[記者発表][平成9年度6月]−[2日15時記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の原子炉自動停止の原因と対策について(9−22)

 このことについて、動力炉・核燃料開発事業団から下記のとおり連絡を受けた。

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)は、定格出力で運転中のところ、内閣総理大臣からの停止命令により、平成9年4月15日22時30分より出力降下操作を開始したところ、同日22時31分「湿分分離器水位高高」の信号によりタービンが自動停止し、引き続き原子炉自動停止した。今回の停止による周辺環境への放射能の影響はない。[平成9年4月15日発表済]

1. 原因調査結果
(1) 警報およびプラントパラメータ調査
 発信した自動停止信号は、2基(A、B)ある湿分分離器のうち、A側の「湿分分離器A水位高高」の信号であり、B側の「湿分分離器B水位高高」およびA・B共通の湿分分離器ドレンタンクの「湿分分離器ドレンタンク水位高」の信号は発信していなかった。
 原子炉出力降下時のプラントパラメータを調査した結果、原子炉出力降下のため、制御棒を挿入し原子炉出力を保持している状態で当該警報は発信しているが、原子炉出力等関連パラメータに異常は認められなかった。
(2) 関連機器の調査・点検
 現場および工場にて、湿分分離器およびドレン配管等の内部点検、湿分分離器ドレン系統の計測制御機器、タービン制御装置の調査・点検を行ったが、異常は認められなかった。
(3) 湿分分離器ドレン水の減圧沸騰(フラッシュ)に伴うレベルスイッチ実動作の調査
 湿分分離器A水位高高レベルスイッチが実動作した可能性について調査するため、湿分分離器ドレン系統を模擬し今回のプラント状態を再現した解析や当該レベルスイッチまわりを模擬した装置による実験を行った。その結果、以下のことが確認された。
a. 解析によるドレンフラッシュ発生時の影響評価
A、B側とも、ドレン配管内の水は、湿分分離器内圧力の低下に伴いフラッシュし蒸気成分が増加するために、ドレン配管内を流れにくくなり、レベルスイッチ用の計装配管に流入する。
A側ドレン配管はB側ドレン配管に比べ、ドレン配管合流部までの長さが長いことなどに起因して、A側計装配管のレベルスイッチラインには、レベルスイッチを動作させるのに十分なドレン水の流入があり、流入したドレン水は継続してレベルスイッチライン内に保持されるのに対し、B側計装配管のレベルスイッチラインには、十分なドレン水の流入がない。
b. 模擬装置によるレベルスイッチ動作確認
計装配管に流入した二相流体(水と空気の混合流で模擬)は、主にバイパスラインを流れるが、一部はレベルスイッチラインに流入し、レベルスイッチ動作用フロートを浮上させる。
レベルスイッチラインに流入した二相流体は、バイパスライン側の流れと圧力平衡する状態でレベルスイッチ内に保持され、レベルスイッチを動作させる。

2.

推定原因
 原子炉が自動停止した原因は、出力降下による湿分分離器内圧力の低下に伴い、湿分分離器ドレン配管内のドレン水がフラッシュして計装配管に流入し、レベルスイッチ動作用フロートを押し上げて、レベルスイッチ動作設定点まで浮上した状態で10秒間保持したため、「湿分分離器A水位高高」の信号が発信し、この信号によりタービンがトリップしたためと推定された。

3.

対策
(1) ドレンフラッシュが発生しても「湿分分離器水位高高」信号が発信することのないように、タービン制御装置トリップ回路のタイマー設定時間を10秒から30秒に変更する。
なお、今回の解析結果から、出力降下時にドレンフラッシュが発生し、レベルスイッチが動作する可能性があることがわかったため、湿分分離器水位高高検出用レベルスイッチの移設を行った第12回定期検査以降、今回を除く過去3回の停止実績を参考に、通常の停止操作時における出力降下の際の注意事項を手順書に明記し、運転操作に万全を期すこととする。
(2) 湿分分離器水位高高検出用レベルスイッチにドレンフラッシュの影響を及ぼさないような設備方策を検討し、次回の定期検査時に改造を行う。


動力炉・核燃料開発事業団による
国際評価尺度(INES)の暫定評価
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湿分分離器回り概略系統図
湿分分離器水位高高信号によるタービントリップまでの流れ

ドレンフラッシュ状態模式図(解析による)
レベルスイッチ回り状態模式図(模擬試験による)
湿分分離器水位高高検出用レベルスイッチ断面図