[記者発表][平成8年度11月]−[29日16時記者発表] 原子力安全対策課
大飯発電所4号機の発電機故障による原子炉自動停止の原因と対策について(8−78)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所4号機(加圧水型軽水炉;定格出力118.0万kW)は、定格出力で運転中の平成8年9月16日4時47分、「発電機内部故障」および「主変圧器内部故障」の警報が発信し、原子炉が自動停止した。
 なお、環境への放射能の影響はなかった。
 停止後、発電機のマンホールを開放し点検したところ、固定子巻線の相リード部の一部に損傷が確認された。
 その後、発電機の詳細調査を実施するとともに、9月30日より第3回定期検査を開始した。[9月16日、18日、27日記者発表済]

[調査結果]
(1)

固定子巻線の励磁機側相リード24本のうち、5本が溶損し、9本が一部損傷していたほか、固定子巻線冷却水絶縁ホースの一部が損傷していた。

(2)

発電機底部より、溶損が最も大きかった相リード部(Z1上口コイル)の一部と推定される相リード素線が回収された。回収された相リード素線の表面には、打痕、摺動痕、減肉が認められたほか、疲労損傷の特徴を示す模様(ストライエーション)が一部に観察された。

(3)

Z1上口コイル相リード部の支持状況について調査した結果、当該相リードにつながる位相リングと位相リング支えとの間に隙間が生じていたことが判明した。


[位相リングと位相リング支えとの間に隙間が生じた原因]

 発電機の製作段階において、Z1上口コイルについては、位相リングを位相リング支えに取り付ける際、塗布したエポキシ樹脂が完全に硬化する前に、相リード組立作業を行ったため、位相リング支え部に隙間が生じたものと推定された。

相リード組立作業 ・・・

相リード素線を固定子コイルにつなぎ込む作業


[発電機自動停止の推定原因]
(1)

位相リングと位相リング支えとの間に隙間があったため、当該位相リングの固定が不十分で、Z1上口コイルの相リード部の振動が大きかった。

(2)

その結果、相リード部の絶縁材が巻かれていない相リード素線(全64本)の一部で、素線同士が振動により接触することから、摩耗減肉が発生・進展し、その後繰り返し疲労により一部の素線が破断した。

(3)

振動により破断する相リード素線が増え、健全な相リード素線が減少し最終的に相リード素線が過熱溶融し、アーク(放電現象)が発生した。

(4)

アークが生じたことにより、相リード部で相間短絡が発生し、発電機自動停止および原子炉自動停止に至ったものと推定された。

(5)

冷却水絶縁ホースや相リード部の一部で認められた溶損については、アークおよび相関短絡時の影響によるものと推定された。


[対策]

 固定子巻線等、損傷が認められたものについては、新品と取り替えることとするが、取替にあたっては、位相リングと位相リング支えとの間に隙間が生じないよう製作管理を徹底するとともに、念のため、支持部材を追加することなどによって振動の抑制を図ることとした。


(通商産業省によるINESによる暫定評価尺度)

基準1 基準2 基準3 評価レベル
0+ 0+
INES: 国際原子力評価尺度


発電機損傷概要図
相リード部損傷発生推定のメカニズム概要図