[記者発表][平成9年度4月]−[30日13時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置建屋スタックトリチウムモニタの上昇に伴う臨時環境モニタリング結果について(9−14)

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)は、定格出力で運転中のところ、平成9年4月14日午前5時33分に、重水精製装置建屋の「スタックトリチウムモニタ放射能高」の警報が発信したため、同日6時10分に重水精製装置を手動停止するとともに、同建屋の換気装置も手動停止した。その後の調査で、重水精製装置の電解装置循環ポンプ出口フランジ部からの漏洩を確認したため、同ポンプをビニールによりマスキングを行い、漏洩の拡大防止措置を行った。
 今回の事象による周辺環境への放射能の影響はない。[4月15日発表済み]

 今回の漏洩により建屋排気筒からトリチウムが放出されたが、今回の漏洩を含む1週間(H9.4.7〜H9.4.14)の放出量は7.2×109Bqと評価された。
 また、県と動燃事業団は、今回の事象による周辺環境への影響はないと判断したが、念のため4月15〜16日、敦賀地区において臨時環境モニタリングを行った。
 その結果、採取した試料からトリチウムが検出されたが、これらの値は過去の検出実績の範囲内であり、今回の事象による周辺環境への放射能の影響がないことを再確認した。


別添 ・・・

「新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置建屋スタックトリチウムモニタの上昇に伴う臨時環境モニタリング結果について」

平成9年4月30日
福井県原子力環境監視センター
動力炉・核燃料開発事業団



<参考>

1) 今回の重水漏洩に伴うトリチウムの放出について

 重水精製装置建屋は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(略称:放射線障害防止法)」に基づく施設であり、同法では排気筒からのトリチウムの放出に関し、3月間の平均濃度限度5×10-3(Bq/cm3)が規定されている。
 今回発生した建屋内への重水漏洩により、重水に含まれるトリチウムが重水精製装置建屋排気筒から放出されたが、今回の漏洩を含む1週間(平成9年4月7日15時15分〜4月14日14時10分)の建屋排気筒からのトリチウム放出量は、7.2×109(Bq)と評価された。
 今回評価した1週間の放出量を3ヶ月の想定排気筒排気風量で除した3月間の平均濃度は、約1.7×10-4(Bq/cm3)となり、法令の濃度限度を十分下回っている。また今回の漏洩を含む過去3月間の平均濃度も約1.7×10-3(Bq/cm3)であり、法令の濃度限度を下回っている。


2)

H8年度新型転換炉ふげん発電所の気体(トリチウム)放出量

H8年度実績 原子炉施設 重水精製施設
年度総放出量(Bq) 1.0×1012 2.0×1011
月別放出量(Bq) 2.9×1010
〜2.0×1011
8.1×109
〜5.6×1010
月平均濃度(Bq/cm3 7.2×10-5
〜5.1×10-4
5.7×10-4
〜3.9×10-3
3月間平均濃度(Bq/cm3 1.0×10-4
〜3.2×10-4
8.2×10-4
〜2.0×10-3



(別添)

平成9年4月30日
福井県原子力環境監視センター
動力炉・核燃料開発事業団
新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置建屋スタックトリチウムモニタの上昇に伴う臨時環境モニタリング結果

 このことについて、4月15日から16日にかけて敦賀地区で、県と動燃で臨時調査をおこなった。今回の放出はトリチウムであったので、測定試料として空気中水分、水道水、河川水等を採取した。また、浮遊じんと陸土の核種分析も行った。
 トリチウムについては、全試料とも5Bq/l以下で、過去の検出実績の範囲内であった。核種分析の結果では、陸土に137Csが検出された以外、放射性核種はまったく検出されなかった。陸土の137Csは過去の核実験によるものである。
 以上の結果から、今回の事故による周辺環境への影響がないことを確認した。

トリチウム(3H) ・・・・・・・ ベータ線放出、 半減期12.3年
セシウム(137Cs) ・・・・・・・ ベータ線・ガンマ線放出、 半減期30年


トリチウム測定について
 通常のトリチウム測定では、冷暗所に3日以上静置した後液体シンチレーション検出器で500分測定する。そのため、測定試料数により、結果が出るまで1〜2週間ほどの日数を要する。



新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置建屋スタックトリチウムモニタの上昇に伴う臨時環境モニタリング結果

1. トリチウム分析結果
単位: Bq/l 機関A: D: 動燃
試料 採取地点 採取期間 トリチウム濃度 過去の実績値 機関
大気中水分 浦底(県テレメータ観測局) 97.4.10〜97.4.15 4.8 2.1〜8.2
浦底(県テレメータ観測局) 97.4.10〜97.4.16 4.1
猪ヶ池(猪ヶ池脇) 97.4.9〜97.4.15 2.6 6.1〜8.7
立石(県テレメータ観測局) 97.4.7〜97.4.15 2.0 2.8〜3.3
立石(県テレメータ観測局) 97.4.7〜97.4.16 3.1
立石(県テレメータ観測局) 97.4.7〜97.4.15 2.1
水道水 浦底(水試) 97.4.15 1.9 ND〜2.1
浦底(水試) 97.4.16 1.8
立石(民家) 97.4.16 1.3
色ヶ浜(西浦小学校) 97.4.16 1.7
常宮(常宮神社) 97.4.16 1.6
河川水 釜谷元川 97.4.16 2.4 ND〜5.3
高巻川 97.4.15 1.5
湖水 猪ヶ池 97.4.16 3.0 1.9〜5.0
松葉 サイト北端 97.4.16 3.6 1.2〜13
海水 浦底湾内 97.4.16 2.2 ND〜2.4
(参考1) 測定方法: 通常測定−試料調整後冷暗所3日以上放置、500分測定

(参考2)

公衆の実効線量当量限度1mSvに相当するトリチウム濃度
水道水 空気中水分
74,000Bq/l 700,000Bq/l
*: 年間平均気温と平均相対湿度を用いて計算した場合

2. ガンマ線核種分析結果
単位: 大気;mBq/m3、陸土;Bq/kg乾土
試料 採取地点 採取期間 22Na 51Cr 54Mn 59Fe 58Co 60Co 131I 134Cs 137Cs 過去の実績
137Cs)
機関
大気浮遊じん 浦底
(県テレメータ観測局)
97.4.10
〜97.4.16
ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND
監視所 97.4.1
〜97.4.15
ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND
浄水所 97.4.1
〜97.4.15
ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND
大気中ヨウ素 浦底
(県テレメータ観測局)
97.4.10
〜97.4.16
ND ND
陸土 発電所北端 97.4.16 ND ND ND ND ND ND ND ND 32 34〜52
NDは検出されず −は対象外
元の位置へ▲



新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置建屋スタックトリチウムモニタの上昇に伴う臨時環境モニタリング試料採取地点図