[記者発表][平成8年度8月]−[26日14時記者発表] 原子力安全対策課
美浜発電所3号機の第15回定期検査開始について(8−42)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 美浜発電所3号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、8月27日から約6カ月の予定で第15回定期検査を実施する。
 定期検査を実施する主な設備は次のとおりである。

(1) 原子炉本体
(2)

原子炉冷却系統設備

(3) 計測制御系統設備
(4) 燃料設備
(5)

放射線管理設備

(6) 廃棄設備
(7)

原子炉格納施設

(8) 非常用予備発電装置
(9) 蒸気タ−ビンおよび蒸気タ−ビン付属設備


1. 主要工事等
(1) 蒸気発生器取替工事(添付1参照)

 社会的信頼性および保守性の向上を図るため、既設の蒸気発生器全数(3台)を撤去し、新型の蒸気発生器に取り替える。

(2) 原子炉容器上部ふた取替工事(添付2参照)

 海外における上部ふた管台部での損傷事例等に鑑み、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から、既設の原子炉容器上部ふたを、管台部の材質等を変更した新しい原子炉容器上部ふたに取り替える。

(3) 低圧タ−ビンロ−タ取替工事(図3参照)

 第1、2低圧タ−ビンロータについて、耐応力腐食割れ性の向上等、信頼性確保の観点から、動翼円板をロータ車軸に焼嵌(やきば)めている『焼嵌め型ロータ』から、円板と車軸が一体化された『全一体型ロ−タ』に取替える。

(4) 格納容器内小型クレーン復旧工事(図4参照)

 今回定期検査で実施する蒸気発生器取替工事の先行工事として、前回定期検査時に、取替え作業時に干渉する格納容器内小型クレーンを一時撤去し、保管していたが、蒸気発生器取替工事完了後、当該クレーンの復旧工事を行う。


2.

燃料取替計画

 燃料集合体全数157体のうち、49体を取り替える予定である。
 新たに装荷する燃料集合体49体のうち、40体は新燃料集合体(全て高燃焼度燃料集合体)である。


3.

運転再開予定
原子炉起動・臨界 平成9年1月下旬
発電再開(調整運転開始) 平成9年1月下旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成9年2月下旬



(添付1)

美浜発電所3号機蒸気発生器取替工事の概要

1. 概要
 美浜発電所3号機の蒸気発生器取替工事は、平成6年8月から1・3号機共用の蒸気発生器保管庫設置工事等の準備工事を進めていたが、平成8年8月27日からの第15回定期検査開始をもって蒸気発生器取替(3基全数)の本格工事に入る。
 平成8年10月中旬〜下旬に旧蒸気発生器(3基)の搬出を行い、平成8年10月下旬〜11月上旬に新蒸気発生器の原子炉格納容器内への搬入・据付を行い、平成8年12月下旬の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了する予定である。
 また、蒸気発生器取替工事としての総被ばく線量当量計画値は約1.6人・Sv、放射性廃棄物は、旧蒸気発生器3基、切断した配管や干渉物等ドラム缶換算で約840本が発生すると推定され、1・3号機共用の蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫に保管する。

2.

蒸気発生器取替工事の工程(図1−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始)  平成 8年 8月 27日
取替工事の実工事終了
(1次冷却材管耐圧・漏えい検査)
平成 8年 12月 下旬 予定
取替工事の終了(蒸気発生器性能検査) 平成 9年 2月 下旬 予定
(1) 主蒸気・主給水管および1次冷却材管の切断(図1−2参照)
 旧蒸気発生器を搬出するために、蒸気発生器に接続している主蒸気・主給水管および1次冷却材管を切断する。
 1次冷却材管の切断箇所は、高温側1箇所、低温側2箇所とする計画である。
(2) 機器搬入口前遮へい壁の一部撤去(図1−3参照)
 蒸気発生器を搬出・搬入する際に干渉するため、機器搬入口前遮へい壁の一部を撤去する。
(3) 旧蒸気発生器の搬出(図1−4図1−5図1−6参照)
 原子炉格納容器内のポーラクレーンにより旧蒸気発生器を吊り上げて横倒しにし、機器搬入口前まで移動し仮置する。機器搬入口通過時はポーラークレーンと屋外の大型クローラクレーンで相吊りして移動し、横引き用台車にのせて仮設レール上を移動し機器搬入口から原子炉格納容器外へ搬出する。
 その後、旧蒸気発生器を屋外の大型クローラクレーンにより運搬車両上に積載し、ワイヤーにより確実に固縛した後、拡幅した原子炉補助建屋シャッター口を通って発電所構内に設置した1・3号機共用の蒸気発生器保管庫へ運搬し保管する。
(4) 新蒸気発生器の搬入(図1−4図1−5参照)
 新蒸気発生器は旧蒸気発生器搬出の逆の手順で機器搬入口を通り原子炉格納容器内へ搬入する。原子炉格納容器内搬入後はポーラクレーンにより立起こしを行い、所定の位置に据付ける。
(5) 1次冷却材管、主蒸気管および主給水管の復旧
 1次冷却材管、主蒸気管および主給水管を溶接にて復旧する。溶接完了後、非破壊検査、耐圧・漏えい検査を行い健全性を確認する。
(6) 機器搬入口前遮へい壁の復旧
 新蒸気発生器搬入完了後、機器搬入口前遮へい壁の撤去場所に鉄筋を組立て、コンクリートを打設し復旧した後、構造・外観検査等を実施し健全性を確認する。
(7) 検査
 新蒸気発生器および各機器の据付・復旧完了後、1次冷却材管の耐圧・漏えい検査、主蒸気・主給水管の耐圧・漏えい検査、蒸気発生器据付検査等を行う。

3.

新蒸気発生器の技術的改善点(図1−7参照)
 取替後の新蒸気発生器は、過去の損傷対策を反映した蒸気発生器を採用する。主な改善点は次のとおりである。

項目 改善点 理由
伝熱管材料の改善 インコネルMA600からインコネルTT690に変更 耐腐食性の向上
振止め金具の改善 従来の2本から3本に変更
材質をインコネルからステンレス鋼に変更
振動抑制の向上
耐摩耗性の向上
管支持板の形状改善 丸穴型から四つ葉型に変更 不純物の濃縮抑制
管支持板の材料改善 炭素鋼からステンレス鋼に変更 耐腐食性の向上
新拡管法の採用 機械式拡管から液圧拡管および機械式拡管に変更 残留応力発生の抑制
2次側熱流動の改善 流量分配板の設置等 不純物堆積の抑制

4.

旧蒸気発生器の保管(図1−6参照)
 旧蒸気発生器は、発電所構内に設置した鉄筋コンクリート造の1・3号機共用の蒸気発生器保管庫に保管する。

5.

廃棄物の発生量(表1図1−3図1−5図1−6参照)
 蒸気発生器の取替工事に伴い発生する放射性廃棄物の量は、旧蒸気発生器3基および切断した配管や干渉物等、ドラム缶に換算して約840本と推定される。
 これらの廃棄物は減容に努め、既設の廃棄物庫および1・3号機共用の蒸気発生器保管庫内に保管する。
 なお、機器搬入口前遮へい壁の一部撤去に伴い発生した切断コンクリートブロックについては、「放射性廃棄物でない廃棄物」として、発電所構内に適切に埋設処分する。

6.

蒸気発生器取替工事に係る被ばく線量当量(表1参照)
 蒸気発生器取替工事における総被ばく線量計画値は、約1.6人・Svと推定される。
 取替工事実施にあたっては、除染、遮へい、自動化等により、被ばく線量当量の低減に努めることとする。
 また、三菱重工業(株)神戸造船所および美浜発電所内にトレーニング設備を設置し、作業安全、被ばく低減および作業品質の向上の観点から、作業員に対して訓練を行う。



(参考)

蒸気発生器取替工事計画経緯
関西電力(株)は、蒸気発生器取替方針を決定し、県および立地町に報告 H5.1.21
関西電力(株)は、県および美浜町に蒸気発生器取替計画を申し入れ(事前了解願い) H5.3.1
県および美浜町は、蒸気発生器取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H5.4.19
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H5.4.19
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H6.3.9
関西電力(株)は、県および美浜町に事前了解変更願い(機器搬入口前遮へい壁切断部コンクリート埋設処分)を申し入れ H6.4.15
県および美浜町は、蒸気発生器取替計画について安全協定に基づく事前了解 H6.6.3
蒸気発生器保管庫(1・3号機共用)設置工事開始 H6.8.1
蒸気発生器保管庫(1・3号機共用)設置工事終了 H7.5.31
蒸気発生器取替本工事開始 H8.8.27

 

表1 蒸気発生器取替計画値(廃棄物発生量と被ばく線量)
項目 計画(H8.8.26現在)
取替工事(実工事)期間 H8.8.27〜 H8.12下旬
放射性廃棄物発生量
(ドラム缶換算)
廃棄物庫保管 約420本
蒸気発生器保管庫
(1・3号機共用)保管
SG3基+約420本
合計 SG3基+約840本
放射性廃棄物でない
コンクリート廃棄物発生量
約110トン(構内埋設)
総被ばく線量当量 約1.6人・Sv
個人最大
線量当量
期間 25mSv(管理値)
2.5mSv(管理値)
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元の位置へ▲


(添付2)

美浜発電所3号機原子炉容器上部ふた取替工事の概要

1. 概要
 美浜発電所3号機は、平成8年8月27日から開始する第15回定期検査において、原子炉容器上部ふた取替工事を実施する。
 平成8年9月下旬〜10月上旬に新原子炉容器上部ふたを原子炉格納容器内へ搬入し、10月中旬に旧原子炉容器上部ふたを搬出を行い、12月中旬に原子炉容器への据付けを行う予定である。

2.

原子炉容器上部ふた取替工事の工程(図2−1図1−5参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成 8年 8月 27日
取替工事の終了(原子炉容器組立完了) 平成 8年 12月 中旬 予定
 今回の取替工事では、原子炉容器から取り外した原子炉容器上部ふたは、鋼板製の専用保管容器に収納した後、機器搬入口を通して屋外へ搬出、蒸気発生器保管庫(1号および3号機共用)まで運搬し保管する。
 新原子炉容器上部ふたは、機器搬入口を利用して、原子炉格納容器内へ搬入し、原子炉に燃料が装荷された後、原子炉容器に据え付ける。

3.

原子炉容器上部ふたの技術的改善点(図2−2参照)
 取替用上部ふたは主要寸法等、基本的に同一仕様であるが、現在使用していない出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置は設けず、また管台の材料を改良品にしたものとする。
 主な改善点は以下のとおりである。

項目 改善点 理由
管台の材料 インコネル600からインコネル690に変更 耐腐食性向上
ふた用管台と制御棒駆動装置との圧力ハウジングの取合部 一体化による下部キャノピーシール構造の廃止 信頼性向上
予備管台 形状変更、一部撤去 信頼性向上
管台溶接部 溶接開先形状変更 溶接残留応力低減

4.

旧原子炉上部ふたの保管(図1−6参照)
 旧原子炉容器上部ふたは、保管容器内に収納した状態で、蒸気発生器保管庫(1号および3号機共用)に旧蒸気発生器とともに保管する。

5.

廃棄物の発生量
 原子炉容器上部ふたの取替工事に伴い発生する放射性廃棄物の量は、旧原子炉容器上部ふたおよび制御棒駆動軸等、ドラム缶に換算して約350本と推定される。
 これらの廃棄物は、減容に努め、既設の廃棄物保管庫および蒸気発生器保管庫内に保管する。



(参考)

原子炉容器上部ふた取替工事計画経緯
関西電力(株)は、県および美浜町に原子炉容器上部ふた取替計画を申し入れ(事前了解願い) H6.9.6
県および美浜町は、原子炉容器上部ふた取替計画にかかる原子炉設置変更許可申請を行うことを了承 H6.10.11
関西電力(株)は通商産業省に原子炉設置変更許可を申請 H6.10.11
通商産業省は、関西電力(株)に原子炉設置変更許可 H7.7.31
県および美浜町は、原子炉容器上部ふた取替計画について、安全協定に基づく事前了解 H7.9.4
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