[記者発表][平成9年度6月]−[30日10時資料配付] 原子力安全対策課
大飯発電所2号機の蒸気発生器取替えに係る実工事の終了について(9−32)

 このことについて、関西電力株式会社から下記のとおり連絡を受けた。

 大飯発電所2号機(加圧水型軽水炉;定格出力117.5万kW)は、平成9年2月3日からの第13回定期検査において、蒸気発生器取替工事を実施していたが、本日実施する1次冷却材管の耐圧・漏えい検査をもって、蒸気発生器取替えに係る実工事を終了する。
 今後は、平成9年8月中旬の蒸気発生器性能検査をもって蒸気発生器取替工事の全工程を終了する予定である。
 なお、大飯発電所2号機の蒸気発生器取替工事の全工程が終了すると、関西電力株式会社が計画していた蒸気発生器取替工事はすべて完了する。


<参考>

1. 1次冷却材管の耐圧・漏えい検査
 蒸気発生器の取替時に切断した1次冷却材管が復旧されたことに伴い、溶接部の健全性を確認するため、系統に水圧(定常運転圧力157kg/cm2の1.1倍)をかけて、耐圧および漏えいの検査を実施する。

2.

蒸気発生器性能検査
 定格出力で安定した状態において、蒸気発生器を中心とした原子炉冷却系統設備他の主要パラメーターを測定し、蒸気発生器が所定の性能を発揮していることを確認する。

3.

今後の予定(第13回定期検査)
原子炉起動・臨界 平成9年7月中旬
発電再開(調整運転開始) 平成9年7月下旬
定期検査終了(営業運転再開) 平成9年8月中旬



(添付)

大飯発電所2号機蒸気発生器取替工事の概要

1. 概要
 大飯発電所2号機の蒸気発生器取替工事は、平成7年8月から2号機用の蒸気発生器保管庫設置工事等の準備工事を進めていたが、平成9年2月3日からの第13回定期検査開始をもって蒸気発生器取替(4基全数)の本格工事に入った。
 平成9年3月26日〜4月5日に旧蒸気発生器(4基)の搬出を行い、平成9年4月3日〜4月17日に新蒸気発生器の原子炉格納容器内への搬入・据付を行い、平成9年6月30日の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了する予定である。
 また、蒸気発生器取替工事としての総被ばく線量当量は約1.9人・Sv(平成9年5月31日現在)であり、放射性廃棄物は、旧蒸気発生器4基、コンクリートブロックが保管容器で約562m3のほか、切断した配管や干渉物等ドラム缶換算で約1,199本(平成9年5月31日現在)が発生しており、2号機用の蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫に保管している。

2.

蒸気発生器取替工事の工程(表−1図−1参照)
取替工事の開始(定期検査開始) 平成9年2月3日
取替工事の実工事終了(1次冷却材管耐圧・漏えい検査) 平成9年6月30日予定
取替工事の終了(蒸気発生器性能検査) 平成9年8月中旬予定
(1) 主蒸気・主給水管および1次冷却材管の切断および復旧(図−2参照)
 旧蒸気発生器を搬出するために、蒸気発生器に接続している主蒸気・主給水管および1次冷却材管を切断した。なお、1次冷却材管の切断箇所は、高温側1箇所、低温側2箇所とした。
 切断した1次冷却材管、主蒸気管および主給水管は溶接にて復旧し、溶接完了後、非破壊検査を実施し健全性を確認した。最終的に耐圧・漏えい検査を行い健全性を確認する。(主蒸気管および主給水管の耐圧・漏えい検査は6月15日に実施済)
(2) 蒸気発生器室仮開口部の設置および復旧(図−3参照)
 蒸気発生器を搬出・搬入するために、鉄筋コンクリート造の蒸気発生器室(ドッグハウス)の天井および壁の一部を合計12のブロックに切断・撤去し、仮開口部を設置した。
 新蒸気発生器搬入完了後、蒸気発生器室仮開口部に鉄筋・型枠を組立て、コンクリートを打設し復旧した。
(3) 旧蒸気発生器の搬出(図−4図−5参照)
 原子炉格納容器内のクレーンに仮設した補助トロリーにより旧蒸気発生器を吊り上げて横倒しにし、原子炉格納容器内に仮設した仮設床上を移動させて、機器搬入口を通り原子炉補助建屋に搬出した。
 原子炉補助建屋内では、旧蒸気発生器をターンテーブルにより方向転換させ、リフターにより運搬車両上に積載し、ワイヤーにより確実に固縛した後、原子炉補助建屋シャッター部を通り、発電所構内に設置した2号機用の蒸気発生器保管庫へ運搬・保管した。
(4) 新蒸気発生器の搬入・据付(図−5参照)
 新蒸気発生器は旧蒸気発生器搬出の逆の手順で機器搬入口を通り原子炉格納容器内へ搬入した。原子炉格納容器内搬入後は補助トロリーにより立起こしを行い、所定の位置に据付けた。
(5) 検査
 新蒸気発生器および各機器の据付・復旧完了後、主蒸気・主給水管の耐圧・漏えい検査、蒸気発生器据付検査、蒸気発生器室の構造・外観検査等を行った。
 なお、平成9年6月30日の1次冷却材管耐圧・漏えい検査をもって実工事を終了し、平成9年8月中旬の蒸気発生器性能検査をもって蒸気発生器取替工事全工程を終了する予定である。

3.

新蒸気発生器の技術的改善点(図−6参照)
 取替後の新蒸気発生器は、過去の損傷対策を反映した蒸気発生器を採用した。主な改善点は次のとおりである。

項目 改善点 理由
伝熱管材料の改善 インコネルMA600からインコネルTT690に変更 耐腐食性の向上
振止め金具の改善 従来の2本から3本に変更
材質をインコネルからステンレス鋼に変更
振動抑制の向上
耐摩耗性の向上
管支持板の形状改善 丸穴型から四つ葉型に変更 不純物の濃縮抑制
管支持板の材料改善 炭素鋼からステンレス鋼に変更 耐腐食性の向上
新拡管法の採用 機械式拡管から液圧拡管および機械式拡管に変更 残留応力発生の抑制
2次側熱流動の改善 流量分配板の設置等 不純物堆積の抑制

4.

旧蒸気発生器の保管(表−2図−4参照)
 旧蒸気発生器は、発電所構内に設置した鉄筋コンクリート造の2号機用の蒸気発生器保管庫に保管した。

5.

廃棄物の発生量(表−2参照)
 蒸気発生器の取替工事に伴い発生した放射性廃棄物の量は、旧蒸気発生器4基、蒸気発生器室仮開口部設置に伴うコンクリートブロックが保管容器で約562m3および切断した配管や干渉物等、ドラム缶に換算して約1,199本(平成9年5月31日現在)である。
 これらの廃棄物は減容に努め、2号機用の蒸気発生器保管庫および既設の廃棄物庫内に保管している。

6.

蒸気発生器取替工事に係る被ばく線量当量(表−2参照)
 取替工事実施にあたって、除染、遮へい、自動化等により、被ばく線量当量の低減に努めた結果、蒸気発生器取替工事における総被ばく線量当量は、約1.9人・Sv(平成9年5月31日現在)となった。

表−1 蒸気発生器取替工事実施状況
項目 作業実績
主蒸気・主給水管切断 H9.2.19〜H9.3.15
蒸気発生器室仮開口設置 H9.3.3〜H9.3.22
原子炉格納容器内クレーン改造他 H9.3.18〜H9.3.25
1次冷却材管切断 H9.3.21〜H9.4.7
旧蒸気発生器搬出 A−SG H9.3.26〜H9.3.28
B−SG H9.3.29〜H9.3.31
C−SG H9.4.1〜H9.4.3
D−SG H9.4.3〜H9.4.5
新蒸気発生器海上輸送 A−SG H9.3.31〜H9.4.3
B−SG H9.4.3〜H9.4.7
C−SG H9.4.10〜H9.4.13
D−SG H9.4.7〜H9.4.10
新蒸気発生器
搬入・据付
水切り A−SG H9.4.3
B−SG H9.4.7
C−SG H9.4.13
D−SG H9.4.10
搬入・据付 A−SG H9.4.6〜H9.4.9
B−SG H9.4.9〜H9.4.11
C−SG H9.4.15〜H9.4.17
D−SG H9.4.12〜H9.4.14
1次冷却材管復旧 H9.4.9〜H9.5.12
主蒸気・主給水管復旧 H9.4.16〜H9.5.28
原子炉格納容器内クレーン復旧他 H9.4.17〜H9.4.21
蒸気発生器室仮開口復旧 H9.4.22〜H9.5.12
1次冷却材管耐圧・漏えい検査 H9.6.30(予定)
蒸気発生器性能検査 H9.8中旬(予定)
元の位置へ▲

表−2 蒸気発生器取替計画値(廃棄物発生量と被ばく線量)
項目 計画
(H9.1.31時点)
実績
(H9.5.31時点)
取替工事(実工事)期間 H9.2.3〜H9.6下旬 H9.2.3〜H9.6.30(予定)
148日間(予定)
放射性
廃棄物
発生量
廃棄物庫保管 約641本 約322本
蒸気発生器保管庫
(2号機用)保管
SG4基
約877本(ドラム缶換算)
約562m3(コンクリート保管容器)
SG4基
約877本(ドラム缶換算)
約562m3(コンクリート保管容器)
合計 SG4基
約1,518本(ドラム缶換算)
約562m3(コンクリート保管容器)
SG4基
約1,199本(ドラム缶換算)
約562m3(コンクリート保管容器)
総被ばく線量当量 約2.5人・Sv 約1.9人・Sv
個人最大
線量当量
期間 25mSv(管理値) 17.46mSv
2.5mSv(管理値) 2.33mSv
元の位置へ▲