[記者発表][平成9年度6月]−[3日10時40分記者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所の重水精製装置での重水漏えいに係る過去事例の調査について(9−24)

 平成9年4月14日に発生した、新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)重水精製装置での重水漏えいについては、動燃事業団として事象発生時に、安全協定に基づく異常事象として通報連絡がなされなかったことに鑑み、重水精製装置建屋に関して過去のモニタ上昇事例等について調査を実施した。

 重水精製装置は、原子炉施設で使用されている重水のうち、一部軽水と混合することにより発生した劣化重水を精製するための装置で、この劣化重水には原子炉運転に伴い生じるトリチウムが含まれている。重水中に含まれるトリチウムは、水蒸気として容易に拡散する特性がある。
 重水精製装置および同建屋は、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」に基づき管理されており、同建屋からのトリチウムの放出についても、同法に規定される放出濃度限度を十分下回っており、放出量も十分小さいものである。

 重水精製装置建屋排気筒に設置されているスタックトリチウムモニタと、建屋内に設置されているエリアトリチウムモニタについて、モニタ指示値が上昇した過去の事例を選定し、今回の漏えいを含め19例を代表として事象の分析を行った。なお過去のモニタ上昇時における環境への放出濃度は、すべて法令に基づく放出濃度限度以下であることを確認している。

 事例分析の結果、同装置の機器故障により重水が漏えいしたものは4例あり、うちスタックトリチウムモニタの警報が発生したのが2例あった。
これらの原因は、

金属ガスケットシール部での締め付け不足
金属ベローズシール部の損傷
弁と配管溶接部の初期欠陥
Oリングの劣化
であった。

 またモニタ不調による2例を除き、13例が機器の点検および作業等に伴う上昇であり、うちスタックトリチウムモニタおよびエリアトリチウムモニタの警報が発生した例が各1例あった。点検・作業等に伴う上昇の原因は、作業手順の不備やミスが殆どであり、トリチウムの特性(水蒸気中に容易に拡散すること)に起因した事例であった。

 今回の分析結果を踏まえ、同装置の点検・作業に伴うモニタ指示上昇については、今後作業管理等の徹底により極力防止するよう県として動燃事業団に要請するとともに、県と敦賀市は動燃事業団と協議の上、新型転換炉ふげん発電所重水精製装置建屋内での漏えいについて、以下の事象は安全協定に基づく異常事象として直ちに通報連絡するものとした。

(1) 重水精製装置建屋排気筒のスタックトリチウムモニタで警報が発信し、同装置や換気系の運転を停止したとき。
(2) 重水精製装置運転中にエリアトリチウムモニタで警報が発信し、同装置の運転を停止したとき。

 なお、これらの警報が誤信号で発信した場合は除く。