えい検査、ならびにアニュラス負圧検査等を行った。
 なお、平成8年6月18日の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了し、平成8年8月上旬の蒸気発生器性能検査をもって蒸気発生器取替工事全工程を終了する予定である。


3.

新蒸気発生器の技術的改善点(図−5参照)
 取替後の新蒸気発生器は、過去の損傷対策を反映した蒸気発生器を採用した。主な改善点は次のとおりである。

項目 改善点 理由
伝熱管材料の改善 インコネルMA600からインコネルTT690に変更 耐腐食性の向上
振止め金具の改善 従来の2本から3本に変更
材質をインコネルからステンレス鋼に変更
振動抑制の向上
耐摩耗性の向上 
管支持板の形状改善 丸穴型から四つ葉型に変更 不純物の濃縮抑制
管支持板の材料改善 炭素鋼からステンレス鋼に変更 耐腐食性の向上
新拡管法の採用 機械式拡管から液圧拡管および機械式拡管に変更 残留応力発生の抑制
2次側熱流動の改善 流量分配板の設置等 不純物堆積の抑制

4.


旧蒸気発生器の保管(図−6参照)

 旧蒸気発生器は、発電所構内に設置した鉄筋コンクリート造のB蒸気発生器保管庫に保管した。


5.

廃棄物の発生量(表−2参照)

 蒸気発生器の取替工事に伴い発生した放射性廃棄物の量は、旧蒸気発生器3基、蒸気発生器室壁の切断コンクリートブロックが約60m3および切断した配管や干渉物等、ドラム缶に換算して約769本(平成8年5月31日現在)である。
 これらの廃棄物は減容に努め、既設の廃棄物庫およびA・B蒸気発生器保管庫内に保管している。
 なお、外部遮へい壁開口部設置に伴い発生した切断コンクリートブロックについては、一部を構外に搬出して有効利用し、その他は放射性廃棄物でない廃棄物として発電所構内に適切に埋設処分した。


6.


蒸気発生器取替工事に係る被ばく線量当量(表−2参照)

 取替工事にあたっては、除染、遮へい、自動化等により、被ばく低減に努めた結果、蒸気発生器取替工事における総被ばく線量当量は、約1.1人・Sv(平成8年5月31日現在)となった。


蒸気発生器取替工事計画経緯

関西電力(株)は、蒸気発生器取替方針を決定し、県および立地町に報告 H5.1.21
関西電力(株)は、県および高浜町に蒸気発生器取替計画を申し入れ(事前了解願い) H5.3.1
県および高浜町は、蒸気発生器取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H5.4.19
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H5.4.19
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H6.3.9
関西電力(株)は、県および高浜町に事前了解変更願い(外部遮へい壁切断部コンクリートの埋設処分計画)を申し入れ H6.4.15
県および高浜町は、蒸気発生器取替計画について安全協定に基づく事前了解 H6.6.3
B蒸気発生器保管庫設置工事開始 H7.1.10
B蒸気発生器保管庫設置工事終了 H7.12.25
蒸気発生器取替本工事開始 H8.1.6
蒸気発生器取替工事に係る実工事終了(予定) H8.6.18
蒸気発生器取替工事全工程完了(予定) H8.8上旬

表−1 蒸気発生器取替工事実施状況
項目 A−SG B−SG C−SG
外部遮へい壁仮開口設置 H8.1.18〜H8.2.1
原子炉格納容器仮開口設置 H8.2.7〜H8.2.11
主蒸気・主給水管切断 H8.2.7〜H8.2.21
蒸気発生器室壁一部撤去 H8.2.11〜H8.2.19
原子炉格納容器内クレーン改造他 H8.2.13〜H8.3.1
1次冷却材管切断 H8.3.2〜H8.3.15
旧蒸気発生器搬出 H8.3.5
〜H8.3.7
H8.3.11
〜H8.3.13
H8.3.8
〜H8.3.10
新蒸気発生器海上輸送 H8.3.9
〜H8.3.13
H8.3.14
〜H8.3.17
H8.3.20
〜H8.3.22
新蒸気発生器
搬入・据付
水切り H8.3.13 H8.3.17 H8.3.22
搬入・据付 H8.3.15
〜H8.3.18
H8.3.21
〜H8.3.24
H8.3.24
〜H8.3.26
1次冷却材管復旧 H8.3.17〜H8.4.17
主蒸気・主給水管復旧 H8.3.29〜H8.4.30
原子炉格納容器内クレーン復旧他 H8.3.30〜H8.4.4
蒸気発生器室壁復旧 H8.4.5〜H8.4.18
原子炉格納容器仮開口復旧 H8.4.7〜H8.5.3
外部遮へい壁仮開口復旧 H8.4.13〜H8.4.30
1次冷却材管耐圧・漏えい検査 H8.6.18(予定)
蒸気発生器性能検査 H8.8上旬(予定)
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表−2 廃棄物発生量と被ばく線量の計画と実績の比較
項目 計画
(H8.1.5現在)
実績
(H8.5.31現在)
工事期間(実工事) 開始日
終了日
日数
H8.1.6
H8.6上旬
H8.1.6
H8.6.18(予定)
164日(予定)
放射性廃棄物発生量
(ドラム缶換算)
廃棄物庫 約390本 約229本
SG保管庫 SG3基
約470本
58m3(コンクリート保管容器)
SG3基
約470本
60m3(コンクリート保管容器)
合計 SG3基
約860本
58m3(コンクリート保管容器)
SG3基
約769本
60m3(コンクリート保管容器)
放射性廃棄物でない
コンクリート廃棄物発生量
約127トン (構内埋設)
約13トン (構外搬出し
有効利用)
約127トン (構内埋設)
約13トン (構外搬出し
有効利用)
総被ばく線量当量 約1.9人・Sv 約1.1人・Sv
個人最大線量当量 期間 25mSv(管理値) 12.16mSv
2.5mSv(管理値) 1.34mSv
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