[記者発表][平成9年度5月]−[13日16時発表] 原子力安全対策課
高浜発電所2号機の原子炉自動停止の原因と対策について(9−21)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力82.6万kW)は、本年2月5日から第16回定期検査を実施中で、5月7日17時57分に原子炉を起動し、8日1時50分に臨界となったが、5月9日17時39分、中間領域中性子束核計装装置(N−36)の制御電源断により、「中間領域中性子束高」信号が発信し、原子炉が自動停止した。このことによる周辺環境への影響はなかった。[5月9日記者発表済]

 自動停止した当時、当該核計装装置の「中間領域中性子束高」警報設定値の変更作業を行っており、その際、「中性子源領域中性子束高原子炉トリップブロック許可(P−6)」信号の設定値調整ネジに触れた可能性があったことから、念のためP−6の設定値確認作業を実施していたが、P−6設定回路にテスト信号を入力した後に、当該回路が動作・復帰を繰り返し、その直後、中間領域中性子束核計装装置の制御電源回路ヒューズが溶断、制御電源が断になった。

 原因調査の結果、当該制御電源回路等の点検では異常は認められなかったが、P−6設定値確認作業との関係で以下のことが判明した。

(1) 今回の作業については、原子炉運転中に、当該核計装装置(N−36)検出器の高圧電源を0Vとした状態で実施していたが、その状態において検出器から微少なノイズ信号が発生することが判明した。
(2) テスト入力信号に検出器からのノイズ信号が重なった信号がP−6設定回路に入力された場合、当該回路は動作・復帰を繰り返すと評価された。
(3) 工場での再現試験の結果、P−6設定回路が動作・復帰を繰り返した場合、制御電源回路に過電流が流れ、制御電源回路のヒューズが溶断することが判明した。

[推定原因]
(1) 原子炉運転中、N−36検出器から微少なノイズ信号が発生している状態で、P−6設定値確認のためテスト信号を入力した結果、P−6設定回路が動作・復帰を繰り返したことにより、制御電源回路に過電流が流れ、制御電源回路のヒューズが溶断した。
(2) 制御電源回路のヒューズが溶断し、P−6設定回路の制御電源が失われたことにより、「中間領域中性子束高」原子炉自動停止用リレーが動作し、原子炉が自動停止したものと判明した。

[対策]
(1) 溶断したヒューズは新品と取り替える。
(2) 原子炉運転中にP−6設定値の確認・変更作業を実施する場合には、検出器信号入力コネクタを切り外して実施することとし、その旨作業要領書に反映する。
(3) 作業対象基板については、識別テープ等を使って明確化する。

 今後は、本日13日18時頃に原子炉を起動し、20時頃に臨界とした後、明日14日午前、調整運転を開始する予定である。

(通商産業省によるINESの暫定評価尺度)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0+ 0+
INES 国際原子力評価尺度



(参考)<用語解説>

[中性子束核計装装置]
 原子炉容器の周囲(1次遮へい体の中)に核分裂により発生する中性子束(中性子の量)を測定する検出器を設置し、その信号により原子炉の保護や制御を行っている装置をいう。核計装装置は、原子炉停止状態から定格出力運転に至る幅広い中性子束レベル領域を測定するため、測定範囲を低いレベルから中性子源領域、中間領域、出力領域に区分し、それぞれの領域を互いにオーバーラップさせて全ての中性子束レベル領域を測定している。

[中性子源領域中性子束高原子炉トリップブロック許可(P−6)]
 中性子源領域検出器の測定領域から中間領域検出器の測定領域への移行過程において、「中性子源領域中性子束高」警報の発信による不必要な原子炉自動停止を防ぐため、「中性子源領域中性子束高原子炉トリップブロック許可(P−6)」信号の発信後は、中性子源領域検出器の電源を切ることが可能となる。
 P−6信号は、中間領域中性子束核計装装置の出力信号で設定する。


炉外核計装装置検出器配置図
炉外核計装装置の測定範囲
原子炉自動停止発生メカニズム
高浜2号機炉外核計装装置中間領域設定値変更作業状況図