[記者発表][平成9年度10月]−[7日11時15分記者発表] 原子力安全対策課
敦賀発電所1号機の原子炉手動停止について(9−57)

 このことについて、日本原子力発電株式会社から下記のとおり連絡を受けた。


 敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉;定格出力35.7万kW)は、定格出力で運転中であるが、10月2日に、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット(HCU 全制御棒73台)にあるスクラム弁(全制御棒×2組:全146台)の1台で、ダイヤフラムにき裂が発生し、弁駆動用の空気が漏えいした。このため、当該水圧制御ユニットを隔離し、漏えいしたスクラム出口弁のダイヤフラムを新品と取り替えるとともに、入口弁についても新品と取り替えた。
 今回と同様の事象が本年8月13日に発生しており、ダイヤフラムにき裂が生じた原因は、調査の結果、ダイヤフラムの素材と取替時にダイヤフラムに塗布しているシール材の影響と推定された。(別紙参照)
 以上のことから、今後の運転に万全を期すため原子炉を手動停止し、同様の素材を使用しているダイヤフラム(全84台)についても新品と取り替えることとした。
 このため、10月7日16時から出力降下を開始し(21時頃発電停止)、翌8日4時頃に原子炉を手動停止する予定である。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はない。

 また、この停止期間中に、(株)日立製作所および(株)日立エンジニアリングサービスが施工した溶接後熱処理の温度記録について疑義のある11箇所の溶接部の点検・調査を実施する予定である。


<別紙>

HCUスクラム弁ダイヤフラム亀裂の原因と対策について

[推定原因]
 調査の結果、8月13日および10月2日に発生したスクラム弁のダイヤフラムき裂の原因は以下のとおりと推定された。
(1) 当該ダイヤフラムは補強布(ナイロン)をゴムで挟む構造になっているが、スプリングステム貫通穴(ダイヤフラム中央の穴)周辺部で、補強布に加工工程で生じたほつれがあった。
(2) 第20〜23回(H7年)定期検査において、密封性向上のためシール材をダイヤフラムに塗布しているが、シール材が乾かないうちにスクラム弁組立および漏えい試験を実施した場合、シール材が潤滑材の働きをし、ダイヤフラムが径方向に引っ張られ、繊維ほつれが生じている箇所に応力が集中し、繊維ほつれ部に沿ってき裂が生じる可能性があることがわかった。
(3) 補強布の繊維ほつれ部に沿ってき裂が生じた後、定期検査時の動作試験時や運転中に、シール材の塗りむらによる強度の弱い部分から繊維の織り目に沿ってき裂が進展し、空気漏えいに至ったものと推定された。

[対策]
 このダイヤフラムは4年毎の弁の定期点検の際に取り替えているが、第24回(H8年)定期検査から、国内の原子力発電所で使用実績があり、補強布に繊維ほつれがなく、補強布を2層としたものと取り替えている。今回損傷したものはいずれも第21回定期検査で取り替えたものであるが、これらと同じ、第21〜23回定期検査で取り替えたダイヤフラムについては第24回定期検査から使用しているものと取り替えることとした。



(参考)

制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット(HCU);
 敦賀1号機の場合、制御棒が73本あるが、制御棒駆動機構1本につき1台の水圧制御ユニットが設置されており、制御棒の挿入、引き抜き動作やスクラム動作に必要な弁類の操作を実施する。
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敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉)概要図
制御棒駆動水圧系系統図
制御棒駆動水圧系スクラム弁構造図
ダイヤフラム損傷図
推定原因フロー