[記者発表][平成9年度11月]−[13日13時者発表] 原子力安全対策課
新型転換炉ふげん発電所における作業員の被ばく問題について(9−76)

 新型転換炉ふげん発電所(新型転換炉;定格出力16.5万kW)において、10月7日に消火器点検作業中の職員1名(放射線業務従事者)と点検業者1名(一時立入者)が、特別立入制限区域として承認なしでの立入が制限されている原子炉補助建屋廃棄物処理室地下1階のタンク室に承認なく入域して点検を行い、職員が1.30mSv、業者が1.11mSvの被ばくをした。[平成9年10月7、9日発表済]
 このことについての調査結果は以下のとおりである。
 この被ばくについては、去る10月13日に知事から近藤動燃事業団理事長に厳しく申し入れたところであるが、放射線管理、作業管理、一時立入者の管理、特別立入制限区域の鍵の管理等、原子力施設の管理に関する基本的な問題であることから、改善策の徹底的な実施を動燃事業団に対し申し入れることとしている。

1. 消火器の配置等について
 消火器は当初から配置されていたが、平成4年10月に型式失効となったものを承認済消火器に一括更新した。この時に、高線量当量率区域の消火器については別の場所(低線量当量率区域)に配置換えしている。
 今回被ばくした原子炉補助建屋地下1階廃棄物処理室タンク室内には6本の消火器が配置されていたが、低線量当量率区域の3本についてはそのままとし、残り3本についてはタンク室外に配置換えしたが、元の消火器を回収しなかった。
 平成9年10月時点において、運転中のみ特別立入制限区域となるタービン建屋を除くと、特別立入制限区域内に設置してある消火器は廃棄物処理室タンク室の3本のみであるが、管理課所有の消火器配置図は平成2年に改訂されたもので、現状と一致していなかった。

2.

作業経緯
(1) 消火器点検の担当課である管理課は、平成9年2月に平成9年度消火器点検契約仕様書を作成。この仕様書では、「特別立入制限区域内に設置の消火器の点検は、線量率等を考慮し実施するものとする。」と記載している。
(2) 5月21日に、平成8年度下期点検(H9.3)で未点検となっている消火器の点検を実施。廃棄物処理室タンク室については、他の作業で鍵が開放されていたため、作業者にタンク室外に持ち出しを依頼し、点検を実施。
(3) 8月5日に、原子炉建屋入口前(補助建屋)に配置してある消火器22本(定期検査時は原子炉建屋内に配置)の平成9年度上期点検を実施。
(4) 管理課は作業箇所の放射線区分として、「線量2−汚染B」と記載した作業票を作成し、9月10日に安全管理課、発電課の承認を受けている。
(5) 9月11〜12日に管理区域外を含む548本の点検を実施。施錠や作業で入域できなかった補助建屋エレベータ室、重水精製装置建屋エレベータ室、廃棄物処理室タンク室および屋外4号倉庫の7本については後日実施することとした。なお、9月11日の作業前後の手続きが行われていなかった(12日は実施)。
(6) 10月7日に未実施の作業を行うこととし、10月6日に点検業者の一時立入者管理区域立入許可手続きを実施。作業場所は重水精製装置建屋とだけ記載。
(7) 10月7日10時10分、管理課案内者と点検業者は管理区域内の点検作業を実施するため、消火器配置図(平成2年から未訂正)と点検対象の番号メモを持って管理区域に入域。アラームメータは着用せず。
10時20分頃、廃棄物処理室地下1階のタンク室に行くが、施錠されていたため、先に補助建屋エレベータ室で点検を実施。
(8) 10時33分頃、再びタンク室に戻ったが施錠されていたので、10時35分頃、管理課案内者が補助建屋1階の搬出モニタ室にいた放射線管理助勢員に廃棄物処理室地下1階タンク室の鍵の借用を申し出た。
放射線管理助勢員は申し出た職員が運転員か保修課員であると錯覚し、確認や放射線管理室への連絡等をせずに、管理区域内防護具貸出所(日中は鍵も管理)に出向いて、当該の鍵を調達し、案内者に手渡した。
(9) 10時40分〜50分頃、廃棄物処理室地下1階タンク室(特別立入制限区域)入口の柵の鍵を開け、同タンク室に入域し、入口側から順次2本の点検を実施した。
次に、上澄水タンク付近の消火器の点検をするべきところ、点検業者がこの奧にも1本あったことを思い出し、奧に進んだところ、C−濃縮廃液貯蔵タンクを過ぎた箇所で古いタイプの消火器(*1)を発見。
この消火器の最終点検日は昭和58年3月10日であったこと、また旧タイプ(型式失効)であったことから、タンク室外に持ち出し、タンク室入口外側に設置してある点検済みの予備消火器1本を持ち込み、同じ設置場所に設置。
*1 平成4年10月に配置換えしたが旧品を回収しなかった消火器の1本。管理課所有の図面では濃縮廃液タンクBと廃液サンプルタンクAの境界にあるとされていた。
(10) タンク室を出て施錠し、管理課案内者が鍵を搬出モニタ室にいた放射線管理助勢員に返却後、11時3分、管理区域を退域するための線量測定を行ったところ、管理課案内者は1mSvを超えたこと、点検業者は一時立入者の制限値0.1mSvを超えたことから、警報が発信し、管理基準値オーバーが判明。

3.

問題点および改善対策
(1) 放射線管理および作業管理
a) 管理課担当職員は所定の放射線教育は受けているが、特別立入制限区域に許可なく入域していること、廃棄物処理室のタンクエリアが高線量当量率区域とは意識しないで入域していることなど、放射線管理区域に対する基本認識が欠如していた。
b) 点検作業について十分な教育・引継ぎがなされず、また特別立入制限区域内の点検方法は引継ぎされなかった。
c) 契約仕様書の作成において、配置換えや特別立入制限区域内作業などの問題意識なく前例を踏襲していた。
d) 消火器の点検要領書等がなく、またその配置管理や点検履歴管理等が不適切であった。
e) 過去の点検で作業票が発行されていないもの、作業票への不適切な記入、作業開始手続きの未実施など作業票取り扱いに関する知識が不十分であった。
f) これらのことを踏まえ、
事務系職員に作業手続き、放射線管理教育を実施するとともに、入所時の放射線業務従事者教育をフォローアップする教育を実施する。
職員、協力会社員に対し、区域管理、鍵管理、一時立入に関する再教育を実施し、管理区域内作業の基本的な事項の徹底を図った。
作業票記載内容を発行、受付、運用の各段階でチェックする方策を検討し、手順書に反映することとした。
業務の引継ぎの文書化と、作業計画時等の作業内容と関連規則等との照合の徹底を図ることとした。
消火器管理マニュアル、消火器点検台帳、点検チェックシートの作成、配備図面等の整備を行う。
(2) 一時立入者の管理等
a) 一時立入者は、管理区域において作業を行わない者、安全管理課長が許可する場合を除き特別立入制限区域に立ち入らない者などに該当する者と定義されていたが、今回の消火器点検ではこの定義に合わない者に管理区域入域許可が与えられた。
b) 一時立入許可申請書には、立入場所を詳細に記入するようになっていないなど様式に不備が認められた。
c) アラームメータの着用は必要に応じてとされていた。
d) これらのことから、一時立入で行える業務の範囲を見学、査察・監査・視察、法定検査、取材、納品、工事見積等の現場視察に限定し、消火器点検は放射線作業従事者が実施することとした。
また、一時立入許可申請書の様式を見直し、詳細な立入場所、入域理由、被ばく管理内容を記載する内容とした。
さらに、管理区域入域者全員にアラームメータを着用させることとした。
(3) 特別立入制限区域の管理
a) 区域入口には区域表示(3B区域)のみで入域時の注意事項が掲示されていなかったので、安全管理課長の許可、アラームメータの着用等の遵守事項を掲示した。
b) 高線量率区域近傍に線量当量率と注意喚起の表示を行うとともに、高線量率区域の通路部にバリアを設置した。
c) 特別立入制限区域内に安易に入域しているため、作業時に他の者の立入りを防止するため、立入禁止措置(バリヤー設置または立入禁止札の掲示)を行うことをマニュアルに明記した。
(4) 特別立入制限区域の鍵の管理
a) 特別立入制限区域の鍵が、鍵管理マニュアルにはないアテンダント室(管理区域入域箇所横)、また日中は原子炉建屋入口の防護具貸出所にも配備されていた。この鍵は放射線管理業務や運転員以外には貸し出せないことになっていたが、今回対象外の人に正規の手続きをせずに貸し出された。
b) このことから、特別立入制限区域の鍵は全て放射線管理室で一元管理し、作業担当課長の承認後に安全管理課長の許可を受けた貸出依頼書がなければ貸し出しできないこととした。


平成4年10月の消火器配置図(更新後)
平成9年10月7日の消火器配置図(点検前)